SHARE 青柳綾夏 / アオヤギデザイン+青柳創による、埼玉の住宅「入間の家」
青柳綾夏 / アオヤギデザイン+青柳創が設計した、埼玉の住宅「入間の家」です。
生活のあらゆる要素を内包する1階に対し、ほぼCLTパネルのみで構成されている小屋裏は、用途をもたないことも相まってその要素の少なさが際立つ。また周囲の家々と同様に、敷地の余白から光を求めた1階に対し、約7mの天高が暗がりを包む小屋裏は、空間の質において大きなコントラストをもつ。しかし吹抜けを介すことで、光にあふれる明るい1階には大きな暗がりが降り注ぎ、小屋裏においては吹抜けより間接的に取り込まれる光が徐々に空間を押し広げ、それぞれの空間の質の境界線はあいまいなものとなる。
光と影による空間の秩序は、ある古民家の小屋裏において、天井板が外された開口から射す光の束が、煤けた小屋組みを浮かび上がらせ、徐々に空間が生まれる瞬間に立ち会った体験から構想した。
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以下、建築家によるテキストです。
敷地は郊外の住宅地で、一様な表情の2階建て住宅が並ぶ。拠り所を求めるほどの秩序をもたない周辺環境の中に建つ、夫婦と子供ひとりのための家である。
家は道路側に寄せ、敷地の南側奥に余白を残す配置とし、軸組構法と一部鉄骨による開放的な1階フレームの上に、二等辺三角形の筒状の断面をもつ内省的な小屋裏が載る構成である。筒状の三角形断面はCLTパネルによるトラス効果により保たれ、面外風圧力により導き出されたわずか90mmの厚みは、構造材としてのみならず、美しい木の質感を活かして現しとすることで内装仕上げを不要としている。また木の質量のために断熱材も不要にしている。
生活のあらゆる要素を内包する1階に対し、ほぼCLTパネルのみで構成されている小屋裏は、用途をもたないことも相まってその要素の少なさが際立つ。また周囲の家々と同様に、敷地の余白から光を求めた1階に対し、約7mの天高が暗がりを包む小屋裏は、空間の質において大きなコントラストをもつ。しかし吹抜けを介すことで、光にあふれる明るい1階には大きな暗がりが降り注ぎ、小屋裏においては吹抜けより間接的に取り込まれる光が徐々に空間を押し広げ、それぞれの空間の質の境界線はあいまいなものとなる。
光と影による空間の秩序は、ある古民家の小屋裏において、天井板が外された開口から射す光の束が、煤けた小屋組みを浮かび上がらせ、徐々に空間が生まれる瞬間に立ち会った体験から構想した。長い年月を重ねた古民家の暗がかりに対し、薄い断面によりわずか2日間という建方で切り取られたこの家のそれは、CLTという材料を用いたからこその圧倒的なスケールと、骨組のない表面の平滑さゆえの抽象度をまとっている。これからここで生活を始める若い住人家族の精神の拠り所としての現代の暗がり。その覆いとして現れた鋭利な家形の外観はその断面の薄さゆえか、着想した古民家とは無縁の住宅地にあって思いのほか軽やかに振舞っている。
■建築概要
建物名:入間の家
所在地:埼玉県
主要用途:住宅
設計:青柳綾夏 / aoyagidesign、青柳創
構造設計:福山弘構造デザイン 担当/福山弘
施工:ダブルボックス 担当/和田重文、大月勇輔
構造:木造
階数:地上2階
敷地面責:183.80㎡
建築面積:69.49㎡
延床面積:123.04㎡
竣工:2017
写真:太田拓実