SHARE 中村竜治建築設計事務所による、兵庫の「神戸市役所1号館1階市民ロビー改装」
- 日程
- 2021年1月29日(金)
中村竜治建築設計事務所が設計した、兵庫・神戸市の「神戸市役所1号館1階市民ロビー改装」です。
また、2021年1月29日に、中村も参加する、こちらの空間をテーマにしたオンライントークセッションが開催されます(詳細は末尾に掲載します)。
神戸市役所の市民ロビーの改装である。待合、打合せ、休憩、喫茶席などの機能をもつ。大きな庁舎のほんの一部の改装ではあるが、意欲的で丁寧なコンペが行われ出来上がった。
ロビーは閉じた部屋ではなくエントランスホールなど他の空間とずるずるとつながっている上、あまり傷んでもいなかったため、建物には手をつけず、機能的にどうしても必要となる家具(椅子と机)の集合によって、輪郭が曖昧な場所をつくるのが良いのではないかと考えた。
水面に漂う木の葉の様に、床から一定の高さに浮いた木製の板が、くっ付いたり離れたりしながら不均質に散らばっているような状態を思い描いた。座板あるいは天板の高さを同じにし椅子と机の区別をなくし、平面形を長方形と楕円形の中間ぐらいの角のない形にし方向性を曖昧にした。茶屋の縁台のように、ベンチのようでもありテーブルのようでもあるこの家具をベンチテーブルと呼ぶことにした。使う人の状況や解釈次第で椅子にも机にもなり、使う人の創造力を掻き立てる。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
神戸市役所の市民ロビーの改装である。待合、打合せ、休憩、喫茶席などの機能をもつ。大きな庁舎のほんの一部の改装ではあるが、意欲的で丁寧なコンペが行われ出来上がった。
デザイン都市・神戸
市が推進する「デザイン都市・神戸」の顔としてのロビーが求められた。神戸市はかねてからデザインを軸に街を活性化する様々な取組を行っていて、2008年にはユネスコ創造都市ネットワークのデザイン都市にも認定されている。
今までと少し違う公共性
顔といっても単に見た目を整えるというよりは、これからの市民ロビーとはどんな場所か?を問うことで、今までとは少し違った公共性が生まれることを目指した。
家具群で場所をつくる
ロビーは閉じた部屋ではなくエントランスホールなど他の空間とずるずるとつながっている上、あまり傷んでもいなかったため、建物には手をつけず、機能的にどうしても必要となる家具(椅子と机)の集合によって、輪郭が曖昧な場所をつくるのが良いのではないかと考えた。
能動的な場所
ロビーには待合とカフェがあり、二つはパーティションで区切られ、場所と使い方が決められていた。これからの市民ロビーを考えたときに、今までのように市民が与えられたものを決められた通りに使う受動的な場所ではなく、自ら居場所や使い方を考えられる能動的な場所が相応しいのではないかと考えた。そこで、家具そのものの在り方に踏み込み、使う人の能動性を促す家具のあり方を模索した。
椅子と机の見分けをつかなくする
水面に漂う木の葉の様に、床から一定の高さに浮いた木製の板が、くっ付いたり離れたりしながら不均質に散らばっているような状態を思い描いた。座板あるいは天板の高さを同じにし椅子と机の区別をなくし、平面形を長方形と楕円形の中間ぐらいの角のない形にし方向性を曖昧にした。茶屋の縁台のように、ベンチのようでもありテーブルのようでもあるこの家具をベンチテーブルと呼ぶことにした。使う人の状況や解釈次第で椅子にも机にもなり、使う人の創造力を掻き立てる。
配置と誤読
同じ形を縦横に引き延ばすことでつくられる45種類のベンチテーブルは、様々な配置が可能で、その配置ををどう捉えるかも使う人によって様々である。ベンチテーブルのフラットで方向性のないある意味不完全な形は、配置に対する逸脱や誤読を誘発し、それが思いがけない使い方や振る舞いを生む。自分に合った自分だけの場所を見つけることができ、同時に誰にでも開かれた平等な場所となっている。
六甲山を写し取る
天板の素材には、六甲山や市内の整備で出た木をできるだけ利用している。六甲山は、一度禿山になったものを防災とレジャーのために明治神宮や日比谷公園の造園などを手がけた本田清六により植林された山で、いわゆる林業のための山とは異なり様々な樹種で構成される美しい山である(維持と資源の持続的活用方法が神戸市の目下の課題である)。そのため、素材に様々な樹種が入り混じるが、六甲山を写し取ったような不揃いな統一感をつくりだす。また、天板の側面に樹種名を焼印することで、使う人が名前と質感を結び付けて感じられるようにし、木の種類やそれらが育つ六甲山に興味を持ってもらうきっかけをつくっている。
広がる
その後、神戸市営地下鉄名谷駅にも同じ仕組でつくられたものが設置され、今後、仕組み含め街中にも広がっていくことを期待している。
■建築概要
名称:神戸市役所1号館1階市民ロビー改装
完成:2017年9月30日
用途:市民ロビー(待合、打合せ、休憩、喫茶席)
住所:兵庫県神戸市中央区加納町6-5-1神戸市役所1号館1階
面積:340m2
寸法:W400mm〜2400mm、D400mm〜1200mm、H440(家具)
施主:神戸市
設計:中村竜治建築設計事務所
施工:ムラヤマ、アートワークス、シェアウッズ
撮影:阿野太一、中村竜治
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
内装・家具 | 家具 | 地元産木材(銀杏、朴、楢、棈、椎、桜、楠、榎、樅、檜、杉)、スチール角パイプ |
※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません
■オンライントークセッション
【GOOD DESIGN TALK】皆でつくるゆるやかなつながり ―神戸市役所市民ロビーの空間デザイン―
日時:2021/1/29(金)19:00~20:15
場所:オンライン
ゲスト:中村竜治(株式会社中村竜治建築設計事務所)
伊藤香織(都市研究者、東京理科大学 教授、グッドデザイン賞審査ユニット17リーダー)
山崎正夫(シェアウッズ代表)
モデレーター:西山まさき(神戸市クリエイティブディレクター)
小林睦実(神戸市企画調整局つなぐラボ職員)
参加:無料 ※インターネットに接続する環境がある方
※開催日が近づきましたら視聴用のURLをメールにてお知らせします。
申込み:100名(要申込・先着順)
主催:デザイン・クリエイティブセンター神戸、神戸市
共催:公益財団法人日本デザイン振興会