野中あつみ+三谷裕樹 / ナノメートルアーキテクチャーが設計した、大阪・堺市の、三住戸の改修「2020年度 茶山台団地のリノベーション」です。若年層向けの働く場を持つ住まいで、使い方への想像を引き出す為に中央空間と周囲の小割空間からなる“ロの字プラン”を考案、寸法設定でも想像し易さを意識し生活変化の受容も目指されました。
若年層向けのこれからの働き方とくらしの提案をテーマに、2020年秋に大阪府住宅供給公社が開催した第6回公開コンペにより選定された。
2住戸を1住戸にする「ニコイチプロジェクト」として2プラン、45平米のリノベーション「リノベ45」として1プランが実現した。
ニコイチプロジェクトでは2部屋を横に繋ぐ「ヨコニコイチ」、上下階を外階段でつなぐ「タテニコイチ」、リノベ45では庭と住戸を繋ぐ「リノベ45庭付き」を改修した(タテニコイチ・リノベ45庭付きの実現は初)。
過去のニコイチ入居者アンケートでは、部屋が広くて使い方がわからない、セカンドルームを使いこなせず自転車を置いている、という声があった。既存のプランは「田の字型」で生活の制約が強く、その改善のため広いLDKや余白を設けたことが、逆に想像が及ばず住みこなし方がわからない、ということだと思う。そこで田の字ならぬロの字プランを提案。45平米の住戸の中央にロの字の壁を建て、その内外でシーンを想定した。
ロの字内側は集いの間と名付け、LDKや打合を想定した広い場所。ロの字外側は、既存の躯体を利用して壁で細かく区切り寝室や収納、ワークスペースなど個人領域。内外の境界には段差をつけ、公私を切り替えるきっかけとした。
ロの字外は部屋の細分化に注目し、なるべく住み手が知っている寸法で部屋の用途を考えられるようにしたかった。この広さなら今は収納だけど、将来は机が入りそうだから子供の勉強部屋になるな、など想像のしやすさを意識した。ここ数年で働くと暮らすの関係が変わり、また今後も変わっていくであろうそのスタイルや家族関係に柔軟に対応できることが大切だ。
リノベ45庭付き
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タテニコイチ
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ヨコニコイチ
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以下、建築家によるテキストです。
若年層向けのこれからの働き方とくらしの提案をテーマに、2020年秋に大阪府住宅供給公社が開催した第6回公開コンペにより選定された。
2住戸を1住戸にする「ニコイチプロジェクト」として2プラン、45平米のリノベーション「リノベ45」として1プランが実現した。
ニコイチプロジェクトでは2部屋を横に繋ぐ「ヨコニコイチ」、上下階を外階段でつなぐ「タテニコイチ」、リノベ45では庭と住戸を繋ぐ「リノベ45庭付き」を改修した(タテニコイチ・リノベ45庭付きの実現は初)。
過去のニコイチ入居者アンケートでは、部屋が広くて使い方がわからない、セカンドルームを使いこなせず自転車を置いている、という声があった。既存のプランは「田の字型」で生活の制約が強く、その改善のため広いLDKや余白を設けたことが、逆に想像が及ばず住みこなし方がわからない、ということだと思う。そこで田の字ならぬロの字プランを提案。45平米の住戸の中央にロの字の壁を建て、その内外でシーンを想定した。
ロの字内側は集いの間と名付け、LDKや打合を想定した広い場所。ロの字外側は、既存の躯体を利用して壁で細かく区切り寝室や収納、ワークスペースなど個人領域。内外の境界には段差をつけ、公私を切り替えるきっかけとした。
ロの字外は部屋の細分化に注目し、なるべく住み手が知っている寸法で部屋の用途を考えられるようにしたかった。この広さなら今は収納だけど、将来は机が入りそうだから子供の勉強部屋になるな、など想像のしやすさを意識した。ここ数年で働くと暮らすの関係が変わり、また今後も変わっていくであろうそのスタイルや家族関係に柔軟に対応できることが大切だ。
今回特に難しかったのは暮らしの想像だ。既存住戸はRC壁式で躯体が抜けない。ヨコニコイチとタテニコイチは外を介しての移動のため、片部屋が使われなくなってしまう可能性もある。どのような家族がいかに生活し変化していくか、家族像を綿密に想定しながらプランを詰めた。一見違いのわかりにくい3住戸だが、キッチン配置や家事動線、部屋割りも異なるそれぞれの暮らしを想定している。
住み手が日々居場所を選び、また生活の変化に合わせ、流動的に場所を使い変えやすい団地のあり方をロの字壁で目指した。
リノベ45庭付き
夫婦二人暮らしや、幼児のいる3人家族を想定。集いの間の周りに個室が配置。テラスからつながる場所はワークスペースや子供部屋としても活用できる。928住戸のうち唯一専用庭を持つ住戸で、指定範囲の中でテントを広げられるサイズを意識して、ベランダを三角の平面で拡張し階段を設置した。
タテニコイチ
メリハリのある働きと生活をしたい家族想定。外階段利用の上下移動のため家/職など明確な分離は使いこなせない懸念があった。寝る「静」の場、仕事や勉強の「動」の空間をロの字壁で区切り5階に、4階は生活拠点を配置。5階で起床、4階で団欒、5階に出勤、夕方4階へ帰り5階で就寝。上下行き来しながら生活リズムを作る。
ヨコニコイチ
在宅ワークもある子供のいる家族想定。玄関とバルコニーで行き来。団らんの「暮らしの部屋」と、仕事や学び・子供部屋の「個人を伸ばす部屋」と分けた。平面移動のため、キッチンと風呂/ランドリーを別の部屋に配置して、ゆとりある家事スペースを用意。
■建築概要
名称:大阪府住宅供給公社茶山台団地 ニコイチ・リノベ45プロジェクト
所在地:大阪府堺市南区
用途:共同住宅(団地)
建主:大阪府住宅供給公社
設計:ナノメートルアーキテクチャー
施工:宮崎工務店
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延床面積
リノベ45庭付き(21号棟):1階 45.84m2 / 庭 11.46m2
タテニコイチ(21号棟):4階 45.84m2 / 5階 45.84m2
ヨコニコイチ(23号棟):4階 45.84m2+45.84m2
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階数:地上5階
構造:鉄筋コンクリート造 壁式構造
工期:2021年1月~2021年5月
写真:Tololo studio