宮本雅士建築設計 / mmarが設計した、東京・品川区の集合住宅「フタバソウ」です。
住居兼事務所の使用も想定した計画です。建築家は、地域や住人に愛着の醸成を求めて、交流を生む“小路”の在り方を継承する空間を考案しました。また、全体ヴォリュームを住戸単位に分節し環境調和や“家”としての愛着向上も意図されました。
2019年春から計画、2021年秋に竣工となった6戸で構成される集合住宅。
地元に親しまれる神社や商店街があり、落ち着いた住宅街の小路に隣接する。
「住・働 空間」をプログラムとし、自宅兼事務所を要する人、恋人、兄弟、友人、1~2人暮らしを想定。同時に「その土地や住人にとって愛着が湧く居心地の良い空間とは何か」を追求した。近隣住人と新規住人との交わりとなる小路との繋がりを考察し、光・風・人がつながり、小路の習慣を継承する居住空間である。
建物のボリュームを計画するにあたり、ボリュームを分節し、6戸のモジュールで構成することで、ヒューマンスケールの実現を図った。フタバソウは、柔らかな粘土や羊羹が一切れずつ積み重なるように敷地に配列され、RCの無機質さを消し、近隣の家との調和を図っている。その一切れが、1戸となり、ひとつの「家」としての役割を担うように構成される。1戸を、部屋(ROOM)ではなく、家(HOME)という認識に変えることで、愛着が湧くのではないかと考えた。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
小路とつながる集合住宅「フタバソウ」
2019年春から計画、2021年秋に竣工となった6戸で構成される集合住宅。
地元に親しまれる神社や商店街があり、落ち着いた住宅街の小路に隣接する。
「住・働 空間」をプログラムとし、自宅兼事務所を要する人、恋人、兄弟、友人、1~2人暮らしを想定。同時に「その土地や住人にとって愛着が湧く居心地の良い空間とは何か」を追求した。近隣住人と新規住人との交わりとなる小路との繋がりを考察し、光・風・人がつながり、小路の習慣を継承する居住空間である。
建物のボリュームを計画するにあたり、ボリュームを分節し、6戸のモジュールで構成することで、ヒューマンスケールの実現を図った。フタバソウは、柔らかな粘土や羊羹が一切れずつ積み重なるように敷地に配列され、RCの無機質さを消し、近隣の家との調和を図っている。その一切れが、1戸となり、ひとつの「家」としての役割を担うように構成される。1戸を、部屋(ROOM)ではなく、家(HOME)という認識に変えることで、愛着が湧くのではないかと考えた。
外観全体の素材・質感を均一にしつつも、建物がひとつの塊とならぬよう、1戸1戸の存在を表現。1戸の底辺となる軒天には異なるテクスチャ―で陰影を出し、底辺となるエントランスの天井へとつながっていく。1戸1戸の接地間は、中庭や階段・共用部の動線とする事で、建物内へ立体的な小路を作り出す。これらの構成を検証する上で、ボリュームの分節では、天空率を用い許容容積を保ち、戸々をずらした配列では、日射解析を用い1戸のモジュールを積み重ね、光と風が通る立体的な形成を実現。
日本は、古くから小路を親しむ習慣がある。隣接する小路では、挨拶を交わし、軒先へ所狭しと不揃いに植木鉢を並べ愉しんでいる。フタバソウでは、隣接する小路を繋げることによって、近隣住人が大切にしてきた小路の習慣を受け継ぐ想いで、外構から居室に帰るまでの間も小路が続く空間を形成。
小路に対し開かれた空間となるように、内外の小路をつなぐ、テラス・中庭・階段・共用部の外壁へ造作ブロックを使用。温みのある表情を生み出す花ブロックを沖縄で金型から製作。デザインは、日本の伝統的な竹細工の編み柄をモチーフとし文化の融合を図った。目隠しとしての役割を果たし、住人のプライバシーを保ちながら、熱射を遮り、心地よい光と風を通す内部小路が生まれる。
このブロックは、内外へ光を注ぐ。日中は内部小路へ影絵のように光を落とし、日没後は、建物物自体が行燈(あんどん)のように外部小路を照らす。
各戸の玄関先には、飾り棚を設け、近隣の軒先のように、住人の個性が出せるスペースを用意し、外構まわりを洗い出しで仕上げ、サインをタイルで製作し、内外小路とのつながりを細部のデザインでも表現した。
住戸内は、住人にとって選択肢があり、地域と交流を保ち、自分の基地となるような自由な空間とし、居室へ広い1つの空間を設けた。生活モデルに合わせ「居室」「寝室」「働室」「広縁」と自由にカーテンで間仕切る事ができる。又、1つの広い空間とは別にバス、サニタリー、キッチンスペースがある。収納を兼ねた間仕切り壁として、外観と同じ表現のモジュールとした「木箱」の中に存在する。全ての住戸には、中庭があり、スペースが限られた水場(台所、風呂場)にも窓を設け、どの空間においても光や風を感じることができる。
1階店舗では、地域住人と新規住人のふれあいの場となり、小路をつないだように、人々もつながりを見せている。各戸、店を開く住人も居れば、その空間を楽しむように住まう人もいる。
コロナ前に計画した建物だが、光・風・人がつながる心地よい空間と動線は、「住・働 空間」としての機能を存分に発揮する集合住宅として、自然と人が交流し建物と共に成長し続ける。
■建築概要
建物名:フタバソウ
所在地:東京都品川区
用途:集合住宅 住戸6戸
規模:新築 3階建て
構造:RC造
建物主:大竹建窓ホールディングス
設計:宮本雅士建築設計 / mmar
施工:大竹建窓
設計協力:フレームワークス(構造)、ルスルス(植栽)
敷地面積:149m²
延べ床面積:298m²
設計・工事期間:2019年~2021年
写真:鯉谷ヨシヒロ、濱崎泰弘、山本浩輝、mmar