北野慶 / KKAAと八木貴伸 / YTAAが設計した、三重・志摩市の「合歓の家」です。
国立公園指定のエリアに建つ週末住宅です。建築家は、様々な捉え方や周辺環境を許容する建築を求め、普遍的形態と既視感ある材料を意図的に選択した設計を志向しました。そして、柔軟性と包容力を生み出し自然と街並みの融和を促す事を意図しました。
伊勢志摩国立公園内に建つ、コンパクトな週末住宅である。
周囲は個人の別荘、企業の保養所、定住者用の規格住宅が紆曲する道路に沿って不規則に点在している。
海の見える自然豊かな場所でゆっくり過ごしたいという建主にとって決して悪くない場所ではあるが、国立公園の大自然の中に突如現れたこの統一感のない街並みに違和感を感じた。
敷地の南東側は海抜約30mの崖になっており、崖下はそのまま海へと達する。
この海に向けて総2階建て鉄筋コンクリートブロック造を配置。崖と建物の距離はがけ条例によって決められた。
1階の各用途は、最低限必要な耐力壁と可動式家具や建具でゆるやかに仕切る。
天井高さは梁下の最も低いところで1880mm。住み手の身長などを鑑みながらできるだけスケールを抑えている。対照的に2階はLDKとテラスだけの広々とした空間で、木造の小屋組みが架かる。特にリビングとテラスは、床・壁・天井を全て同一素材とし、内外の境界が曖昧な空間になっている。
当初、この街並みを無視して、建主の個性に合わせたオーダーメイドの設計を行うことも考えた。
しかし、最終的に家型・矩形・2階建てという普遍的な型を採用。
既視感を覚えるコンクリートブロックを使用し、200×400の規格寸法に従って設計の自由度を制限したのも、どこか量産型の規格住宅に通ずる要素を持たせることがこの敷地では自然なものに思えた。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
伊勢志摩国立公園内に建つ、コンパクトな週末住宅である。
周囲は個人の別荘、企業の保養所、定住者用の規格住宅が紆曲する道路に沿って不規則に点在している。
海の見える自然豊かな場所でゆっくり過ごしたいという建主にとって決して悪くない場所ではあるが、国立公園の大自然の中に突如現れたこの統一感のない街並みに違和感を感じた。
敷地の南東側は海抜約30mの崖になっており、崖下はそのまま海へと達する。
この海に向けて総2階建て鉄筋コンクリートブロック造を配置。崖と建物の距離はがけ条例によって決められた。
1階の各用途は、最低限必要な耐力壁と可動式家具や建具でゆるやかに仕切る。
天井高さは梁下の最も低いところで1880mm。住み手の身長などを鑑みながらできるだけスケールを抑えている。対照的に2階はLDKとテラスだけの広々とした空間で、木造の小屋組みが架かる。特にリビングとテラスは、床・壁・天井を全て同一素材とし、内外の境界が曖昧な空間になっている。
当初、この街並みを無視して、建主の個性に合わせたオーダーメイドの設計を行うことも考えた。
しかし、最終的に家型・矩形・2階建てという普遍的な型を採用。既視感を覚えるコンクリートブロックを使用し、200×400の規格寸法に従って設計の自由度を制限したのも、どこか量産型の規格住宅に通ずる要素を持たせることがこの敷地では自然なものに思えた。
設計上重視したのは、内部と外部、普遍性と特殊性、開放感と閉塞感など、建築がどうしても作り出してしまう二律背反した要素が、お互い調和し、共存することである。そうすることで建物の輪郭や境界がぼやけ、僕ら設計者の個人的な恣意性は薄まり、住み手や訪問者の様々な捉え方であったり、あらゆる周辺環境を許容するものになるのではと考えた。
この柔軟性と包容力を持つ建築によって、大自然と街並みの境界が時間とともに融和されていくことを期待している。
■建築概要
題名:合歓の家
所在地:三重県志摩市
主要用途:専用住宅
建築設計:KKAA / 北野慶、YTAA / 八木貴伸
構造設計:うきょう建築構造事務所 / 廣田右喬
造園:植物事務所COCA―Z / 古鍛冶達也
施工:創人
構造:鉄筋コンクリート組積造
敷地面積:788.08m2
建築面積:58.12m2
延床面積:105.07m2
竣工年月日:2020年11月
撮影:山内紀人写真事務所/山内紀人