矢野寿洋+青山えり子 / 矢野青山建築設計事務所が設計した、愛媛・松山市の「アルファーマ薬局」です。
医院と住宅街に挟まれた敷地に計画されました。建築家は、両者に対して開いた建築を求め、構造と意匠が一体化した“バタフライ形状”の二枚屋根を考案しました。また、日射と雨の遮蔽や大容量の収納等の施主の要望も実現しています。
新たに開発された宅地において、県道に面したクリニックと閑静な住宅街に挟まれるという立地条件の下、計画がスタートしました。
法規上の前面道路は北側の住宅街の入り口に細く伸びる道であり、調剤薬局の施設基準によれば原則として前面道路からの利用客に開くことが求められます。しかし、住宅街の最奥に位置する薬局にその道路からアクセスすることは利用者の心理として現実的ではなく、隣接クリニック利用者の処方箋対応や、周辺住民への訴求の観点から言えば、南側のクリニック側に開き、人通りの多い県道に向けてクリニックの敷地越しにも存在を主張できる必要性がありました。
提案したのは二枚の屋根がバタフライ形状をなし、梁と柱でトラスを形成することで深い庇を無柱で支えるという構造でした。
利用者を迎え入れるように外に向かって広がっていく逆勾配の屋根は2730㎜の跳ねだしで日射や雨を遮る深い庇をつくります。また、平面的には、隅切りによって北側からの前面道路に対しても顔を作ることで調剤薬局の施設基準もクリアし、最大4550㎜の跳ねだしになるダイナミックな半屋外空間としています。
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以下、建築家によるテキストです。
余戸の薬局
新たに開発された宅地において、県道に面したクリニックと閑静な住宅街に挟まれるという立地条件の下、計画がスタートしました。
法規上の前面道路は北側の住宅街の入り口に細く伸びる道であり、調剤薬局の施設基準によれば原則として前面道路からの利用客に開くことが求められます。しかし、住宅街の最奥に位置する薬局にその道路からアクセスすることは利用者の心理として現実的ではなく、隣接クリニック利用者の処方箋対応や、周辺住民への訴求の観点から言えば、南側のクリニック側に開き、人通りの多い県道に向けてクリニックの敷地越しにも存在を主張できる必要性がありました。
そういった矛盾する条件に加え、日射対策や収納がたっぷりほしいというクライアントの要望なども考慮し、構造と意匠が一体となって解決をもたらすシンプルなかたちを模索しました。
提案したのは二枚の屋根がバタフライ形状をなし、梁と柱でトラスを形成することで深い庇を無柱で支えるという構造でした。
利用者を迎え入れるように外に向かって広がっていく逆勾配の屋根は2730㎜の跳ねだしで日射や雨を遮る深い庇をつくります。また、平面的には、隅切りによって北側からの前面道路に対しても顔を作ることで調剤薬局の施設基準もクリアし、最大4550㎜の跳ねだしになるダイナミックな半屋外空間としています。
そのまま内部まで連続した構造を魅せるように吹き抜けを作り、内外が連続した広がりを感じられる待合室となりました。2階には事務的な室をまとめ、吹き抜けを介して待合室へのつながりを作り、調剤室に立てなくてもお客さんの様子や雰囲気は感じておきたいというクライアントの気遣いにも応えられる形としています。また、バタフライ屋根による北に高い断面によってロフト収納も十分確保が可能となりました。
外装は主張の強くないものを選び、薬局としての清潔感を持たせながら北側の住宅街になじませ、特徴的な外観が周囲へ強い印象を与えすぎないよう配慮しています。
隣にある保育園の園児からは「すべり台みたいなおうちだ」と好評なようです。
■建築概要
住所:愛媛県松山市
用途:調剤薬局
構造:木造 地上2階+ロフト
第一種中高層住居地域 第一種住居地域
設計監理:矢野青山建築設計事務所 矢野寿洋 青山えり子 西山琳
構造:平岩構造計画 平岩良之 藤本貴之
施工:株式会社 川下建設
敷地面積:134.77㎡
建築面積:73.91㎡
延床面積:104.99㎡
竣工:2022年2月
設計期間:2020年12月~2021年8月
工事期間:2021年10月~2022年2月
写真:西川公朗