長坂常 / スキーマ建築計画が設計した、石川の「堂前さんちの歯医者さん」です。
“全人的医療”を志す歯科医の住居兼医院です。建築家は、理念の家庭や地域への繋がりを想像し、棟を細かく割り近隣と類似する素材を採用した“人の繋がる”構成を考案しました。そして、“町と溶け込む歯医者の在り方”を建築で促進する事が意図されました。
特定の部位や症状に限らず、患者の心理や社会的側面なども含めて幅広く考慮しながら、個々人に合った総合的な予防や診断・治療を行う医療を全人的医療といい、本プロジェクトの施主で住居兼歯科医院の設計を依頼くださった歯科医の堂前夫婦の治療に対する理念である。
その理念とその2人と3人のお子さんをみてそれは診療室内にとどまらず家庭、そして地域に至るまで繋がってくることが想像された。
たまたま本敷地の斜向かいにお子さんが通う保育園と小学校があり、家庭、職場、学校が数珠つなぎになることから、小学校から帰ってきた子どもがランドセルを片付けずにそのまま診療所の待合にいて漫画を読む息子たちを、治療に来た近所のおばちゃんたちが優しく見守る。
そんなことに思いを馳せる、診療所から住居、そして子供が通う保育園、小学校、さらには生活する周辺地域に至るまで広がる壮大な公私混同なるプロジェクトである。
我々が担当した建物の計画だが、出来るだけ平面的に人の繋がりを作ろうとし平屋での計画を試みた。
そして、将来は10台の診察チェアを置く比較的大きな診療所を目指し、かつ住居を内包するためどうしても建築面積が広がり、そこに屋根をかけると大屋根となる。ただ、それでは、地域の中で際立ち近隣住居郡との親和性が図れず、目指す全人的治療のイメージにそぐわないため出来るだけ棟を細かく割り、近隣と同じような屋根や外壁材で繋げていくことを考えた。