野路敏之 / 野路建築設計事務所が設計した、福井・大野市の住宅「百尺の平屋」です。
遠くに山々を望む広い敷地に計画されました。建築家は、自然の美しさの中に“ひっそりと佇む建築”を求め、諸機能を内包する“百尺の切妻屋根”を持つ平屋を考案しました。また、敢えて“作り込まない”庭で内部からの眺望を活かす事も意図されました。
周囲には見晴らしを遮るものがなく、遠くに連なる山々を望む広い敷地。
建築の計画をするにあたり、太陽が照り付ける夏の昼下がりや、氷点下10℃の凍てつく晴天の朝にも訪れた。何度か更地に足を踏み入れしばらく周囲を眺めていると頭の中ではしだいに「この環境の中でどこまで建築の存在を消せるだろう」と考えるようになっていた。
それくらいに取り囲む自然は美しく、その中にひっそりと佇む建築が最良の計画なのだろうと感じていた。
敷地の面積は大きいのだが、その形や道路に接する部分はいびつだった。その中で方位や眺望を頭に置きながら暮らしを探り、生活と環境に馴染む形態にたどり着いた。それが百尺の切妻屋根を持つ、単純だが大胆な平屋だった。
ひとつの切妻屋根をぱさっと被せた下には、駐車スペース、通り土間、玄関土間、LDK、その奥に水廻りと寝室などのプライベートゾーンを横一列につなげている。とても素直で素朴などこにでもあるような形態だが、敷地に対する建物や庭のボリュームの地割は無駄をなくし、南に面した長い軒下は夏の日差しと冬の積雪から身を守るための重要な意味がある。
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以下、建築家によるテキストです。
周囲には見晴らしを遮るものがなく、遠くに連なる山々を望む広い敷地。
建築の計画をするにあたり、太陽が照り付ける夏の昼下がりや、氷点下10℃の凍てつく晴天の朝にも訪れた。何度か更地に足を踏み入れしばらく周囲を眺めていると頭の中ではしだいに「この環境の中でどこまで建築の存在を消せるだろう」と考えるようになっていた。
それくらいに取り囲む自然は美しく、その中にひっそりと佇む建築が最良の計画なのだろうと感じていた。
敷地の面積は大きいのだが、その形や道路に接する部分はいびつだった。その中で方位や眺望を頭に置きながら暮らしを探り、生活と環境に馴染む形態にたどり着いた。それが百尺の切妻屋根を持つ、単純だが大胆な平屋だった。
ひとつの切妻屋根をぱさっと被せた下には、駐車スペース、通り土間、玄関土間、LDK、その奥に水廻りと寝室などのプライベートゾーンを横一列につなげている。とても素直で素朴などこにでもあるような形態だが、敷地に対する建物や庭のボリュームの地割は無駄をなくし、南に面した長い軒下は夏の日差しと冬の積雪から身を守るための重要な意味がある。
どの方角を見ても景色は最高なのだが、開口は必要な場所にのみ設け、極寒の季節でも熱損失をできるだけ抑えるように配慮している。
家の中からの眺望は申し分ないので、あえて庭はあまり作り込まないようにした。ただこの場にふさわしいシンボリックな樹は必要と考えていたので、そこには大きなケヤキの樹を選んだ。この樹を暮らしの拠り所として、季節が流れ、年月が経ち、いろいろな家族の出来事と共にあり続けてくれることを期待している。
自然はいつもありのままの姿を見せてくれる。優しい面もあり、厳しい面もある。多様な自然の姿と共に暮らすことは、人間らしく健康に生きることに通じるのではないかと考えている。建主のセンスを借りながら暮らしを考えたことで、住む人の気持ちに寄り添った住宅の形ができたのではないだろうか。
■建築概要
題名:百尺の平屋
所在地:福井県大野市
主用途:一戸建ての住宅
設計:noji.aa 野路建築設計事務所
担当:野路敏之
施工:建築工房英
構造:在来木造
階数:平屋
敷地面積:1,367.98㎡(413.81坪)
建築面積:199.98㎡(60.49坪)
延床面積:182.10㎡(55.08坪)
設計期間:2020年7月~2021年6月
工事期間:2021年7月~2022年2月
竣工:2022年2月
写真:白川雄太