森下修 / 森下建築総研が設計した、福井・おおい町の商業施設「SEE SEA PARK」です。
新事業挑戦も支援する官民協同の建築です。建築家は、“集落”の様な“営みに馴染む”在り方を求め、72個の“ユニット”を組合せて様々な用途に応える空間を構築しました。また、外皮等の選択は自然と繋がる“開放型”の環境制御も意図されました。施設の公式サイトはこちら。
2019年の夏の終わり、ヒグラシが奏でるカナカナという心地よい音のなか、おおい町を訪れた。
敷地は整備された臨海埋立地にあり、海から山へとつながる空間のフローの過程にある。暖かくしかし粘度を感じる、柔らかく、優しい空気が身にまとわりついていた。人が集い、居心地のよい環境を創ることを考えた。
新規創業や新事業展開に挑戦する場となる「チャレンジショップ等」を整備することとプロポーザルの要綱にあった。
人を誘うことが重要であるが、建築の形や意匠が目を引くということ、すなわち固定的な独特な個性を建築に与えるということではなく、均質的な空間単位を集合させ濃度差を作ることにより、秩序の中に多様性を生み出す。
集落に民家が必然のように集まり地形と共に魅力的な空間濃度を作り出すようなそんな印象的ではあるが飽きのこない人々の営みに馴染んだ場所ができたらと感じた。
建物は太陽エネルギーを吸収し蓄え、ときに熱を放出する。また、大地の温熱環境と同期し、上層に空気を抱くユニットが漂う。
民家にかつてあった土間やとおり庭の雰囲気が現代に軽やかに再現される。熱容量が大きい瓦屋根や空気を抱く茅や葦の葺き屋根に代わりここでは透明なETFE(フッ素樹脂フィルム)に覆われた空気塊の集積がダウンジャケットのように外部とエネルギーの交換を行い下層の内部環境を安定化する。
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以下、建築家によるテキストです。
2019年の夏の終わり、ヒグラシが奏でるカナカナという心地よい音のなか、おおい町を訪れた。
敷地は整備された臨海埋立地にあり、海から山へとつながる空間のフローの過程にある。暖かくしかし粘度を感じる、柔らかく、優しい空気が身にまとわりついていた。人が集い、居心地のよい環境を創ることを考えた。
新規創業や新事業展開に挑戦する場となる「チャレンジショップ等」を整備することとプロポーザルの要綱にあった。
人を誘うことが重要であるが、建築の形や意匠が目を引くということ、すなわち固定的な独特な個性を建築に与えるということではなく、均質的な空間単位を集合させ濃度差を作ることにより、秩序の中に多様性を生み出す。
集落に民家が必然のように集まり地形と共に魅力的な空間濃度を作り出すようなそんな印象的ではあるが飽きのこない人々の営みに馴染んだ場所ができたらと感じた。
建物は太陽エネルギーを吸収し蓄え、ときに熱を放出する。また、大地の温熱環境と同期し、上層に空気を抱くユニットが漂う。
民家にかつてあった土間やとおり庭の雰囲気が現代に軽やかに再現される。熱容量が大きい瓦屋根や空気を抱く茅や葦の葺き屋根に代わりここでは透明なETFE(フッ素樹脂フィルム)に覆われた空気塊の集積がダウンジャケットのように外部とエネルギーの交換を行い下層の内部環境を安定化する。
杉板ルーバーのスリットからなる構造プリズムによって太陽光は屋内に拡散し円やかな光で内部環境を満たす。高断熱、高気密な壁体で外部と隔絶した環境を機械設備でコントロールする従来の省エネの考えではなく、自然環境そして周囲の文化へとつながる開放型の穏やかな環境コントロールを目指す。
ユニットは空気を抱く基本構成だが、同時に大空間を支えるどこまでも拡張増殖していくフレキシブルなトラスのような構成単位でもある。どこまでもつながっていくが、その下には多様な人々の営みが花開く。家としてのメタファーも構成にとりいれ、開かれた親しみを感じる空間をそこに創ることを意図する。
超立方体に近い4.8m角、高さ2.4mのキューブがスチールシリンダーをコアとしてユニットの単位を創る。ツリーと呼ぶ2.4m角平面の櫓が枝のように延びるトラスによりユニットを支える。ユニットはアーチ状に連続し、下部空間の質により、高低差を与えていくが、同時に背後に控える山々の地形と呼応するような空間の質の変化を作ることを意図している。
おおい町整備のWEST棟と同商工会整備のEAST棟、合わせて72のユニットと15のツリーの集合からなる屋根と、ETFEからなるトップライトが織り重なり、ランダムな幾何学模様を創る。屋根は当初3.2mmの鉄板に遮熱塗料と断熱材を吹き付ける仕様としていたが、施工者の提案により超強力伸縮型塗膜防水を採用することとなる。これがETFE膜と一体化しモノコックな膜面が屋根面全体を覆うことになる。ETFEは断熱性能はほとんど0であるがユニットに溜まった熱を放熱する役割も担う。ダウンジャケットでも羽毛=空気塊を包む外皮はとても薄いが、外皮を通してエネルギーは呼吸している。
■建築概要
題名:SEE SEA PARK
所在地:福井県大飯郡おおい町成海字1-8-5
主用途:複合商業施設
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設計
建築:森下建築総研 担当/森下修、中馬啓太、宇都祥平、David Carmona*、福田琴音*、Bryan Reinhard*(*元所員)
杉浦友哉(スギウラ・アーキテクツ)
構造:KAP 担当/岡村仁、桐野康則、ミハイロヴ イスクレン*(*元所員)
設備:建築設備設計研究所 担当/増田祥久、藤野茂行、山本篤、丸尾直樹
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監理:森下建築総研 担当/森下修、中馬啓太、丹羽健人、山下真輝* (*元所員)
杉浦友哉(スギウラ・アーキテクツ)
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施工
建築:荒木 担当/馬路勝、福井正太郎、正津恭平
空調:増田空調 担当/増田良
衛生:増田空調 担当/増田良
電気:きんでん 担当/岩本剛
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構造:鉄骨造
階数:地上1階
建蔽率 30.26%
容積率 24.21%
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チャレンジショップ棟(WEST棟)
敷地面積 6,603.08m2
建築面積 1,999.74m2
延床面積 1,701.95m2
建蔽率 30.29%
容積率 23.11%
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テナント棟(EAST棟)
敷地面積 4,195.13m2
建築面積 1,269.37m2
延床面積 1,038.64m2
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設計:2019年10月~2020年10月
工事:2020年11月~2022年06月
竣工:2022年07月
写真:母倉知樹
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 外装・屋根 | 屋根 | 高伸縮・高強度形ウレタン防水:凄極膜(保土谷化学工業)
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外装・壁 | 外壁 | フレキシブルボードt=8 2-UE塗装
Low-Eガラス5+A+5
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外装・建具 | 開口部 | 高機能フッ素樹脂ETFEフィルム
木製框引戸 [複層ガラス]
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内装・床 | 床 | コンクリート金ゴテ押え ランデックスコート塗布(大日技研工業)
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内装・壁 | 壁 | 捨張の上ケイカル板t=6目透し貼 [底目テープ貼] 2-UE塗
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内装・天井 | ルーバー | 杉バラ板目透かし張
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