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2023.8.17Thu
2023.8.16Wed
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西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる
photo©藤村泰一

SHARE 西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる

architecture|feature
畔柳尭史建材(外装・壁)建材(外装・屋根)建材(内装・床)建材(内装・壁)建材(内装・天井)建材(外構・壁)住宅西下太一図面あり愛媛藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる外観 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる左:リビングダイニング、右:土間 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる土間から庭を見る。 photo©藤村泰一

西下太一建築設計室が設計した、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」です。
南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居です。建築家は、環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築しました。そして、内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げました。

60代の両親のための終の住処。

建築家によるテキストより

敷地は南面道路に巾広く接道しているものの、道路の向かいには住宅が建て並んでおり、単純に南面に依存するだけでは安心感が得られない。どこか身体的なスケールに欠けたこの敷地のなかに、いかに小さな人間味のある空間を生み出せるだろうか。

この場所の南向きの開けた光は強い「正」のエネルギーを持つ一方、ありのままに生活に受け入れるにはどこか晒され過ぎている。「静」を求める日常においては、「正」のエネルギーは感じつつも、それらと少し距離をとり、穏やかに過ごすことができるようにと考えはじめた。

建築家によるテキストより

まず、敷地全体に1枚の大屋根を掛け、通りに対して低く構える。全体の骨格として守りの環境をつくる。その基本的な骨格を維持しつつ、中間領域を整えていくことにした。

老後の住まいのシーンとして、例えば、孫を含めた子世帯が集まるといった活動的なひと時は幸せなハイライトである一方、日常はあくまで静かに穏やかに過ごしたい。暮らしの中にはシーンに応じた「気持ちのグラデーション」が生まれるものだ。

光を柔らかく拡散するルーバー板塀、緑陰と木漏れ日をもたらす庭、軒下、複数の建具で内外の繋がり方を調整できる大開口、土間、そしてメインの居場所となるLDK。「活動的な窓辺(土間)」と「奥の静かなソファコーナー(LDK)」という対の関係の間には、このような多層のレイヤーが内包され、グラデーショナルな繋がりが生まれている。

建築家によるテキストより

以下の写真はクリックで拡大します

西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる外観 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる外観 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる外観 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる外観 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる外観 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる屋外テラス photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる玄関へのアプローチ。 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる玄関と庭。 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる庭 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる左:玄関ドア、右:庭 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる土間 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げるキッチン photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げるキッチンからリビングダイニングを見る。 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる左:土間、右:リビングダイニング photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる左:リビングダイニング、右:土間 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げるリビングダイニングから土間と庭を見る。 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる建具を閉めた様子。 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる建具を閉めた様子。 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる土間から庭を見る。 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる左:リビングダイニング、中:土間、右:庭 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる左:土間、右:庭 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる庭 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる庭から土間とリビングダイニングを見る。 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる左:庭、右:土間 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる寝室 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる予備室 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる洗面室 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる庭、夜景 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる庭から土間とリビングダイニングを見る。夜景。 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる庭、夜景 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる屋外テラス、夜景 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる屋外テラス、夜景 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる外観、夜景 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる外観、夜景 photo©藤村泰一
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる平面図 image©西下太一建築設計室
西下太一建築設計室による、愛媛・伊予市の「鳥ノ木の家」。南面接道の敷地に建つ設計者の両親の住居。環境を享受しつつ静かな日常を実現する建築を目指し、通りに対し低く構えた大屋根で“守りの環境”を構築。内と外の間に“多層のレイヤー”を設けて段階的に繋げる断面図 image©西下太一建築設計室

以下、建築家によるテキストです。


60代の両親のための終の住処。

敷地は南面道路に巾広く接道しているものの、道路の向かいには住宅が建て並んでおり、単純に南面に依存するだけでは安心感が得られない。どこか身体的なスケールに欠けたこの敷地のなかに、いかに小さな人間味のある空間を生み出せるだろうか。

この場所の南向きの開けた光は強い「正」のエネルギーを持つ一方、ありのままに生活に受け入れるにはどこか晒され過ぎている。「静」を求める日常においては、「正」のエネルギーは感じつつも、それらと少し距離をとり、穏やかに過ごすことができるようにと考えはじめた。

まず、敷地全体に1枚の大屋根を掛け、通りに対して低く構える。全体の骨格として守りの環境をつくる。その基本的な骨格を維持しつつ、中間領域を整えていくことにした。

老後の住まいのシーンとして、例えば、孫を含めた子世帯が集まるといった活動的なひと時は幸せなハイライトである一方、日常はあくまで静かに穏やかに過ごしたい。暮らしの中にはシーンに応じた「気持ちのグラデーション」が生まれるものだ。

光を柔らかく拡散するルーバー板塀、緑陰と木漏れ日をもたらす庭、軒下、複数の建具で内外の繋がり方を調整できる大開口、土間、そしてメインの居場所となるLDK。「活動的な窓辺(土間)」と「奥の静かなソファコーナー(LDK)」という対の関係の間には、このような多層のレイヤーが内包され、グラデーショナルな繋がりが生まれている。

そして、住まい手が暮らしの中で生じる気持ちのグラデーションに応じて、無意識に心地よい居場所に導かれることを期待している。

***

延床面積は24坪弱となるべくコンパクトになるように計画したが、庭・土間・LDKが一連なりとなった空間は体感的にはゆったりと感じられ、決して窮屈ではない。

量(面積)より質(空間体験)を重視することは、老後の暮らしやすさに直結していくはずだ。

***

住まいとは「繰り返し」の動作の受け皿とも言える。
終の住処での暮らしにのなかでの「上質」とは一体何を指すだろう。
それは日々の何気ない繰り返し動作の一瞬の狭間にある、一瞬のゆとりではないだろうかと思うようになった。

庭木に水やりを終えた後の朝日に輝く水滴。
窓一面の眩しいばかりの新緑。
土間からの反射光に包まれる美しい天井。
一度として同じ模様の無い、窓に切り取られた北の空。
冬の低い陽射しと木漏れ日が差し込む土間。
薪ストーブの炎がはぜる音。

これらはすべて一瞬の出来事だが、
日常に静かで芳醇な輝きをもたらしてくれる。

穏やかで平凡に見える日々の暮らし。
しかし、よく観察すると世界は如何に変化に満ち満ちていることか。
なんでもない日々の暮らしが一番幸せに感じられますように。

■建築概要

設計:西下太一建築設計室
用途:専用住宅
所在地:愛媛県伊予市
構造:木造(枠組壁工法)
規模:地上1階
敷地面積:228.74m2(69.19坪)
延床面積:77.44m2(23.46坪)
竣工:2022年1月
写真:藤村泰一
動画撮影編集:PolarDesign・畔柳尭史

建材情報
種別使用箇所商品名(メーカー名)
外構・壁板塀

サーモラジアタパイン ランビック加工

外装・壁外壁

杉ラフソーン加工 塗装品

外装・屋根屋根

ガルバリウム鋼板

内装・床室内床

オーク 巾広

内装・床土間床

芦野石

内装・壁室内壁

白土
砂漆喰

内装・天井室内天井

白土
桐

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※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません

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    2023.08.17 Thu 09:30
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    ザハ・ハディド事務所による、中国・成都市の、橋「Jiangxi River Bridge」。自動車・自転車・歩行者の為の橋の計画。全長約300mを高さ約30mのアーチで支える構造で、形状は“彫刻的なランドマーク”としても機能。構造解析で200年に1度の気象現象にも耐えうる強度も担保
    photo©Arch Exist

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    architecture|feature
    橋中国ザハ・ハディド図面あり
    ザハ・ハディド事務所による、中国・成都市の、橋「Jiangxi River Bridge」。自動車・自転車・歩行者の為の橋の計画。全長約300mを高さ約30mのアーチで支える構造で、形状は“彫刻的なランドマーク”としても機能。構造解析で200年に1度の気象現象にも耐えうる強度も担保 photo©Arch Exist
    ザハ・ハディド事務所による、中国・成都市の、橋「Jiangxi River Bridge」。自動車・自転車・歩行者の為の橋の計画。全長約300mを高さ約30mのアーチで支える構造で、形状は“彫刻的なランドマーク”としても機能。構造解析で200年に1度の気象現象にも耐えうる強度も担保 photo©Arch Exist
    ザハ・ハディド事務所による、中国・成都市の、橋「Jiangxi River Bridge」。自動車・自転車・歩行者の為の橋の計画。全長約300mを高さ約30mのアーチで支える構造で、形状は“彫刻的なランドマーク”としても機能。構造解析で200年に1度の気象現象にも耐えうる強度も担保 photo©Liang Xue

    ザハ・ハディド・アーキテクツが設計した、中国・成都市の、橋「Jiangxi River Bridge」です。
    自動車・自転車・歩行者の為の橋の計画です。全長約300mを高さ約30mのアーチで支える構造で、形状は“彫刻的なランドマーク”としても機能します。また、構造解析で200年に1度の気象現象にも耐えうる強度も担保されました。


    こちらはリリーステキストの翻訳です

    成都の西線道路に架かる一連の橋の最初のものとなる全長295メートルの新しい成都西第一橋は、中国四川省の沱江の支流である江西江に架かかっています。

    中央支間長185メートル、副支間長55メートル、川岸まで届く成都西第一橋梁は、蛇行する江西川に架かる道路、自転車、歩行者用の橋です。そして、西線道路が空港新都市リングロードとサイクリングルートの西側区間になることを可能にします。

    アーチは120~250メートルのスパンに対して最も効率的な橋構造を提供するため、この左右対称の橋は、道路デッキの両側から立ち上がる2つの主要な鋼鉄製アーチで構成されています。上昇するにつれて、アーチは共に傾き、そのクラウンの部分で接線方向に触れ、横方向の風力から構造を安定させます。

    橋を支える橋脚と橋台のダイナミックな曲率は、橋の主要なアーチと道路デッキに向かって細くなり、成都の交通インフラにおける彫刻的なランドマークとなっています。

    ザハ・ハディド・アーキテクツ(ZHA)は、2019年の設計コンペに続いて橋の建設を依頼され、デザインのデジタルモデル上で構造解析ソフトウェアを使用しました。すべての材料の自重、積載荷重、交通荷重、さらに風や温度などの環境的な考慮事項を検討し、この分析によって、構造と基礎が200年に一度の気象現象に要求される基準を上回るように設計されていることが確認されました。

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    橋中国ザハ・ハディド図面あり
    2023.08.17 Thu 07:00
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    2023.8.16Wed
    • 佐藤文+鹿嶌信哉 / K+Sアーキテクツによる、東京の「新宿SOHO」。企業の拠点機能と生活空間を内包する計画。“個性と存在感”を求め、そびえ立つ“凛とした佇まい”と遺跡の様な“長い時間軸”を備えた建築を志向。常に仕事に向合う為に“会社の一部に住空間を挿入”する様に作る
    • 胡実建築設計事務所による、岡山市の「サン・クリニック産後ケアセンター」。既存病棟を改修した育児の補助を行う施設。合理性が重視された建物を“命の喜びを分かち合う”場にする為、アーチと列柱を用いて“ヒューマンスケールな規律”を空間に付与。光を柔らかく拡散させ母子を包み込む
    2023.8.18Fri
    • 坂茂建築設計が、滋賀・彦根市の「(仮称)図書館中部館」設計プロポーザルで最優秀候補者に選定。技術提案書や審査講評も公開
    • 岡佑亮 / チドリスタジオと岡倉慎乃輔による、石川・金沢市の店舗「シンタテベイクストア」。商店街の建物に入るパン店。最小限の操作での“全体性を持った意匠”の実現を求め、色を用いて既存の痕跡を“チューニング”する“他律性”を備えた設計を志向。周辺環境の色をサンプリングして内外の一体感も創出
    • 早川友和建築設計事務所による、栃木の「星乃珈琲店 宇都宮若松原店」。全国展開する店舗の新型の“ひな型”として計画。あらゆる敷地で“周辺と調和する”形式を求め、他にも適用可能な“空の借景”等の3つの“余白装置”を考案して建築に導入。屋根の連なりは柔らかな自然光も取込む

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