SHARE 石嶋寿和 / 石嶋設計室による、石川・小松市の「山崎設備設計新社屋」。事業規模の拡大に対応する増築計画。意思疎通の活性化での“知的生産性の向上”を求め、上階の大半をカフェやジムなどの交流空間とした建築を考案。配管等が露出された天井は“設備計画の学習素材”としても機能
石嶋寿和 / 石嶋設計室が設計した、石川・小松市の「山崎設備設計新社屋」です。
事業規模の拡大に対応する増築計画です。建築家は、意思疎通の活性化での“知的生産性の向上”を求め、上階の大半をカフェやジムなどの交流空間とした建築を考案しました。また、配管等が露出された天井は“設備計画の学習素材”としても機能しています。施主企業の公式サイトはこちら。
山崎設備設計は、WEBを活用した戸建住宅の設備設計業務を早期から行い、毎年業績を拡大してきた。
現在では、様々な用途にも進出し、更なる事業規模の拡大が見込まれている。今回の増築工事は、社員数の増加への対応と、社員同士のコミュニケーションの活性化による知的生産性の向上を目的としている。
2階は社員同士のコミュニケーションの場。スキップフロアや天井の変化で状況に応じた環境を提供する。カフェ、バー、ラウンジは、栄養満点の食事を提供する社員食堂やグラスを傾けながら熱い議論を交わす場としても利用され、スポーツジムで共に汗を流すことで、健康経営の推進や社員同士の交流が促進され、更なる業績向上寄与すると考えた。吹抜上部に浮かぶ四周ガラス張りのスカイラボは、社屋内を一望できるとともに、白山連峰の景色を同時に享受できるこの社屋一の場であり、象徴的につくりあげた。
均等スパンのスケルトン天井は、構造の美しさが際立ち、設備計画の学習素材としても活用している。通常は天井内に隠れてしまう、配線や配管のルート、接合方法等、実物を見て学べる設計とした。
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以下、建築家によるテキストです。
意匠計画
山崎設備設計は、WEBを活用した戸建住宅の設備設計業務を早期から行い、毎年業績を拡大してきた。
現在では、様々な用途にも進出し、更なる事業規模の拡大が見込まれている。今回の増築工事は、社員数の増加への対応と、社員同士のコミュニケーションの活性化による知的生産性の向上を目的としている。
外観は金属製サンドイッチパネルと大きなカーテンウォールで未来志向のラボをイメージさせるデザインとした。また稜線に沿って上っていく切妻屋根は、同社の発展と向上心を持って実直に設計業務に携わっている社員の姿勢を表現している。
新社屋は2階建の鉄骨造で、既存社屋との間に下屋を配置した。均等スパンのスケルトン天井は、構造の美しさが際立ち、設備計画の学習素材としても活用している。通常は天井内に隠れてしまう、配線や配管のルート、接合方法等、実物を見て学べる設計とした。
1階は執務を中心としたフロア。大きなワンルームの執務空間は社員増にともなう柔軟なレイアウト変更に対応している。また、玄関では開放的な階段とシンボルツリーが来客者を出迎え、会議室では絵画のように切り取られた白山連峰の雄大な景色が、来客者に最高のおもてなしを提供する。
2階は社員同士のコミュニケーションの場。スキップフロアや天井の変化で状況に応じた環境を提供する。カフェ、バー、ラウンジは、栄養満点の食事を提供する社員食堂やグラスを傾けながら熱い議論を交わす場としても利用され、スポーツジムで共に汗を流すことで、健康経営の推進や社員同士の交流が促進され、更なる業績向上寄与すると考えた。吹抜上部に浮かぶ四周ガラス張りのスカイラボは、社屋内を一望できるとともに、白山連峰の景色を同時に享受できるこの社屋一の場であり、象徴的につくりあげた。
テレワークがアフターコロナの働き方の選択肢となり、オフィス面積の減少が進む中、オフィスのあり方も大きく変化しつつある。その最中にオフィスを増築することの意味は、同社がこれまでどおり「集まって働く」ことの重要性を強く感じているためである。
集まって働くことで社員同士の情報共有や技術の継承がスムーズに行われ、それが同社の知的生産性の向上につながり、さらには依頼者の利益につながると考えているためです。このオフィスはそれを実践する場としての役目を担っている。
(石嶋設計室 石嶋寿和)
構造計画
変形した切妻屋根、片持ち床、スキップフロアといった複数の意匠的な要素がある建物を、構造的に合理性をもって計画することを目指した。
主要構造は鉄骨造、X方向4m、Y方向3.6mモジュールのラーメン架構とした。
屋根は北西から南東にむかって斜めに棟を設ける変形した切妻屋根である。意匠的には大らかな屋根架構であるが、構造的にはXY両方向とも梁が勾配しているため柱梁の接合部の納まりが複雑になる。そのためノンダイアフラム形式のNDコアを用いて仕口の納まりを簡略化した。また、モジュールを整理したことで棟梁が柱梁の交点を結ぶようになりシンプルな仕口納まりに寄与している。
2階西側を3.6mの片持ち構造とし、1階部分を駐車場として利用する。2階及び屋根の片持ち梁の控えは3.6m×2.5=9.0mの梁とし、バランスの取れた応力状態となる片持ち構造とした。
2階部分はスキップフロアとなることから剛性に偏りがあるため耐力に余力を持たせている。意匠的に柱を抜いた箇所があるが、モジュールが整理されていることから無理のない架構計画となっている。
複数の要素をシンプルなモジュール構成により支える計画とした。
(MOF)
設備計画
当プロジェクトの設備設計コンセプトは、持続可能性と効率性を重視した設備システムの構築である。
NearlyZEB(Nearly Zero Energy Building):エネルギー消費を最小限に抑えたNearlyZEB認証を取得した。
高効率床下空調の採用:高効率な床下空調システムを採用した。このシステムは、空調のためのエネルギー使用量を最小限に抑えながら、快適な室温を維持する。
省エネ:エネルギー効率の高い機器や全熱交換型換気扇(ロスナイ)、LED照明の使用、断熱性の向上、エネルギー効率の高い建材の選択などを通じて、建物全体のエネルギー消費量を劇的に削減した。
太陽光発電:建物の屋根に38kwの太陽光パネルを設置し、建物内のエネルギー需要の一部を賄う。
照明制御:効率的な照明制御システムを導入した。人感センサーやタイマーによる照明のON/OFF制御、自然光の利用促進、照明の明るさ調整などを行い、照明エネルギーの無駄を最小限にした。
これらの要素を組み合わせることで、私たちは環境に配慮し、エネルギー効率が高く、持続可能な建物を実現した。エネルギー消費の最小化と創エネルギーの活用により、低炭素社会の実現に貢献する。
(山崎設備設計 山崎純悟)
照明計画
1階と2階で用途が異なるこの建築では、照明の手法も大きく変えている。
落ち着いた印象の空間を目指した内装では、天井をダークグレー(2階)やグレー(1階9に塗装しているため、反射率の悪い光環境としては明るさを確保しにくい条件となった。そのことを悪く感じさせないよう、効率の良い照明計画が必要であったが、主に執務スペースとなる1階では、天井の反射をあまり利用することなく、一般的なベース照明を吊り下げることで効率的な照度の確保を考えた。
多用途での利用を目的とする2階では、指向性の高いスポットライトで計画し、あえて空間に「光のムラ」を作ることとした。明るめの場所、暗く落ち着いた場所が混在する空間では、所員が好きな場所で多様に居心地を体験する場となっている。
また、建物の特徴でもある、国道側の大きな窓からは2階の内部が良く見える。見上げたときに眩しい光とならないよう、照明はグレアレスのダウンライトやスポットライトを採用し、向きの調整も外側に光が向かないよう細かな調整を行っている。
夕方からは調光で明るさを落とすことで、これまでの明るすぎる仕事空間からは解き放たれたコミュニケーションの場としての光環境となった。
(Mantle 久保隆文)
■建築概要
題名:山崎設備設計新社屋
所在地:石川県小松市長田町
主用途:事務所
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設計
意匠:石嶋設計室 担当/石嶋寿和、五十嵐是範(元所員)、張怡鶴
構造:MOF 担当/松田真也、江田拓也、諸藤仁美
設備:山崎設備設計 担当/山崎純悟
照明:Mantle 担当/久保隆文、吉清紫
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施工
建築:丸西組 担当/依光史彦、伴陽希
機械設備:山田ダクト 担当/山田誠
電気設備:今出電気商会 担当/山本博人
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構造:鉄骨造
階数:地上2階
敷地面積:1,242.96㎡
建築面積:600.44㎡
延床面積:969.06㎡
設計:2021年4月~2022年6月
工事:2022年7月~2023年4月
竣工:2023年4月
写真:迎崇(迎写真事ム所)
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
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外装・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板t=0.4竪はぜ葺き(セキノ興産)+アスファルトシート防水 |
外装・壁 | 外壁 | 金属サンドイッチパネル:アイジーヴァンド t=35(アイジー工業) |
内装・床 | 会議室1 床 | 600角磁器質タイルt=10(ADVAN)+モルタル |
内装・床 | 会議室2 床 | 畳t=40+ラワンベニヤt=12 |
内装・床 | 事務室2 床 | |
内装・床 | スカイラボ 床 | |
内装・床 | ジム 床 | ラバーフロアt=10(ADVAN)+モルタル下地調整t=20 |
内装・床 | ラウンジ 床 | |
内装・壁 | 壁 | |
内装・天井 | 会議室1 天井 | デッキプレートあらわし |
内装・天井 | 会議室2 天井 | |
内装・天井 | 事務室2 天井 | |
内装・天井 | スカイラボ 天井 | 屋根下地あらわし [不燃木毛セメント板] |
内装・天井 | ジム 天井 | |
内装・天井 | ラウンジ 天井 | 屋根下地あらわし [木毛セメント板]+梁あらわし |
内装・建具 | スカイラボ・ジム 建具 |
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