早坂直貴+斧田裕太 / 邸宅巣箱と五十嵐悠介建築事務所が設計した、神奈川の「庭園緑地の邸宅」です。
“都市と自然の狭間”にある300坪超の敷地での計画です。建築家は、環境の“多面性”を活かした在り方を求め、“開放感と親密さ”のバランスを再構築する建築を志向しました。そして、居間に貫入する“5つの個室ヴォリューム”を周辺を読み解いて配置しました。
東京近郊の住宅地における戸建て住宅の計画である。各戸300坪超の土地とその緑地による広々とした周辺環境に特徴がある。こう聞くと白紙のような敷地と思われがちだが、意外とそうでもない。ここはニュータウンと比べれば余白が大きいが、山間地の一軒家ほど周囲に無関心ではいられない。
この敷地の特異性は、都市と自然の狭間にある絶妙な周辺環境にある。ここでは人為的な自然と生来の自然が向かい合う。東側は隣家が都市を自覚させるのに対して、西側は雑木林に居るような錯覚に陥る。東西南北の周辺環境がそれぞれにユニークな個性を持つのだ。
この周囲環境の多面性。これを利用して「開放感と親密さ」のバランスを再構築することが、この場所に相応しい住宅の在り方だと思った。具体的には5つの個室ボリュームを、周辺環境を読み込みながら丁寧に配置(設計業務は、ひたすらに平面図を修正しては現地に地縄を貼り直す、という作業に費やされた)し、個室ボリュームの量感と、その間にひらける庭によって「開放感と親密さ」のバランスを調停している。
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以下、建築家によるテキストです。
東京近郊の住宅地における戸建て住宅の計画である。
各戸300坪超の土地とその緑地による広々とした周辺環境に特徴がある。こう聞くと白紙のような敷地と思われがちだが、意外とそうでもない。ここはニュータウンと比べれば余白が大きいが、山間地の一軒家ほど周囲に無関心ではいられない。
この敷地の特異性は、都市と自然の狭間にある絶妙な周辺環境にある。ここでは人為的な自然と生来の自然が向かい合う。東側は隣家が都市を自覚させるのに対して、西側は雑木林に居るような錯覚に陥る。東西南北の周辺環境がそれぞれにユニークな個性を持つのだ。
この周囲環境の多面性。これを利用して「開放感と親密さ」のバランスを再構築することが、この場所に相応しい住宅の在り方だと思った。具体的には5つの個室ボリュームを、周辺環境を読み込みながら丁寧に配置(設計業務は、ひたすらに平面図を修正しては現地に地縄を貼り直す、という作業に費やされた)し、個室ボリュームの量感と、その間にひらける庭によって「開放感と親密さ」のバランスを調停している。
また個室ボリュームの上には大梁が掛かる。この梁はリビング天井を横断し、束を通して吹き抜けを成立させている。この光や青空を導く吹き抜けは「開放感」を担い、同時に梁の量感は「親密さ」に寄与する。
このように都市と自然との狭間にある周辺環境は、「開放感と親密さ」のバランスについて改めて考える貴重な機会となった。言い換えれば、それは「外と内」あるいは「部屋と庭」のバランス、ひいては「人間と自然」のバランスの再考だったと感じている。
■建築概要
題名:庭園緑地の邸宅
所在地:神奈川県
主用途:一戸建ての住宅
設計:邸宅巣箱 担当/早坂直貴
施工:大同工業
協力:五十嵐悠介 / 五十嵐悠介建築事務所
構造:木造
階数:地上1階
敷地面積:1057.1㎡
建築面積:244.06㎡
延床面積:214.68㎡
設計:2021年12月~2023年5月
工事:2022年5月~2023年5月
竣工:2023年5月
写真:根本健太郎写真事務所