大峯竣平+堤康浩 / デザインオツが設計した、石川・輪島市の「二ツ屋町ハウス」です。
五差路に面する敷地での計画です。建築家は、“風土的な振舞い”が背景にある住居を求め、人々の“懐のひろさ”に着目して“ひろさ”の“懐”となる建築を志向しました。そして、土間・広間・物見縁台を繋いだ気積のある空間で様々な受入れを可能にしました。
石川県輪島市に計画した夫婦と子供二人のための住まい。
敷地は生活道路が集まる五差路に面しており、その向こうには鳳至川と小さな橋があり、ぽつぽつと生業の煙が昇る里山の風景が広がる。
うちあわせに向かうと、建主夫婦と子どもたちがいつも出迎えてくれて、輪島の美味しい御食事へ連れていってくれたり、いいところを案内してくれたりするし、その親御さんや知り合い友人もみな快く出迎えてくれる懐の「ひろさ」がある。
輪島での郷土的なものとして、それが人々の精神性にも関わっていることがあると思った。この「ひろさ」が、建主の延長である建築にも何か絡まっていけないかと計画を進めていった。
また、建主にはお子さんがいて、二人の兄弟である。
能登里山の風景や風土的な振舞いが住まいの背景としてあり、彼らにとって家族で過ごす空間や時間が良いものであるように願った。
玄関土間の上部には大きな吹抜け、壁にも天井にも開口部を設けた、この建物で最も陽光が入る空間である。そこから繋がる12畳程の二階のホール、輪島の景色のためのピクチャウィンドウと三角形の物見縁台がある。
上下に連続した大きな気積の空間であり、外部環境へのアクセスハブであり、住居のなかにある「そと」のようである。
お客さんとのやり取り、外の空気のにおい、景色、陽の入り方、鳳至川の水音など、何らかの外部環境の多様さが介在しやすい場とした。
「そと」の気積はこの建物の中心の場所であり、家族のプライベートとしてのLDK・客室・居室が接する構成となっている。
各室から出ると「そと」に居て、日常の合間に自然な形で外部環境の情報に触れられる。
「きょうのお天気は」「お客さん、果物持ってきてくれた」「きょうは朝日がきれいやわ」
この土間から吹抜け、ホールから物見縁台へと繋がる気積は、家のなかに外部環境の情報を迎える「ひろさ」という懐をもたらした。
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以下、建築家によるテキストです。
能登・輪島の二ツ屋町に計画する家族の住まい
石川県輪島市に計画した夫婦と子供二人のための住まい。
敷地は生活道路が集まる五差路に面しており、その向こうには鳳至川と小さな橋があり、ぽつぽつと生業の煙が昇る里山の風景が広がる。
うちあわせに向かうと、建主夫婦と子どもたちがいつも出迎えてくれて、輪島の美味しい御食事へ連れていってくれたり、いいところを案内してくれたりするし、その親御さんや知り合い友人もみな快く出迎えてくれる懐の「ひろさ」がある。
輪島での郷土的なものとして、それが人々の精神性にも関わっていることがあると思った。この「ひろさ」が、建主の延長である建築にも何か絡まっていけないかと計画を進めていった。
また、建主にはお子さんがいて、二人の兄弟である。
能登里山の風景や風土的な振舞いが住まいの背景としてあり、彼らにとって家族で過ごす空間や時間が良いものであるように願った。
外部を迎えられる「ひろさ」を持った、家の中心としての「そと」
大きな玄関戸を開けると8畳程の玄関土間、階段や建具を通して奥には居間があるのが分かる。
玄関土間の上部には大きな吹抜け、壁にも天井にも開口部を設けた、この建物で最も陽光が入る空間である。そこから繋がる12畳程の二階のホール、輪島の景色のためのピクチャウィンドウと三角形の物見縁台がある。
上下に連続した大きな気積の空間であり、外部環境へのアクセスハブであり、住居のなかにある「そと」のようである。
お客さんとのやり取り、外の空気のにおい、景色、陽の入り方、鳳至川の水音など、何らかの外部環境の多様さが介在しやすい場とした。
「そと」の気積はこの建物の中心の場所であり、家族のプライベートとしてのLDK・客室・居室が接する構成となっている。
各室から出ると「そと」に居て、日常の合間に自然な形で外部環境の情報に触れられる。
「きょうのお天気は」「お客さん、果物持ってきてくれた」「きょうは朝日がきれいやわ」
この土間から吹抜け、ホールから物見縁台へと繋がる気積は、家のなかに外部環境の情報を迎える「ひろさ」という懐をもたらした。
家族が引越してしばらくたったころに伺った際、大きな引き戸を開けて広々とした玄関土間へ招いてくれた。
大きな気積に触れながら玄関土間での世間話、とてもしっくりきているような気がした。
しばらく経って、親の留守中に2階のホールから繋がるテラスにて、子供達がお米の入ったお椀をお盆に載せて、窓辺のちいさな食事会が開かれていた。
震災をうけて
令和6年能登半島地震から一月後、調査のため現地へ訪れた。
輪島の全域の地盤が傾いたのか、気が付かない程度に床レベルに偏りがあった。
この「二ツ屋町ハウス」は不幸中の幸いか、致命的なダメージはなく、機能面では問題なく暮らしていける状態だった。
けれども、四方周辺の建物はほとんどが赤~黄色の被災建築物応急危険度判定の札が貼られ、その倒壊・半壊した建物の住人は避難し、人気(ひとけ)のない町となっていた。奥さんと子どもたちは二次避難で移住しており、避難所から出た旦那さんとそのご両親が住んでいた。
我々がクリティカルに現状を改善できることは数少ない。
補修や修繕の計画も、現状の能登では数多くの案件に対し、職人の手が全く足りていない。
復旧は数年ではなく、数十年ほどかかるのではないかと思ってしまう。
それでも、状況を把握して翻訳し、その先の未来や可能性を模索し、当事者と話し合うことで、少しばかり安心してもらうことはできる。
いま我々ができることを考え続けていきたい。
■建築概要
建物名称:二ツ屋町ハウス
英語タイトル:Futatsuyamachi House
所在地:石川県輪島市
主要用途:住宅
設計・監理:デザインオツ 担当/大峯竣平+堤康浩
施工:シティハウス産業株式会社、有限会社田方組、デザインオツ
階数:地上2階
敷地面積:222.55㎡
建築面積:78.71㎡(建蔽率35.36% 許容70%)
延床面積:128.13㎡(容積率81.46% 許容200%)
竣工:2021年5月
撮影:四ツ屋スタヂオ(松井晴香+松井竣平)