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2024.12.10Tue
2024.12.09Mon
2024.12.11Wed
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図
photo©中村絵

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architecture|feature
建材(内装・照明)浜田英明建築構造設計峯嶌工務店佐藤緋里建材(内装・設備)建材(外装・その他)建材(内装・造作家具)建材(外装・建具)建材(外構・床)建材(内装・金物)建材(外装・壁)建材(外装・屋根)建材(内装・建具)建材(内装・天井)建材(内装・壁)建材(外装・床)建材(内装・床)尾野克矩高池葉子中村絵千葉
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図俯瞰、東側から書庫と離れを見下ろす。 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図左手前:書庫、右奥:離れ photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図書庫、内部 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図書庫、内部 photo©中村絵

高池葉子+尾野克矩+佐藤緋里 / 高池葉子建築設計事務所が設計した、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」です。
設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画です。建築家は、沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案しました。また、先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図されました。
本建築の内覧会が、2024年12月14日(土)に開催されます(詳細は記事末尾に掲載)。参加申込はこちらから(締切:2024年12月11日まで)。

千葉県いすみ市の小さな山の頂上に、1万冊の本を収容する書庫と離れをつくった。

約40年前、私の父がこの地の山荘を購入し週末に通い果樹の手入れをしながら、毎月友人を招待し季節の恵みを楽しんできた。父がライフワークとして収集した本をアーカイブとして残したいと願い、書庫をつくることとなった。
また、私は学生時代からこれまで作成したすべての模型をこの山荘に運んでいた。いよいよ模型の置き場がなくなり、書庫の隣に建築模型を納める離れを同時につくらせてもらうことになった。

書庫に納める本は専門書が多く、将来的には小さな図書館として研究者や地域の方たちに開放する。また、離れも見せる倉庫として、訪れた方に建築模型を自由に眺めてもらう場所とする予定である。

建築家によるテキストより

山荘の周辺は空き家が多く、深刻な過疎化が進んでいる場所にただでさえ人が寄り付かなさそうな書庫と離れをつくる。このテーマにどう向き合うのか。

書庫は、この地に訪れたくなる動機付けのひとつとして、みんなが見に行きたくなるような特徴的なかたちの建物を提案した。
コンパクトなスペースの中にできる限りたくさんの本が置けるよう、ジグザグの壁を巻貝のように囲い込み外壁の周長をかせぎ、内部に小さな閲覧スペースを設けた。

建築家によるテキストより

敷地は鬱蒼とした森の中であるが、かろうじて樹上から光が差し込んでくる。極力直射日光を本に当てないために開口部は2枚の屋根をずらし、ハイサイドライトからの光のみを取り入れるようにした。内部の約6mのスパンは鉄骨のトラスで飛ばしている。

この屋根形状を実現するためには、野地板を放射状に張れるように登り梁の天端をすべて異なる角度で斜めカットする必要がある。3D加工機でプレカットを行うことで、複雑な形状もスムーズに加工することができた。

ハイサイドライトは、山の中へも搬入がしやすく耐候性、耐久性に優れたETFEフィルムを用いた。外壁は敷地の山の土を用いて20人のボランティアと一緒にワークショップ形式で塗り込んだ。伐採期限が過ぎている現地のスギ林を、この機会に数十本間伐し皮を剥ぎ、スギ皮を外壁の一部に張り付けた。

建築家によるテキストより

以下の写真はクリックで拡大します

高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図俯瞰、上空から見る。 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図俯瞰、北側から見下ろす。 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図俯瞰、東側から書庫と離れを見下ろす。 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図左:書庫、右:離れ photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図左手前:書庫、右奥:離れ photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図外観、書庫の南側の外壁を見る。 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図外観、書庫の外壁の詳細 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図外観、書庫の出入口を見る。 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図書庫、内部 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図書庫、内部 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図書庫、内部 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図書庫、内部 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図書庫、内部 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図書庫、内部 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図書庫、内部 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図書庫、内部 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図書庫、トイレを見る。 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図外観、離れの出入口を見る。 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図外観、離れ、南東側から見る。 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図離れ、内部 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図離れ、内部 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図離れ、内部 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図離れ、内部から開口部を見る。 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図左:書庫、右:離れ、夕景 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図外観、書庫を見る、夕景 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図外観、書庫の開口部を見上げる、夕景 photo©中村絵
高池葉子建築設計事務所による、千葉・いすみ市の「森の書庫と離れ」。設計者が父親の為に手掛けた“1万冊を収める書庫”等の計画。沢山の書籍を収容する為に、ジグザグの壁を“巻貝”のように配置する構成を考案。先進企業と地域大工の技術を掛け合わせた“最先端ローカル”も意図配置図 image©高池葉子建築設計事務所

以下、建築家によるテキストです。


千葉県いすみ市の小さな山の頂上に、1万冊の本を収容する書庫と離れをつくった。

約40年前、私の父がこの地の山荘を購入し週末に通い果樹の手入れをしながら、毎月友人を招待し季節の恵みを楽しんできた。父がライフワークとして収集した本をアーカイブとして残したいと願い、書庫をつくることとなった。
また、私は学生時代からこれまで作成したすべての模型をこの山荘に運んでいた。いよいよ模型の置き場がなくなり、書庫の隣に建築模型を納める離れを同時につくらせてもらうことになった。

書庫に納める本は専門書が多く、将来的には小さな図書館として研究者や地域の方たちに開放する。また、離れも見せる倉庫として、訪れた方に建築模型を自由に眺めてもらう場所とする予定である。

山荘の周辺は空き家が多く、深刻な過疎化が進んでいる場所にただでさえ人が寄り付かなさそうな書庫と離れをつくる。このテーマにどう向き合うのか。

書庫は、この地に訪れたくなる動機付けのひとつとして、みんなが見に行きたくなるような特徴的なかたちの建物を提案した。
コンパクトなスペースの中にできる限りたくさんの本が置けるよう、ジグザグの壁を巻貝のように囲い込み外壁の周長をかせぎ、内部に小さな閲覧スペースを設けた。

昔からの隣人で大工の峯島さんに図面を見せた際、このようなかたちはとてもつくれないという。3Dを駆使したプレカットなど先端技術を上手く用いることで、峯島さんがつくれる工法を実現させた。

敷地は鬱蒼とした森の中であるが、かろうじて樹上から光が差し込んでくる。極力直射日光を本に当てないために開口部は2枚の屋根をずらし、ハイサイドライトからの光のみを取り入れるようにした。内部の約6mのスパンは鉄骨のトラスで飛ばしている。

この屋根形状を実現するためには、野地板を放射状に張れるように登り梁の天端をすべて異なる角度で斜めカットする必要がある。3D加工機でプレカットを行うことで、複雑な形状もスムーズに加工することができた。

ハイサイドライトは、山の中へも搬入がしやすく耐候性、耐久性に優れたETFEフィルムを用いた。外壁は敷地の山の土を用いて20人のボランティアと一緒にワークショップ形式で塗り込んだ。伐採期限が過ぎている現地のスギ林を、この機会に数十本間伐し皮を剥ぎ、スギ皮を外壁の一部に張り付けた。

峯島さんは、高機能素材から現代では用いない旧来の素材まで、その都度試行錯誤しながら施工した。たとえばスギ皮を剥ぐ技術は、この地域ではもう峯島さんしかできないそうだ。難しいところは3Dプレカットで補いつつ、峯島さんの技術を取り込んでいく。現代技術と峯島さんの掛け合わせによって「最先端ローカル」建築になっていった。

この小さな建築を通して、私は地方と都市の新たな関係性を構築できる可能性を感じた。
(高池葉子)


素材について

敷地の周辺は、廃墟となった別荘、荒れ果てた杉林、竹林がある。できる限りこの土地のものを使用することで、資源を循環させ、同時に、建材メーカーのストック材や新素材を活用することも考えた。地元の山の土を外壁に用い、竹を呼吸できる造作材として活用し、杉皮を一部外壁に用いる。一方で、建材メーカーに交渉し、廃棄前の建材や端材を提供してもらう。塗り壁用の土は、当初この地域では採れないと言われていた。しかし、熊本から渋谷さんという土のスペシャリストに来てもらい掘り起こしたところ、この土は使えると言う。そこで、学生から社会人まで多くのボランティアを巻き込んだ、土壁塗りワークショップが実現した。自然素材とメーカーストック品を組み合わせる、建築におけるアッサンブラージュの実験場となった。
(高池葉子)


形状について

湿気対策として、切り株のような厚い基礎を立ち上げる。本を守るために周囲から閉じつつ、かつ、外界にも開く渦巻き形平面とし、壁は連続した屏風形状とすることで、ぐるりと本に囲まれた洞窟のような、室内風景が生まれた。屋根は母屋と調和するよう、切妻形状を少し崩し、半円2枚を傘状にかける。野地板を貼るために放射状の登り梁天端を異なる角度で斜めカットする必要があったが、3D加工機によるプレカットによって、複雑な形状をスムーズに施工できた。屋根のずれを利用したハイサイドライトからあかりを取り入れ、異なる高さ、明るさの場所が生まれるようにした。室内天井には無柱空間を実現するためのキールトラスがかかり、ジグザグなラインを描く繊細な鋼棒が、ひときわ空間を特徴づける。屋根面は木々の重なる風景に合わせ、葺き材を半月型の屋根に沿わせながら、落ち葉を敷き詰めるように並べた。
(高池葉子+尾野克矩+佐藤緋里)


構造家の浜田英明によるテキスト「渦を巻く屏風耐力壁」

敷地近くに住む、古くからクライアントと付き合いのある大工棟梁の方がほぼ1人で施工できるよう、“施工者ファースト”を合言葉に設計が進められた。不定形な平面のべた基礎は十分な厚みを持った無筋コンクリートとし、複雑な鉄筋加工と配筋はせずに、ひび割れ防止筋を配置するにとどめた。屏風状に螺旋を描く外壁は、L字型に直交した耐力壁を1ユニットとして構成されたもので、階高の大きな壁面であっても安定して自立できる施工性に配慮しながらも、主用途である本棚としての十分な壁面収納量も確保することに成功している。屋根は,中央に配置されたハイサイドライトを兼ねた鉄骨キールトラス(弦材:アングル、斜材:鉄筋)とそこから放射状に伸びる登り梁で構成されている。登り梁と桁、柱などの接合部は、多数の部材が集まり3次元的に複雑な加工・取合とならないように配慮しながら、また、プレカット加工を積極的に活用しながら、現場において少人数で建て方が可能なかたちとした。
(浜田英明)

■建築概要

題名:森の書庫と離れ
所在地:千葉県いすみ市
主用途:書庫・離れ
設計:高池葉子建築設計事務所 担当/高池葉子、尾野克矩、佐藤緋里
構造設計:浜田英明建築構造設計
施工:峯嶌工務店 担当/峯嶌義和
構造体供給(プレカット)・建て方技術指導:シェルター 担当/遠藤康治、佐藤公紀
塗り壁・床仕上げ・土壁ワークショップ:福辺工業所 担当/福邉克吉
塗り壁技術指導:渋谷製作所 担当/渋谷宗一
ETFEフィルム材料:AGC 担当/有賀広志
ETFEフィルム加工・施工:協立工業 担当/小西力
鉄骨製作:房総マリーナ 担当/河野信和
ソファ:イノウエインダストリィズ 担当/坂本有香
防水技術指導:田島ルーフィング 担当/綿引友彦
協力:大好真人(DAISUKI LIGHT)、斎藤由和(アデザイン)、山口翼(モノクローム)、笠井敏文、笠井みずき、佐藤有希子、篠崎祐真、陳淑鳳、日比野遼一、藤井康之、藤井理花、本多大典、Lam Chiu Kwan、Mike chu、相原崚汰、雨宮早咲、安藤直樹、五十嵐莉玖、市川大輝、市花恵麻、井上晋太朗、今井優佑、植谷心愛、碓井若羽、内田明咲、江連見優、太田尚輝、大林誉宙、柿本愛来、加藤夢梨、川村碧生、北村さくら、呉羽広子、光仙賢俊、酒井裕太、鈴木穂高、谷渕真斗、田村朋香、千葉雄士、前野元彦、松田晃鷹、門田奈優、矢野奏美、山田光、山本明里
構造:木造
階数:地上1階
敷地面積:232.2㎡
建築面積:書庫46.8㎡、離れ21.4㎡
延床面積:書庫26.6㎡、離れ21.4㎡
設計:2020年3月~2023年2月
工事:2023年3月~2024年11月
竣工:2024年11月
写真:中村絵

建材情報
種別使用箇所商品名(メーカー名)
外装・屋根書庫 屋根

アスファルトシングル葺き ロフティー(田島ルーフィング)

外装・壁書庫 外壁

土+セメント系薄塗り左官材 エクセルホワイト(渋谷製作所)、杉皮

外装・その他書庫 軒天

水性かび封じ剤(プラザ・オブ・レガシー)+浸透性保護塗料(オスモ&エーデル)+ラーチ合板

外装・建具書庫 開口部

フッ素樹脂ETFEフィルム(AGC)、フッ素樹脂ETFEフィルム(協立工業)、横滑り出し窓 サーモスA(LIXIL)、木製框戸

内装・床書庫 床

コンクリート研磨仕上げ

内装・壁書庫 壁

多機能けい酸カルシウム板(モイス)+一部土壁

内装・天井書庫 天井

ラーチ合板

内装・造作家具書庫 棚

ラーチ合板+一部竹

内装・造作家具書庫 ベンチ

張地 Merit(Maharam)+ラーチ合板

内装・設備書庫 空調機器

除湿乾燥機 カライエ(ダイキン工業)

内装・照明書庫 照明

照明(大光電機)

内装・金物書庫 木材接合部金物

パネリード(シネジック)

内装・建具書庫 ドアノブ

押し棒(ユニオン)

外装・屋根離れ 屋根

アスファルトシングル葺き

外装・壁離れ 外壁

改質アスファルトルーフィング ガムクールキャップ(田島ルーフィング)

外装・その他離れ 軒天

浸透性保護塗料+ラーチ合板

外装・建具離れ 開口部

フッ素樹脂ETFEフィルム、竹+木製建具 

外構・床離れ 外構

レンガタイル オーズブリック(国代耐火工業所)

内装・床離れ 床

コンクリート金ゴテ押え

内装・壁離れ 壁

多機能けい酸カルシウム板

内装・天井離れ 天井

構造用合板

内装・造作家具離れ 棚

ラーチ合板+竹

内装・照明離れ 照明

照明(大光電機)

内装・金物離れ ドアノブ

押し棒(ユニオン)

内装・建具離れ 木材接合部金物

パネリード(シネジック)

※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません


「森の書庫と離れ」内覧会

本年SDレビュー入選作「森の書庫と離れ」の内覧会を、2024年12月14日(土)に開催することになりました。
ぜひ皆様のお越しをお待ちしております!

日時:2024年12月14日(土)午前の部:10:00~12:00 午後の部:13:00~15:00(14:00までにお越しください)
①11:00、②13:00、③14:00より、高池が作品解説とご案内をいたします。

住所:千葉県いすみ市高谷
参加方法:事前予約制、下記グーグルフォームより2024年12月11日(水)までにお申込みください。
https://forms.gle/aZjFrmZyXcko4tsx9
こちらから、2024年12月13日(金)15:00までに、BCCメールにて住所などの詳細をご連絡いたします。

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    高池葉子+尾野克矩 / 高池葉子建築設計事務所による、東京・渋谷区の事務所「代々木のオフィス1・2」
  • 2020.4.02Thu
    /
    高池葉子による、自作の 床と光の家を参照しつつ‟床”について綴った論考「建築における床の意味と意匠」
  • 2020.1.14Tue
    高池葉子建築設計事務所 / 高池葉子+尾野克矩+草野佑による、愛知の住宅「豊田の家」
  • 2019.12.04Wed
    高池葉子建築設計事務所による、愛知・豊田の住宅「豊田の家」の内覧会が開催
  • 2019.11.01Fri
    /
    高池葉子へのインタビュー『おおらかさとは「境界をつくらないこと」』
  • 2019.9.02Mon
    高池葉子建築設計事務所による、東京・板橋区の工場「ムサシ電子 板橋工場」
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    【ap job更新】 土木・都市・ランドスケープなど、公共空間のデザインを手掛ける「上條・福島都市設計事務所」が、設計スタッフ(新卒・既卒・経験者)を募集中

    ap job 【ap job更新】 土木・都市・ランドスケープなど、公共空間のデザインを手掛ける「上條・福島都市設計事務所」が、設計スタッフ(新卒・既卒・経験者)を募集中

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    建築求人情報
    【ap job更新】 土木・都市・ランドスケープなど、公共空間のデザインを手掛ける「上條・福島都市設計事務所」が、設計スタッフ(新卒・既卒・経験者)を募集中
    【ap job更新】 土木・都市・ランドスケープなど、公共空間のデザインを手掛ける「上條・福島都市設計事務所」が、設計スタッフ(新卒・既卒・経験者)を募集中肱川かわまちづくり
    アーキテクチャーフォトジョブボードに新しい情報が追加されました
    job.architecturephoto.net

    土木・都市・ランドスケープなど、公共空間のデザインを手掛ける「上條・福島都市設計事務所」の、設計スタッフ(新卒・既卒・経験者)募集のお知らせです。詳しくは、ジョブボードの当該ページにてご確認ください。アーキテクチャーフォトジョブボードには、その他にも、色々な事務所の求人情報が掲載されています。
    新規の求人の投稿はこちらからお気軽にお問い合わせください。

    上條・福島都市設計事務所は2020年3月に上條慎司と福島秀哉の共同主宰により設立した、土木、都市、ランドスケープなど公共空間のデザインを中心に活動する設計事務所です。

    2020年から進める愛媛県の肱川かわまちづくりにおける土木スケールのデザイン、2022年にコンペ最優秀を受賞した隠岐の島町西郷港周辺地区の約3haに及ぶ都市スケールのデザイン等、2023年にグッドデザイン賞を受賞した弥彦村のカフェをはじめとする建築・ランドスケープとが一体となったデザインなど、幅広い対象の計画から実施設計まで担う弊社の専門性を活かしつつ、第一線で活躍する建築家やデザイナーの方々と積極的にチームを組み、領域横断的にデザインに取り組んでいます。

    そのため弊社に在籍するスタッフは、実践を通して、地域の歴史文化の継承や地域再生に向けた自治体単位のデザイン戦略立案から、質の高い公共空間・公共施設の実現に向けた、ランドスケープ、駅前広場、街路、河川などの空間デザインやディテール検討まで、様々な対象とスケールの計画・デザインにまつわる技術を学びつつ、幅広い人脈を築いています。

    在籍するスタッフは皆20代で、スタッフ間でも議論を重ねながら、互いの技術を高めあっています。また基本的には、プロジェクトの担当スタッフが主宰する上條・福島とダイレクトにやりとりしながら業務を進めるスタイルをとっているため、スタッフは実践的な生きた経験を積むことができます。

    都市、土木、ランドスケープの分野に限らず、建築を学んだ学生も歓迎しております。

    これら徐々にスタイルを築きつつある私たちの取組みのさらなる展開に向け、公共空間、公共施設のデザインを軸とする幅広いデザイン活動に興味を持ち、チームの一員として共に学び、働いてくれるスタッフを募集します。

    ご応募お待ちしております。

    job.architecturephoto.net
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    建築求人情報
    2024.12.10 Tue 12:01
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    【ap job更新】 山﨑健太郎デザインワークショップが、設計スタッフ(経験者・2025年新卒)を募集中

    ap job 【ap job更新】 山﨑健太郎デザインワークショップが、設計スタッフ(経験者・2025年新卒)を募集中

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    建築求人情報
    【ap job更新】 山﨑健太郎デザインワークショップが、設計スタッフ(経験者・2025年新卒)を募集中
    【ap job更新】 山﨑健太郎デザインワークショップが、設計スタッフ(経験者・2025年新卒)を募集中52間の縁側 ©黒住直臣 / 新建築2023年1月号 / GA JAPAN180 2023年1月号
    アーキテクチャーフォトジョブボードに新しい情報が追加されました
    job.architecturephoto.net

    山﨑健太郎デザインワークショップの、設計スタッフ(経験者・2025年新卒)募集のお知らせです。詳しくは、ジョブボードの当該ページにてご確認ください。アーキテクチャーフォトジョブボードには、その他にも、色々な事務所の求人情報が掲載されています。
    新規の求人の投稿はこちらからお気軽にお問い合わせください。

    一緒に働く設計スタッフを募集しています。

    山﨑健太郎デザインワークショップでは、これまでに沖縄の地域住民と一緒に琉球石灰岩を積んで建設した「糸満漁民食堂」をはじめ、斜面を活かした階段上の「はくすい保育園」、視覚障害者の支援施設「ビジョンパーク」、日常を感じられるコモン型の「新富士のホスピス」、地域みんなの居場所である「52間の縁側」など、刺激的な建築であることよりも子供から高齢者まで様々な人に受け入れられ、人生の一部となっていくような建築を目指してきました。

    現在は、チャペル(東京・港区)、ワイナリーとオーベルジュ(三重・伊賀)、地形の中の文化交流施設(静岡・熱海)、就労支援作業所とお菓子工場(沖縄)など、用途や規模、場所もさまざまな設計業務が進行しています。

    プロジェクト規模が大きくなるにつれ、それぞれの役割でチームとして取り組む体制に移行しつつありますが、能力や熱意に応じ1年目からプロジェクトの担当者として、基本・実施設計から現場監理まで一貫して携わることも可能です。また経験年数によらず、能力に応じて昇給や担当を変更していくため、各々の実力を発揮しやすく、やりがいや成長を実感できる環境を用意しています。

    ご応募お待ちしております。

    job.architecturephoto.net
    • ap job
    建築求人情報
    2024.12.10 Tue 09:35
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    ATELIER MOZHによる、中国・上海市の「Havas Events Shanghai Office」。天井高の低い事務所を新たな施主の為に改修。交流を円滑化する存在を求め、天井の一部に“孔”を開ける操作で“開放的な労働空間”を創出。孔が生み出した天井高の差はオフィス内の用途の緩やかな分節も担う
    photo©Havas Events Shanghai

    SHARE ATELIER MOZHによる、中国・上海市の「Havas Events Shanghai Office」。天井高の低い事務所を新たな施主の為に改修。交流を円滑化する存在を求め、天井の一部に“孔”を開ける操作で“開放的な労働空間”を創出。孔が生み出した天井高の差はオフィス内の用途の緩やかな分節も担う

    architecture|feature
    ATELIER MOZH森恵吾ジャン・ジエマ・ハイユンHavas Events ShanghaiShanghai ZQ Construction建材(内装・床)建材(内装・壁)建材(内装・天井)図面ありリノベーション事務所上海中国
    ATELIER MOZHによる、中国・上海市の「Havas Events Shanghai Office」。天井高の低い事務所を新たな施主の為に改修。交流を円滑化する存在を求め、天井の一部に“孔”を開ける操作で“開放的な労働空間”を創出。孔が生み出した天井高の差はオフィス内の用途の緩やかな分節も担うエントランス photo©Havas Events Shanghai
    ATELIER MOZHによる、中国・上海市の「Havas Events Shanghai Office」。天井高の低い事務所を新たな施主の為に改修。交流を円滑化する存在を求め、天井の一部に“孔”を開ける操作で“開放的な労働空間”を創出。孔が生み出した天井高の差はオフィス内の用途の緩やかな分節も担うエントランス側からワークスペースを見る。 photo©Havas Events Shanghai
    ATELIER MOZHによる、中国・上海市の「Havas Events Shanghai Office」。天井高の低い事務所を新たな施主の為に改修。交流を円滑化する存在を求め、天井の一部に“孔”を開ける操作で“開放的な労働空間”を創出。孔が生み出した天井高の差はオフィス内の用途の緩やかな分節も担うワークスぺースから3Dデザイナールーム側を見る。 photo©森恵吾
    ATELIER MOZHによる、中国・上海市の「Havas Events Shanghai Office」。天井高の低い事務所を新たな施主の為に改修。交流を円滑化する存在を求め、天井の一部に“孔”を開ける操作で“開放的な労働空間”を創出。孔が生み出した天井高の差はオフィス内の用途の緩やかな分節も担う「休憩スペース2」 photo©Havas Events Shanghai

    森恵吾+ジャン・ジエ+マ・ハイユン / ATELIER MOZHが設計した、中国・上海市のオフィス「Havas Events Shanghai Office」です。
    天井高の低い事務所を新たな施主の為に改修する計画です。建築家は、交流を円滑化する存在を求め、天井の一部に“孔”を開ける操作で“開放的な労働空間”を創出しました。また、孔が生み出した天井高の差はオフィス内の用途の緩やかな分節も担っています。

    眺めは、周辺の豊かな都市環境を望むパノラマのようであったが、低く抑えられた天井は、水平に広がる美しい眺めを強調するとともに、少し窮屈な印象を与えてもいた。

    あらゆる業種のイベント企画からその設営監理までをこなすクライアントチームは、計画当初から彼ら自身が求めるオフィス環境に対してきわめて自覚的であった。彼らが求めていたのは、チーム内でのコミュニケーションの円滑化を図るため、開放的かつ流動的、そしてときには個別の作業に集中できるような、そんな場所であった。

    建築家によるテキストより

    まずは既存の天井が与える圧迫感を軽減するために、オフィス中心部の天井に大きな「孔」をあける。それによって生まれた異なる高さを持つ天井は、ワークスペースと動線部をゆるやかに区分する。前者ではダークグレーの天井と床材によって空間の高さをぼかし、後者では元の天井高さを維持することで、水平方向の動きを促し、天井に沿った環状の動線をつくりだす。

    建築家によるテキストより

    オフィスの周縁に配置された「フレーム」の形式は、基本的にはどれも同じでありながらも、それぞれのプロポーションや設えは少しずつ異なっている。そのわずかな差異は、フレームが持つ見た目のシンプルさや統一感とは裏腹に、日常における様々な行為に働きかける。あるときは作業への集中を促し、またあるときはチームの議論を見守る。
    やさしい陽が差し込めば、ゴロンと寝そべりたくもなるだろう。そういった行為を内包するフレームと、開かれたワークスペースとの間の行き来は、日々の営みにメリハリを生む。

    建築家によるテキストより
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    ATELIER MOZH森恵吾ジャン・ジエマ・ハイユンHavas Events ShanghaiShanghai ZQ Construction建材(内装・床)建材(内装・壁)建材(内装・天井)図面ありリノベーション事務所上海中国
    2024.12.10 Tue 06:48
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    2024.12.09Mon
    • 【ap job更新】 プロポーザルにも積極的に参加し、地域と共に進めるプロジェクトも手掛ける「株式会社ofa」が、設計スタッフ(経験者・既卒・2025年新卒)を募集中
    • ATELIER MOZHによる、中国・上海市の「Tianzifang courtyard renovation」。路地が魅力である観光地のコートヤードを再生する計画。既存階段に登った際の記憶から着想し、地上と屋上を繋いで“上から見下ろせる”空間構成を考案。舗装と屋根を結び付ける素材として“赤煉瓦”を用いる
    • 隈研吾の姫路市立美術館での展覧会「隈研吾の『コツゴツ』哲学 過去から未来へ生き残るデザイン―髙田賢三へのオマージュ」の入場チケットをプレゼント。隈が改修を手掛けたデザイナー髙田賢三のパリの旧邸宅に焦点を当てる展示。再現模型やモックアップ等に加えて大型インスタレーションも公開
    • ODS / 鬼木孝一郎による、愛知の「ポケモンセンターナゴヤ」。地域のシンボル的な公園に隣接した商業ビルでの計画。散策の延長で歩き回りたくなる場を目指し、天井の操作等で“小さな店の集合体”の様に感じられる空間を考案。平面形や什器にも公園を想起させる仕掛を込める
    • 最も注目を集めたトピックス[期間:2024/12/2-12/8]
    2024.12.11Wed
    • 【ap job更新】 岐阜を拠点とし、建築設計に加えてシェアスペースの運営等も手掛ける「ミユキデザイン」が、設計スタッフ(経験者・既卒)を募集中
    • 【ap job更新】 設計した自社オフィスが“国際的な建築賞”も受賞する「R/URBAN DESIGN OFFICE」が、設計スタッフ(経験者・既卒・2025年新卒)と アルバイトを募集中
    • 鹿内健+鹿内真沙子 / Sデザインファームによる、千葉の、設計者の自邸「増減の家」。コロナ禍以降の“豊かさとは?”を主題に計画。限られた条件での実現性も考慮し、“増による豊かさ”と“減による豊かさ”を両立させる建築を志向。高気密高断熱の内部空間に“外リビング”を付加する構成を考案

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