庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える鮨店が入る建物の外観、南東側より見る。 photo©長谷川健太
庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える「レセプションギャラリースペース」から6名用個室側を見る。 photo©長谷川健太
庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室 photo©長谷川健太
庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室、客席から厨房を見る。 photo©長谷川健太
庄司光宏 / UCHIDA SHANGHAIと牧野恭久建築設計事務所が設計した、中国の店舗「Shanghai Kitcho」です。
老舗の寿司店の計画です。建築家は、両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案しました。また、陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与えています。
本プロジェクトは、江戸前寿司という日本の伝統的な食文化を核としつつ、中国文化の美意識と現代的感性を融合させた空間表現を試みている。
施主の願いは、当初から「中国文化と日本文化が高次元で融合するデザイン」だった。
プロジェクトはコロナ禍の影響を受け、幾度となく延期を余儀なくされたが、そのたびに私たちは立ち止まり、デザインスタディを重ねてきた。
そして最終的にたどり着いたのは、緩やかな曲線を描くカウンターが空間に奥行きをもたらす、パースペクティブな構成。繰り返された試行錯誤の末に生まれたこの案は、ふたつの文化が静かに溶け合う、美しい接点となった。
メインとなる10名用の個室には、扇形に造形された彫刻的な天井が、緩やかに弧を描く檜のカウンター上部に配されており、照明により生まれる陰影が空間に象徴的なリズムと緊張感をもたらす。
この意匠は、日本の伝統的なモチーフの優雅さを基調としながら、中国的なスケール感や装飾性を内包している。2つあるプライベートルームは、対照的な空間体験を提供する。
ひとつは和紙テクスチャを用いた柔らかな間接照明が天井に施され、光の層が空間に温かみと触覚的な豊かさを与えている。
もう一方は、銀箔仕上げの傾斜天井が、静謐で内省的な環境を構成し、反射光が緊張と静けさを同時に醸し出す設えとなっている。素材選定においても、触感的な豊かさと文化的共鳴が重視されている。
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庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える鮨店が入る建物の外観、南東側より見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える鮨店が入る建物の外観、南東側より出入口を見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える鮨店が入る建物の外観、南東側より見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える鮨店が入る建物の外観、南東側より出入口を見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える鮨店が入る建物の外観、サインを見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える鮨店が入る建物の外観、サインを見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える「レセプションギャラリースペース」 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える「レセプションギャラリースペース」から10名用個室側を見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える「レセプションギャラリースペース」から10名用個室を見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室、客席から厨房を見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室、客席から厨房を見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室、客席からカウンターを見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室、客席からカウンターを見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室、厨房から天井を見上げる。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室、天井の詳細 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室、壁と天井の詳細 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室、カウンターの詳細 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える10名用個室、カウンターの詳細 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える「レセプションギャラリースペース」から6名用個室側を見る。 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える6名用個室 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える6名用個室 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える6名用個室 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える6名用個室 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える6名用個室 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える洗面室 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える「レセプションギャラリースペース」、天井の詳細 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える床の詳細 photo©長谷川健太

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える配置図 image©UCHIDA SHANGHAI+牧野恭久建築設計事務所

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与える平面図 image©UCHIDA SHANGHAI+牧野恭久建築設計事務所

庄司光宏と牧野恭久による、中国の店舗「Shanghai Kitcho」。老舗の寿司店の計画。両者の文化を“高次元で融合するデザイン”を求め、中国の“装飾性”と日本の“優雅さ”を併せ持つ“扇形の彫刻的な天井”を備えた空間を考案。陰影で場に象徴的なリズムと緊張感も与えるアクソメ図 image©UCHIDA SHANGHAI+牧野恭久建築設計事務所
以下、建築家によるテキストです。
江戸前の伝統と中国文化の優雅さを融合させた上海吉兆
UCHIDA SHANGHAIの庄司光宏が設計を担当した「Shanghai Kitcho(上海吉兆)」は、上海の歴史的建築群である上海展覧中心内に位置する寿司店である。
本プロジェクトは、江戸前寿司という日本の伝統的な食文化を核としつつ、中国文化の美意識と現代的感性を融合させた空間表現を試みている。
施主の願いは、当初から「中国文化と日本文化が高次元で融合するデザイン」だった。
プロジェクトはコロナ禍の影響を受け、幾度となく延期を余儀なくされたが、そのたびに私たちは立ち止まり、デザインスタディを重ねてきた。
そして最終的にたどり着いたのは、緩やかな曲線を描くカウンターが空間に奥行きをもたらす、パースペクティブな構成。繰り返された試行錯誤の末に生まれたこの案は、ふたつの文化が静かに溶け合う、美しい接点となった。
台湾では7年連続ミシュランの星獲得の実績をもつ老舗である。メインとなる10名用の個室には、扇形に造形された彫刻的な天井が、緩やかに弧を描く檜のカウンター上部に配されており、照明により生まれる陰影が空間に象徴的なリズムと緊張感をもたらす。
この意匠は、日本の伝統的なモチーフの優雅さを基調としながら、中国的なスケール感や装飾性を内包している。2つあるプライベートルームは、対照的な空間体験を提供する。
ひとつは和紙テクスチャを用いた柔らかな間接照明が天井に施され、光の層が空間に温かみと触覚的な豊かさを与えている。
もう一方は、銀箔仕上げの傾斜天井が、静謐で内省的な環境を構成し、反射光が緊張と静けさを同時に醸し出す設えとなっている。素材選定においても、触感的な豊かさと文化的共鳴が重視されている。
中国の伝統色に着想を得た左官仕上げの土壁が空間に深みと温度感を与える一方、手作りのセラミックタイルや景徳鎮(Jingdezhen)の磁器が、空間と料理を繊細につなぐインターフェースとして機能している。
建築的な制約のなかでのデザイン戦略も、本プロジェクトの見どころのひとつである。外観の改修が厳しく制限される文化財建築において、建築的アイデンティティの表出を「内部」からアプローチするという設計的挑戦が行われた。
さらに、ランダムに穿たれたヴォイドによって、内部と外部、静と動、建築と都市との対話的関係性を意図的に構築している。全体として、日本の「技」と中国の「雅」が交差する空間は、料理・クラフト・素材・光といった要素をレイヤー的に重ね、時間と文化を横断するような建築的物語を展開する。
江戸前鮨が体現する“もてなし”の精神と、現代的なラグジュアリーの再解釈が融合したこの空間は、上海という都市における新たな飲食体験の象徴とも言えるだろう。
(庄司光宏)
■建築概要
所在地:中国上海市南京西路1333号展中心9号1901
主用途:江戸前鮨レストラン
設計:UCHIDA SHANGHAI 担当/庄司光宏、Wang Wei 牧野恭久建築事務所 担当/牧野恭久(共同設計者)
施工:Shanghai Tongxing Construction Group Co.LTD
構造:RC
階数:地上1階
敷地面積:250㎡
建築面積:120㎡
延べ床面積:120㎡
設計:2021年12月~2024年10月
工事:2024年8月~2025年3月
竣工:2025年3月
写真:長谷川健太
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 内装・床 | エントランス、個室(6人) 床 | 特注古材(imondi)
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内装・壁 | 主要箇所 壁 | 特別色スタッコ(上海芸術塗装)
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内装・天井 | エントランス 天井 | 金箔(上海芸術塗装)
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内装・造作家具 | 個室(10人)カウンター | 特注曲面檜集成材(上海吉兆)
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