architecturephoto®

  • 特集記事
  • 注目情報
  • タグ
  • 建築
  • アート
  • カルチャー
  • デザイン
  • ファッション
  • 書籍
  • 展覧会
  • コンペ
  • 動画
  • テレビ
  • すべてのタグ

建築求人情報

Loading...
2009.11.23Mon
2009.11.22Sun
2009.11.24Tue
加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE “長坂常 + なかむらしゅうへい「FLAT PROJECT展」”
サムネイル:加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE

SHARE 加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE “長坂常 + なかむらしゅうへい「FLAT PROJECT展」”

architecture|design|feature
論考加藤孝司

katosan-flat-project-ten001.jpg

katosan-flat-project-ten002.jpg
photo©Takashi Kato

加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE
長坂常 + なかむらしゅうへい 「FLAT PROJECT展」

写真と文=加藤孝司

建築家長坂常と塗装職人であるなかむらしゅうへいによる展示「FLAT PROJECT展」が、その拠点である中目黒のHAPPAにて始まった。フラットプロジェクトとは一昨年前より始められた「世界のあらゆるデコボコをフラットにしてゆく企画」だ。

ちょうど展示のオープニングに合わせて会場で来場者をもてなす本プロジェクトのデザイナーである長坂に、フラットプロジェクトの始まりを聞くことができた。
それは長坂が代表を務めるスキーマ建築計画と、中村塗装工業、そしてギャラリーである青山 | 目黒とがこの「HAPPA」に入居したときにさかのぼる。自分たちで空間を作る際、ファサードの全面を覆う窓枠と床の合間に微妙な隙間ができた。そこをエポキシで埋めて小さな「美術館」にするという構想があったという。しかしその隙間に、エポキシを流しこんだところ、液状のエポキシはうまく固着せず、床面にだらっと流れ出た。その様を見て、ならばと平面にエポキシを流しこんでみることを思いついたとのこと(ちなみに、現在サッシと床の隙間は、この空間のためのちいさな「庭」になっている)。そのきっかけは意外なところにあったのだ。
そこで生まれたのが「狭山フラット」や恵比寿の書店「ナディッフ」のエポキシによる床だ。ナディッフでは床にあった窪みを平坦にするためにエポキシで養生したようだが、エポキシの厚みや濃度により生まれる色の濃淡は、表現におけるおもしろい効果を生んだのは周知の通りだ。

katosan-flat-project-ten003.jpg
katosan-flat-project-ten004.jpg
フラットテーブルは狭山フラットで展示していたアンティークのテーブルを、長坂が引き取りリファインすることからスタートした。古いテーブルの天板に刻まれた、手のひらでなぞるとわずかな引っ掻きを残す小さな傷跡。その傷をそこに記されたもう語られることの無い記憶とともに、作家により全く新しい価値を創造すること。そこからこのプロジェクトはスタートしたのだろう。
新作のフラットテーブルは虫食いのアンティークの板をモチーフにしたものと、枕木を並べて作った天板をもつテーブル、それらにはそれぞれ特注の脚が取り付けられた。それとアンティークの家具をフラットテーブル化したものがいくつか。あわせて今回は持ち込みの家具をフラットテーブル化する新しいプロジェクトのサンプルも展示されている。これは実際に顧客から依頼があり、フラットテーブル化され制作されたものだという。
katosan-flat-project-ten005.jpg
katosan-flat-project-ten006.jpg
先日のDESIGNTIDE TOKYO 2009のエクステンション会場であるCIBONEで発表された、テーブル表面がボーダーに彩色されたようなフラットテーブル「Raftered」も展示されている。こちらはCIBONEとのコラボレーションで生まれたものだが、これまでのフラットテーブルでは天板についた傷や凹み、テーブル本体のゆがみにエポキシが「溜まる」ことで模様がつけられていたが、本作品は意識的に天板となる木材の表面に加工を施すことで、天板に美しいカラーのボーダー柄を浮かび上がらせている。
こちらは天板に用いられた角材の配列に微妙な高低をつけることで、天板表面に定着させるエポキシの量をコントロールし、色に濃淡をつけたということ。そこで生まれたボーダー柄は実は偶然生まれたように見えて、実は巧みにコントロールされているあたりにこのプロジェクトの進化型がみえる。
今回展示されているものは今後CIBONEで製品化されるものの試作品だそうだが、この試作品のための数多くの試作品も制作されたようで、そんなところにも長坂となかむらという二人の作家のものづくりに対する飽くなき探究心と執着を見て取ることができる。
katosan-flat-project-ten007.jpg
katosan-flat-project-ten008.jpg
あわせて新作として、通常断熱材として建物に用いられる「スタイロフォーム」を用いたフラットテーブルの試作品も制作された。スタイロフォームは先日行われ長坂も参加したプロジェクト「happa hotel」の際にも、長坂自身が制作した家具におけるメインのマテリアルとして選ばれていたから、現在彼にとって興味がある素材なのだろう。
ともかく軽くしなやかなスタイロフォームをテーブルとして自立させること自体困難に思われるのだが、塗装職人であるなかむらしゅうへいの高度な技術と執念により、しっかりと実用可能なテーブルになっているのはさすがだ。そして原型に軽量なスタイロフォームを用いることにより、見た目通りにテーブル本体は片手で持ち上げることが可能なほどに極めて軽量に仕上がった。
会場には前途の組み合わせた角材の板と色をつけたエポキシによる、フラットテーブルの「色見本」も展示されている。こちらもエポキシのグラデーションを見る上で興味深い試作品になっているのでぜひ見ていただきたい。
katosan-flat-project-ten009.jpg
katosan-flat-project-ten010.jpg
今回展示されているスタイロフォームのフラットテーブルもそうだが、既成の家具やマテリアルが、デザイナーである長坂常と、塗装職人であるなかむらしゅうへいによりひと手間加えられることで、そのものがそれまで持っていた価値とはまったく異なる価値を持つことを確認する上でも今回の展示は実に興味深かった。現代のもの作りにおいて、物はデザイナー個人のインスピレーションだけでなく、実際のもの作りを担う作り手との恊働があってこそ、物、しいてはもの作りの強度が増すことは疑いの余地がない。その点においてフラットプロジェクトはもの作りとデザインすることの原点回帰と云うこともできるだろう。
katosan-flat-project-ten011.jpg
katosan-flat-project-ten012.jpg
photo©Takashi Kato
「FLAT PROJECT展」
期間:2009年11月20日(金)~12月19日(土) ※日祝休館
場所:HAPPA 東京都目黒区上目黒2-30-6
電話:03-5939-6773
時間:11:00~21:00
http://www.happa.tv/

あわせて読みたい

サムネイル:加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE
加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE “構造家、満田衛資インタビュー”
  • SHARE
論考加藤孝司
2009.11.23 Mon 09:57
0
permalink

#加藤孝司の関連記事

  • 2018.9.11Tue
    /
    藤村龍至に、近作の背景にある建築思想や、東京の都市についての視点を聞いているインタビュー「都市からふたたび建築へ(後編)」
  • 2018.8.29Wed
    藤村龍至に、ギャラ間での建築展や、教育の現場での気づき、今後のヴィジョンなどについて聞いているインタビュー「都市からふたたび建築へ(前編)」
  • 2016.8.18Thu
    /
    加藤孝司による、芦沢啓治デザインののサイドテーブル「TRE」などのレビュー「空間の余白を楽しむための サイドテーブル」
  • 2016.8.18Thu
    //
    加藤孝司が執筆した、東京・小石川のスペース「DESIGN小石川」のレポート「小石川には武蔵野と同じ響きがある。」
  • 2011.8.28Sun
    サムネイル:加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE 「何に着目すべきか?」
    加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE 「何に着目すべきか?」
  • 2010.8.24Tue
    サムネイル:加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE
    加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE “HODCシンポジウムが開催”
  • 2010.8.14Sat
    サムネイル:加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE
    加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE “Hiroshima 2020 Design Charrette TOKYO EXHIBITION”
  • 2010.6.22Tue
    サムネイル:加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE
    加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE “恵比寿にオープンしたショップ&ギャラリー、「I FIND EVERYTHING」”
  • 2010.4.12Mon
    サムネイル:加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE
    加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE “井手健一郎インタヴュー”
  • 2010.3.02Tue
    サムネイル:加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE
    加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE “HIROSHIMA 2020 DESIGN CHARRETTE”
  • view all
view all

#論考の関連記事

  • 2025.2.03Mon
    村山徹と杉山幸一郎による連載エッセイ ”今、なに考えて建築つくってる?” 第5回「素材と仕上げ」
  • 2023.6.19Mon
    服部大祐による連載エッセイ“Territory of Imagination” 第4回「Schenk Hattori 京都オフィス」
  • 2023.5.30Tue
    村山徹と杉山幸一郎による連載エッセイ ”今、なに考えて建築つくってる?” 第4回「構造と工法」
  • 2023.2.20Mon
    辻琢磨による連載エッセイ “‘自邸’を動かす” 第1回「少しずつ建てる、広々と住まう、ゆっくり考える」
  • 2022.10.05Wed
    村山徹と杉山幸一郎による連載エッセイ ”今、なに考えて建築つくってる?” 第3回「かたちと寸法」
  • 2022.8.04Thu
    玉井洋一による連載コラム “建築 みる・よむ・とく” 第8回「小屋の佇まい ─── 堂々とした小屋」
  • 2022.6.21Tue
    //
    ファラによる、中銀カプセルタワーでの生活を回顧するエッセイ「Fala finds a home in Ginza: Remembering the Nakagin Capsule Tower」
  • 2022.6.20Mon
    【特別寄稿】湯浅良介によるエッセイ「HOUSEPLAYING───これまでのオープンハウスと異なる、建築の複数の語り方とその可能性」
  • 2022.6.02Thu
    玉井洋一による連載コラム “建築 みる・よむ・とく” 第7回「立面の発掘」
  • 2022.5.06Fri
    玉井洋一による連載コラム “建築 みる・よむ・とく” 第6回「小屋の佇まい ─── “擬”斜線制限の小屋 」
  • view all
view all

建築求人情報

Loading...

 

    公式アカウントをフォローして、見逃せない建築情報を受け取ろう。

    60,896
    • Follow
    82,050
    • Follow
    • Follow
    • Add Friends
    • Subscribe
    • 情報募集/建築・デザイン・アートの情報を随時募集しています。
      More
    • メールマガジン/ メールマガジンで最新の情報を配信しています。
      More

    この日更新したその他の記事

    アトリエ・ワンによる”ドローグ・タウンハウス”

    SHARE アトリエ・ワンによる”ドローグ・タウンハウス”

    architecture

    アトリエ・ワンによる”ドローグ・タウンハウス”の模型写真がdezeenに掲載されています

    アトリエ・ワンがドローグのためにデザインしてデザインマイアミで発表される住宅”ドローグ・タウンハウス”の模型写真が1枚と概要がdezeenに掲載されています。

    • SHARE
    2009.11.23 Mon 23:36
    0
    permalink
    宇都宮美術館で袴田京太朗と堀部安嗣と森桜のアーティスト・トークが開催[2010/1/11]
    サムネイル:宇都宮美術館で袴田京太朗と堀部安嗣と森桜のアーティスト・トークが開催[2010/1/11]

    SHARE 宇都宮美術館で袴田京太朗と堀部安嗣と森桜のアーティスト・トークが開催[2010/1/11]

    architecture|exhibition

    horibe-san-kouenkai001.jpg
    「伊豆高原の家」設計/堀部安嗣,彫刻/袴田京太朗,撮影/齋藤さだむ

    宇都宮美術館で袴田京太朗と堀部安嗣と森桜のアーティスト・トークが開催されます。開催日は2009年1月11日です。※要事前予約です。また、このアーティスト・トーク参加者限定で堀部安嗣が設計した”伊豆高原の家“と袴田京太朗”夜の誕生”と”ECHO”の見学会も開催されます。※こちらも要事前予約。
    詳しい申し込み先や概要は以下。

    • 続きを読む
    • SHARE
    2009.11.23 Mon 21:15
    0
    permalink
    堀内功太郎建築設計事務所による”salon du fromage hisada paris”の新しい動画

    SHARE 堀内功太郎建築設計事務所による”salon du fromage hisada paris”の新しい動画

    architecture|video
    堀内功太郎

    堀内功太郎建築設計事務所による”salon du fromage hisada paris”の新しい動画です。

    • SHARE
    堀内功太郎
    2009.11.23 Mon 16:35
    0
    permalink
    堀内功太郎のインタビュー記事

    SHARE 堀内功太郎のインタビュー記事

    architecture
    インタビュー

    堀内功太郎のインタビュー記事がフレンチ・コードに掲載されています

    堀内功太郎のインタビュー記事がフレンチ・コードに掲載されています。事務所の様子を撮影した写真なども掲載されています。

    • SHARE
    インタビュー
    2009.11.23 Mon 16:28
    0
    permalink
    伊東豊雄の”バークリー美術館/パシフィック・フィルム・アーカイブ”の建設が中止に

    SHARE 伊東豊雄の”バークリー美術館/パシフィック・フィルム・アーカイブ”の建設が中止に

    architecture

    伊東豊雄の”バークリー美術館/パシフィック・フィルム・アーカイブ”の建設が中止になりました

    伊東豊雄が設計を進めていた”バークリー美術館/パシフィック・フィルム・アーカイブ”の建設が中止になったようです。TIMEが伝えています。

    • SHARE
    2009.11.23 Mon 15:49
    0
    permalink
    2009.11.22Sun
    • 藤本壮介による隈研吾展のレポート
    2009.11.24Tue
    • 大竹伸朗のインタビュー
    • 長谷川祐子とARTiTの編集長の対談
    • 西沢立衛の豊島の美術館”t-project”の現場写真
    • アルヴァ・アアルトによるヴィボルグ図書館の動画

    Subscribe and Follow

    公式アカウントをフォローして、
    見逃せない建築情報を受け取ろう。

    「建築と社会の関係を視覚化する」メディア、アーキテクチャーフォトの公式アカウントです。
    様々な切り口による複眼的視点で建築に関する情報を最速でお届けします。

    60,896
    • Follow
    82,050
    • Follow
    • Follow
    • Add Friends
    • Subscribe
    • 情報募集/建築・デザイン・アートの情報を随時募集しています。
      More
    • メールマガジン/ メールマガジンで最新の情報を配信しています。
      More

    architecturephoto® News Letter

    メールマガジンでも最新の更新情報を配信中

    • ホーム
    • アーキテクチャーフォトについて
    • アーキテクチャーフォト規約
    • プライバシーポリシー
    • 特定商取引法に関する表記
    • 利用者情報の外部送信について
    • 広告掲載について
    • お問い合わせ/作品投稿

    Copyright © architecturephoto.net.

    • 建築
    • アート
    • カルチャー
    • デザイン
    • ファッション
    • 書籍
    • 展覧会
    • コンペ
    • 動画
    • テレビ
    • 特集記事
    • 注目情報
    • タグ
    • アーキテクチャーフォト ジョブボード
    • アーキテクチャーフォト・ブック
    • アーキテクチャーフォト・プロダクト
    • ホーム
    • アーキテクチャーフォトについて
    • アーキテクチャーフォト規約
    • プライバシーポリシー
    • 特定商取引法に関する表記
    • 利用者情報の外部送信について
    • 広告掲載について
    • お問い合わせ/作品投稿

    メールマガジンで最新の情報を配信しています

    この記事をシェア
    タイトルタイトルタイトルタイトルタイトル
    https://architecturephoto.net/permalink

    記事について#architecturephotonetでつぶやいてみましょう。
    有益なコメントは拡散や、サイトでも紹介させていただくこともございます。

    architecturephoto®
    • black
    • gray
    • white