SHARE 吉岡徳仁によるカルテルのインスタレーション”Snowflake”と”The Invisibles”シリーズ
吉岡徳仁がカルテルのためにデザインしたのインスタレーション”Snowflake”と透明な家具シリーズ”The Invisibles”の写真と、吉岡へのO&Aです。
以下、吉岡へのQ&Aです。
今回プロダクトとインスタレーションの発表ということですが、そのプロジェクトについて教えてください。
今回は、Claudio LutiとTokujin Yoshiokaのスペシャルコラボレーションとして、透明な「The Invisible」シリーズのコレクションとショップのインスタレーション「Snowflake」を発表します。
近年、私はものの形を整えるということよりも、現象そのものや、目に見えない感覚や要素を多く取り入れたデザインを提案しています。そのような中で今回の “The Invisibles” は、数年前にLuti社長と、オプティカルガラスのベンチ「Water Block」のような作品をアクリルで表現できないか、というお話をした事をきっかけにスタートしたプロジェクトです。
これほどの厚みをもったアクリルの工業製品をつくる事は不可能に近いこととされていましたが、それが今回、カルテルの革新的な技術と、新しいものを生み出そうとする姿勢によって完成に至りました。
「The Invisibles」は、空気に座っているような感覚のみが残り、椅子そのものが存在しない、人が宙に浮いているような情景を空間にもたらします。
透明な素材に対する吉岡さんの考えを教えてください。
かたちは存在しないけれど、心に感動を与えるようなものに心惹かれています。
一見その存在すら見えない透明なものでも、光が差すことで形を現します。そのような現象や、光そのものが形になっているような、私たちの想像を掻き立てる要素に私は魅了されます。
インスタレーション”Snowflake”とはどのようなものでしょうか。
インスタレーションでは、無数の透明プラスチックのプリズムスティックを積層させることで、白色を帯びたプリリズムが、雪に包まれているかのような静寂な世界観をつくり出します。
ショップに訪れた人は、まるで雪の結晶の中にはいっていくような非日常的な体験をするのではないでしょうか。
今回カルテル、スワロフスキー・クリスタル・パレス、モローゾから新作を発表されるとの事ですが、何か共通点はあるのでしょうか。
デザインが溢れているこの時代に、私がもっとも表現したいと考えたのは、あえてデザインや形が存在しないようなものでした。それは、かたちやデザインといった概念を超え、私たちの想像力を掻き立てるようなものです。
かたちをきれいにまとめる事や、ミニマルなかたちをつくる事ではなく、一目見るだけでその作品の世界に包まれ、気持ちが高揚し、自分でもワクワクするようなデザイン。新しい発想や感動、色や音、香りといった、かたちはなくても心を高揚させる、いわば感覚そのものをデザインする事に挑戦しています。
あるものは光という現象そのもの、あるものは目に見えないもの、そしてあるものは自由にその形を変え、無限のかたちをもつもの。
今年のミラノサローネでは、それぞれのプロジェクトは異なりながらも、共通して「かたちが存在しない」作品を発表します。
今後のプロジェクトについて教えてください。
5月1日より二つの大きなプロジェクトが開催となります。
一つは韓国・ソウルでの個展。そしてもう一つは中国・上海で開催される上海万博です。
韓国・ソウルで行われる展覧会では、私が長い間夢見てきた建築プロジェクト「虹の教会」の一部を発表させていただきます。
20代の頃、画家アンリ・マティスが晩年に生み出した作品でもある教会「ロザリオ礼拝堂」を訪れ、強い衝撃受けました。マティスの絵画の特徴である、鮮やかな色彩で描かれた美しいステンドグラスに、南仏の太陽の光が差し込み、マティスの色の光で満ちあふれた空間を体験しました。その空間を前に、自分もいつかマティスのような、光を全身で感じられる建築をつくりたいという強い想いを抱き続けてきました。
教会の建築を象徴するクリスタルプリズムでつくられた、高さ9メートルにも及ぶステンドグラスは、約500本のクリスタルプリズムによってつくり出され、太陽が差すことで、空間全体に虹色の光を放ちます。
そして上海万博では、3メートルにも及ぶ自然結晶の作品「growing crystal」を発表させていただきます。巨大な水槽の中では、生命の誕生をイメージして生み出された結晶が成長し、偶然から生まれる造形を造り出し、訪れる人を圧倒します。
2010年4月14日 – 19日
Kartell Flagship Store
via C. Porta angolo via Turati
資料提供:吉岡徳仁デザイン事務所