SHARE “建築はどこにあるの? 7 つのインスタレーション”展が東京国立近代美術館で開催[2010/4/29-8/8]
中山英之 《草原の大きな扉》 2009年 Photo: Mitsuo Okamoto © Hideyuki Nakayama Architecture
東京国立近代美術館で”建築はどこにあるの? 7 つのインスタレーション”展が行われている。会期は2010年4月29日~8月8日。出展建築家は、伊東豊雄、鈴木了二、内藤廣、アトリエ・ワン、菊地宏、中村竜治、中山英之です。この七組の建築家が、新作のインスタレーションを発表しています。
ここでは、彼らによる新作の概要と参考イメージによって展覧会をプレビューします。
展覧会主旨
この「建築展」では新作インスタレーションが展示されます。参加するのは、世代も
タイプも異なる7組の日本の建築家たちです。「建物」をつくるときとは異なる条件の中で彼らが頼るもの。それはきっと、建築家として鍛え上げてきた、論理(ロジック)と技術(テクニック) と感性(エステティック)のバランスがとれた思考方法となるでしょう。このバランス感覚に長けているからこそ、現在、日本の建築は世界的に注目されていると言えます。そして、もしそうしたところに「建築」の特徴があるのだとすれば、建築を考える際に重要なのは、「建築とはなにか」を問うことではなくて、どこにどのような形で建築が現われてきているかを捜すことではないでしょうか。三種類の多面体でつくられた空間、「空間」が生滅する場、動物にも見える東屋(あずまや) 、模型の一日を見せる映像空間、繊細( フラジャイル)な構造体、スケール感覚が不思議な広場など、多種多様なインスタレーションを通して、建築はどこにあるのか、ぜひ捜してみてください。
伊東豊雄 《オスロ市ダイクマン中央図書館コンペティション応募案》 2008-2009年 画像:Kuramochi + Oguma
伊東豊雄による作品の概要
2009 年に行われた「ノルウェー・オスロ市ダイクマン中央図書館コンペティション」で伊東豊雄が提案した空間構成システムは、3種類の多面体を空間全体に充填しつつ展開させるというダイナミックなものだった。今回のインスタレーションは、そのシステムを使ったものとなる。「座・高円寺」「台中メトロポリタンオペラハウス」「カリフォルニア大学バークレー美術館/パシフィック・フィルム・アーカイブ」など最近のプロジェクトを、散策するように紹介していく展示方法は、観るという行為自体を斬新なものとしてくれるだろう。
鈴木了二 《ディテール・モデル》 2007年 写真:山岸剛
鈴木了二による作品の概要
竣工間近のある住宅(《物質試行50》) を「DUB」( 増幅しながらのディストーション) してできた巨大模型を発表する予定。
内藤廣 《赤縞》(東京国立近代美術館でのインスタレーションのためのイメージスケッチ) 2010年 ©内藤廣建築設計事務所
内藤廣による作品の概要
約 200 個の赤色レーザーを使ったインスタレーションを制作する。非実体的だけれど、人が入ると「空間」がリアルに浮かび上がる、そんな不思議な作品になるはずだ。なお、本作品に触発されて、マイムをベースにしたダンスで知られる「じゅんじゅんSCIENCE」が、会期中数回にわたり内藤作品内でパフォーマン
スを行う予定である。
アトリエ・ワン 《リンツ・スーパー・ブランチ》( 「Hoehenrausch」展、OK現代美術センター/リンツ) 2009年 写真:アトリエ・ワン © 2009 Atelier Bow-Wow Co. Ltd
アトリエ・ワンによる作品の概要
アトリエ・ワンは、世界中の展覧会に参加しているが、そこでつくった作品全てを、「マイクロ・パブリック・スペース」という名前(考え方)で捉えている。今回は美術館の前庭に、《まちあわせ》と題したインスタレーションを制作。モチーフは動物、素材は竹、機能は東屋(あずまや)である。いつもは、野外彫刻の展示スペースなのか、入ってよい場所なのか、よくわからない場所なのだけれど、《まちあわせ》によって場所全体がリ・デザインされることで、いろいろな「振る舞い」が自然に生まれてくるのではないかと期待している。
菊地宏 《大泉の家》 2009年 写真:菊地宏 © hiroshi kikuchi architects
菊地宏による作品の概要
極 小 の模型と実際の空間が、映像でリンクする。模型の中の一日が、実際の空間で体験できる。そんなインスタレーションを制作する予定である。
中村竜治 《kuma》 2006年 写真:中村竜治 © ryuji nakamura architects co.,ltd.
中村竜治による作品の概要
波板状のものを積層させ、蜂の巣状のものをつくり、そこに穴をうがつことでできたトラス状のものに対して、外形を与えて、全体の「見え方」を検証する。そんな関心で続けてきた「hechima」の考え方を発
展させて、巨大な「構造体のようなもの」をつくる予定。すかすかなのに、繊細なのに、巨大。そういうオブジェを前にしたとき、私たちはそれをいったいどのように感じるのか……構造体としてだけでなく、感覚が揺らぐそのこと自体もまた、面白さになるのではないだろうか。
中山英之 《草原の大きな扉》 2009年 Photo: Mitsuo Okamoto © Hideyuki Nakayama Architecture
中山英之による作品の概要
Tea House Competition の案、《草原の大きな扉》を基にしたインスタレーションを制作予定。「大きな扉」が1/3 の大きさになったとき、はたして扉はどう見えるのか。またそれを見る私たちは、なにをどう感じるのか。空間と身体の関係がやさしく書き換えられる、そんな体験になりそうです。
※展覧会の出展作品の制作プロセスは特設サイトにて見ることができます。
■展覧会概要
建築はどこにあるの?7つのインスタレーション
会場:東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
会期:2010年4月29日(木)~8月8日(日)
開館時間:10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日[2010年5月3日、7月19日は開館]、5月6日(木)、7月20日(火)
観覧料:一般 850円(600円) 大学生450円(250円)
※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
※それぞれ入館の際、学生証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。
※本展の観覧料で、当日に限り「いみありげなしみ」(ギャラリー4、2F)と所蔵作品展「近代日本の美術」(所蔵品ギャラリー、4-2F)もご観覧いただけます。