
SHARE 【ap編集長の建築探索】vol.010 成瀬・猪熊建築設計事務所「Nishiogi comichi terrace」

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。
成瀬・猪熊建築設計事務所「Nishiogi comichi terrace」
成瀬・猪熊建築設計事務所が設計した都内の集合住宅を拝見した。
賃貸で長屋形式である。
街区を東西に横断していて二つの道路に接道する敷地。その特性を生かして、敷地全体に緑道を通すように計画されている。両側に屋上テラス付きの2階建てヴォリュームが並ぶのだけれど、雁行配置や凹凸のデザイン、舗装と植栽のデザインによって、見え隠れがあり、歩いていて非常に楽しい、、、、!
また、建物の間隔も非常に良く考えられていて、単なる通路ではなく、コミュニティの多様な活動を受け入れらる大きさだと感じた(広すぎもしない親密感もある)。
緑道の一部には屋根が掛けられていて、造り付けのベンチや井戸も設置されていて、コミュニティの起点となるようにも考えられている。
成瀬さん猪熊さんが、こみちに面する住戸に関して内外の繋げ方に関してスタディを重ねたとおっしゃっていた。
確かに限られたスペースの中に様々なデザインのアイデアと手数が込められていて、開きすぎてもいないし閉じすぎてもいない絶妙な関係性が構築されていて素晴らしかった。(床の素材の切り替え、軒の高さ、90度曲がる動線、そして植栽の枝ぶりまでも!、検討を重ねたと言う)
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住戸のプランニングは、場所ごとで変わり5タイプが計画されている。(一部、一階を店舗にも使用出来る変形タイプがある)
一階をリビングとする事で、暮らしの雰囲気が中央の通路にも滲み出る事も意図したとのこと。敷地内の固有の状況に合わせて開口やプランニングが熟慮されていることも良くわかるし、全住戸が、屋上テラスを持っているというのも、暮らしの幅を広げると感じた。
集合住宅をつくる際に、暮らしの理想像を建築として明確に描くということも、今回のような集合住宅内のコミュニティの形成も意図した場合に重要なんだと改めて思った。
そのような集合住宅には、その暮らしに惹かれる人が集まってくるはずなので、住人同士の親和性も高まるはずであり、円滑な交流が育まれるのではないかと。
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成瀬猪熊さんたちの設計した建築はこれまでにいくつも拝見しているけど、緻密に設計しているのだけれど、それを前面に感じさせない自然さも同時にあって、なんというか円熟の域に達しているような感じもあった、、、、!
お施主さん、成瀬さん、猪熊さん、関係者の皆さんご竣工おめでとう御座います!
(訪問日:2025年4月20日)
後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。22年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するWebメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。
