SHARE 成瀬・猪熊建築設計事務所による”木造建築廃材から作られた紙”
以下、建築家によるテキストです。
木造建築廃材から作られた紙
この展覧会は、木・プラスチック・金属という使い慣れた素材をテーマに、デザイナーと科学者の交流を通して、 それぞれの”正しい”モノづくりを探求していく意欲的な試みです。
私たちの展示は、建築廃材から作った紙です。奇抜な形や空間ではありません。紙そのものが展示です。
「木廃材→再生木材」「古紙→再生紙」はリサイクルの一つの形です。しかしこれは、次の再生が困難なものを生み出したり、質が落ちたり、必ずしも利点ばかりではありません。製紙業界では近年、再生紙偽装の問題まで起こりました。ここには、壊れたものは元には戻らないという、マテリアルフローの根本的な原理が潜んでいます。
私たちの提案は、リサイクル品であるにも関わらず原料は木です。再生品でありながら、原理的には新品と全く同じ紙を作ることが出来ます。物質としては解体しながら、商品としては再生する、きわめて合理的なフローです。現在この流れは、ごく少量でしか行われておらず、建築業界と製紙業界に積極的な活動は生まれていません。そもそも建築廃材は大半がサーマルリサイクルに送られ、マテリアルとして有効な利用そのものが、減少傾向にあります。
私たちは展示のために、実際に廃材を集め、パルプにし、紙を作ってもらいました。この展示は、「木の廃材→紙」というマテリアルフローのデザインであり、またその問題提起です。