SHARE 吉岡徳仁がA&W デザイナー・オブ・ザ・イヤー2011を受賞
吉岡徳仁がドイツ”A&W Architektur & Wohnen”によるA&W デザイナー・オブ・ザ・イヤー2011を受賞しています。
以下、記念に行われた展覧会の写真と、吉岡によるQ&Aです。
以下、吉岡によるQ&Aです。
1. A&Wアワード授賞おめでとうございます。今回の授賞は吉岡さんにとってどのような意味があるのでしょう?
ありがとうございます。これまで様々な企業を初め、沢山の方々にご協力や、日々温かい励ましの言葉を頂いてきました。
皆様のご支援のお陰で、このような受賞の機会をいただくことができ、とても感謝しております。
2001年にRoss Lovegrove氏の推薦により、A&W Mentor-prize(若手デザイナー賞)を頂いたときの感動を今でも鮮明に覚えています。当時海外で初めていただいた賞で、とても感動したことを思い出します。10年経った今、再びこのような賞を頂くことができ、更なるものづくりへの励みとなっています。世界中のたくさんの方々に喜んでもらえるものづくりを続けていくという信念を再確認いたしました。
今後も真摯にものづくりに励んで参りたいと思います。
2. 展示のコンセプトについてお聞かせください。
今回展示している作品は、過去10年間の間に家具メーカーと手がけた作品の一部です。
2003年ミラノサローネにて発表した空間インスタレーションCLOUDSのイメージをもとにデザインしました。霧に包み込まれた空間の中に過去の作品を展示し、まるで記憶から呼び覚ますことをイメージしました。
展示作品:
KISS ME GOODBYE (2004)/ Driade、BOING(2005)/Driade、Tokyo-pop(2002)/Driade、Bouquet(2008)/MOROSO、PANNA chair (2007)/MOROSO、Ami Ami (2008)/ Kartell、The Invisibles (Collection) (2010)/ Kartell
3.吉岡さんにとってデザインする上でもっとも大切なことについてお聞かせ下さい。
自分はデザインを通して”かたち”ではなく、人間の美しさに対する感覚を追求し、感情のエネルギーを表現しています。
常に人の心に響くもの、新しい感動を与えることの出来るようなものを生み出したいと考えています。
4. 吉岡さんの作品は白や透明なものが多くみられますが、色についての考えをお聞かせください。
かたちは存在しないけれど、心に感動をもたらすようなもの、シンプルで象徴的なものに心惹かれます。
例えばクリスタルやダイヤモンドも、それ自体は透明ですが、カットを施し、光を受ける事で姿が現れます。
色は意識しているのではないのですが自身の感覚に響き渡り、培われたこれらの要素が自然と白や透明となって作品に表れてくるのだと思います。
5. これまで、プロダクト、店舗デザイン、インスタレーションと様々な分野でご活躍されていますが、それぞれのカテゴリーでアプローチの仕方は、違ますか。
すでにデザインされ尽くした分野の中で「新しい切り口」を求め、デザインを進めていく事は、私の作品に一貫して言える事だと思います。
「なぜこれまで存在しなかったのだろう」と思うようなものを生み出すことにおもしろさを感じています。自分のアイデアが本当に必要とされているのか、多くの方に喜んでいただけるようなものなのか。客観的に自分自身に問いかけながら、自分がまだ見た事のないもの、見てみたいものを生み出しています。
また、プロダクト、インスタレーションに関らず、ものづくり全般において大切にしていることは「感覚をデザインする」ことです。
結果としてプロダクトやインスタレーション、建築というカテゴリーに収められていくのですが、根本的な部分での姿勢には変わりはありません。
6.これまで手がけた作品で吉岡さんらしさが最も表れているものは何でしょうか。
どのプロジェクトも今までのデザインの歴史に存在しないもの、人を感動させるものをつくることを念頭につくり続けてきました。そのため、自分も見て感動できるようなものづくりをしています。
今回展示している作品も、ひとつひとつに思い入れがあります。
特に、昨年発表したKartell “The Invisibles” シリーズは、現象そのものや、目に見えない感覚や要素を多く取り入れるという近年のわたしのデザインへの姿勢が鮮明に表れた、作品ではないでしょうか。
展示していないプロジェクトですが、Honey-pop, PANE chair, VENUS – Natural crystal chairなどは、自然の原理や構造、そして偶然の美しさを取り入れた作品だと思います。
Honey-popはハニカム構造の強度をもちえた、何枚にも積層された薄紙によって作られた紙の椅子。
PANE chairはイタリア語でパンの椅子という意味なのですが、ファイバー構造により、柔軟な座り心地や構造を実現した椅子です。
またVENUSは、自然結晶からつくられている椅子であり、半分は人の手によって、残り半分は自然により創り出される椅子です。
自然結晶が椅子のかたちの構造に形成され、成長します。
これらのプロジェクトは我々の想像を超える自然の美を教えてくれるものです。
7. 何年間もの間にビジョンというのは変わっていったのでしょうか。
変化なのかは、わからないのですが、最近の作品では自然の原理をデザインに取り入れたデザインを表現しています。
自分のデザインと自然との共通点に気づいたのは2006年に大きなインスタレーションを展示したときでした。わたしの作品を見た人々から自然現象での体験を絡めたコメントいただきました。自分自身の作品を振り返ってみると、自然原理や自然を前にしたときに感じる感覚の要素が自分のデザインに宿っている事に気づいたのです。それは、単に自然を表面的に模倣することではなく、わたしたち人間が自然の中に身をおいたときの感情のエネルギーを引き起こすという事です。それゆえに、人間の感情のメカニズムを自分のデザインを通して研究し続けています。
8.吉岡さんの考えるこれからのデザインとはどのようなものなのでしょうか。
今の時代は、エネルギーの転換に始まり、大きな時代の転換期にあります。
そういった時代の中で、デザインもかたちのデザインから、体験や感覚をデザインする方向へと転換していくのではないのでしょうか。
プロダクトにおいては、外観的なかたちなどではなく、その製品を通して「どのような体験ができるか」ということが、これから求められる新たな可能性になるのではないでしょうか。
そして実現不可能にみえるものを実現に導くような革新的なアイデアを持ったものが未来のデザインを創造していくのではないかと思います。
9.今、手がけているもので、発表できるものはありますか。また2011年に向けてのメッセージをお聞かせ下さい。
2011年も様々な分野のプロジェクトを進行中です。主に、建築や、展覧会関連のプロジェクトを手がけています。
今年は初心に戻り、また、これからも人々に感動を与える事のできるような作品を生み出せるよう、励んで参りたいと思います。