SHARE 吉田周一郎建築設計 / 吉田周一郎+石川静による、東京都港区の集合住宅の住戸改修「ワイズキッチン」
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吉田周一郎建築設計 / 吉田周一郎+石川静が設計した、東京都港区の集合住宅の住戸改修「ワイズキッチン」です。
RC造中古マンションの改装計画。着工前に、実際に住む事で、年間を通じた温熱環境や、光の入り方、風の通り方、周辺環境との視線の関係性などを理解し、それらの体験を活かした改装設計を行った。
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以下、建築家によるテキストです。
建築を生業とする夫婦の家
「ワイズキッチン」
■改修前の居住経験をフィードバックする、リアルな改装計画
RC造中古マンションの改装計画。着工前に、実際に住む事で、年間を通じた温熱環境や、光の入り方、風の通り方、周辺環境との視線の関係性などを理解し、それらの体験を活かした改装設計を行った。
■キッチンが主役の家。
玄関から入るとダイレクトに長いキッチンへとつながる計画とした。通常であれば廊下を設置するその場所に、長いカウンターを据えた。キッチン、ダイニングとしてはもちろん、リビングとしても、仕事にも、アイロン掛けにも役に立つ。
■マンションの立地を活かした、高さに変化をつけた計画。
このマンションは傾斜地に建ち雁行型の部屋配置という特徴があり、南西のバルコニーは隣地の学校校庭に面した緑豊かな環境である。玄関から、長いキッチンを抜けると、一段下がってソファを配したリビングを設けた。二階にあるこの部屋からは、樹木の葉がちょうどいい具合に目線の高さとなる。
■人の居場所に変化をつける
家族あるいは人がたくさん集まったときに様々な居場所のある空間つくった。
キッチンから連続した全長5.8Mのモルタルカウンターでは、料理をつくること、食べることの境目なくして、一緒に作ったり食べたりできる。キッチン側の床を15cm下げて、作る人と食べる人の目線を合わせている。
リビングルームは床高さが20cm下がっており、L型に囲まれたソファと床に、人が円陣を組むように座る場をとした。
■夏涼しく冬暖かい家
以前、住んでいた経験から風の通り道を考えた間取りと、開口部を設定した。
出来るだけアクティブなエネルギー(電気やガス)に頼らず、断熱と通風の工夫で快適に過ごせる工夫を行った。
全ての部屋に窓や隙間を設けて、風が通り抜ける。外壁には断熱材を貼り増し、輻射熱から守る計画とした。外部サッシュはマンション共用部なので改修することが出来ないため、内側から二重窓として木製建具(北側は樹脂内窓)を追加した。開口部の断熱性も確保した。
断熱部の壁仕上げには、赤茶色のイタリア産の砂岩タイルを貼り、マンション外壁のレンガタイル色の連続した、屋外のようなリビングの雰囲気としている。
■収納を絡めた細部の工夫
・キッチンの洗浄と収納
食器を洗って干して収納する一連の行為を、キッチン上の製作水切り棚で乾かし、キッチン背面の収納スペースに仕舞うサイクルを実現した。水切り棚には上部に照明が仕込むことで、照明器具としても機能し。照明の発熱により食器の乾燥が早くなる。
・既存ガラス入り家具の再利用とリメイク
既存のキッチンにあったガラス入り家具は、リビングと寝室を間仕切る壁として再利用した。枠をブラックで塗装し、ガラスが行燈のようになる照明計画をして、新しいインテリアへなじませた。
・小上がり畳仕上げの寝室
寝室は床から40cm上がった高さのベッド仕様の畳仕上げとし、布団を上げ下げして利用する。畳を取り外すと下部が収納になっている。
・洗面室のしつらえ
洗面室とキッチンの境界は窓と鏡と棚を兼ねた造作建具を設置した。ダイニングキッチンからの開放度を調整する役割と、洗面小物棚をひとつの造作建具の表裏をつかって兼用する。
・建具による間仕切りと収納隠し戸の兼用
トイレの引き戸は手洗いの隠し戸を兼ね、寝室への引き戸は本棚2列分の大きさで隠し戸を兼ねている。引き戸を引くと、人が通れたり、本棚や手洗いがあらわれる楽しさもある。
・照明器具のオリジナル製作
照明器具の殆どはオリジナルで製作した。その場所に相応しい光、材料を考えて製作することで、色気のある、居心地のいい空間になったと思う。
■建築概要
住所:東京都港区
用途:集合住宅の住戸改修
構造規模:RC造7階建ての2階部分
床面積:56㎡
竣工:2015年4月
事業主:個人
設計:吉田周一郎建築設計 吉田周一郎+石川静
施工:ビルドデザイン 山田幸治
モルタルテーブル構造設計:EQSD 高木次郎
リビング家具製作:make and see 松尾真之介
照明計画協力:田中由美子
照明器具製作:高橋佑
主要仕上げ
床:オークフローリング
壁:既存RC打放し、構造用合板、砂岩タイル
天井:既存RC打放し、構造用合板