SHARE 五十嵐淳建築設計事務所による、北海道旭川市の住宅「house D」
all photo©Sergio Pirrone
五十嵐淳建築設計事務所が設計した、北海道旭川市の住宅「house D」です。
旭川市内の古い街の一角に建つ住宅。このような昭和40年代から50年代に建てられた住宅が整然と並ぶ古い住宅街は今後、いろいろなかたちで代謝が進む。それは拠り所にはなりにくいコンテクストであるが、そのある意味での小さな環境や、もっと大きな環境(地球)との関係を拡張していきたいと思い設計を進めた。過去に要望諸室を適度なヴォリュームに置き換え、各諸室をそれぞれの関係性と動線計画を前提に配置していく建築をいくつかつくった。その経験から居場所、距離感、断面についての多様な可能性に気付き、内部空間に意識が向きつつも、同時にある意味での小さな環境(周辺)や、もっと大きな環境(地球)との関係の拡張へと意識を移行させようと考え、この形態の可能性の拡張に気付いた。
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以下、建築家によるテキストです。
「状態より導かれる、建築物の必然性と可能性」
旭川市内の古い街の一角に建つ住宅。このような昭和40年代から50年代に建てられた住宅が整然と並ぶ古い住宅街は今後、いろいろなかたちで代謝が進む。それは拠り所にはなりにくいコンテクストであるが、そのある意味での小さな環境や、もっと大きな環境(地球)との関係を拡張していきたいと思い設計を進めた。過去に要望諸室を適度なヴォリュームに置き換え、各諸室をそれぞれの関係性と動線計画を前提に配置していく建築をいくつかつくった。その経験から居場所、距離感、断面についての多様な可能性に気付き、内部空間に意識が向きつつも、同時にある意味での小さな環境(周辺)や、もっと大きな環境(地球)との関係の拡張へと意識を移行させようと考え、この形態の可能性の拡張に気付いた。箱を動線・方位・居場所の関係性・光・風などを考慮しつつも複雑に配置することで、外部と関係する空間が一気にふえる。それは直接的な関係であったり、意識の上での関係性であったり。この形態により内部空間同士や居場所の距離感、同時に外部空間同士の関係、さらに内部空間と外部空間の親密性や距離感、連続性も獲得している。また凍結深度により生まれた特徴的な断面は、平面の形態と相まって外部空間との関係性や連続性を助長する。それは地面により近づいた内部空間から外部を感じ、その直ぐそこの外部とまたそのずっと向こうの外部と、そのまた向こうの内部とそのまた・・・が繋がっていく感覚である。その結果ここでは内部が外部であるような、そして外部が内部であるような、それらがもっと複雑な味覚のような状態となり、環境との関係性の状態が生まれた。また配置の余白は除雪と排雪を考慮したものであり、将来的に除雪機器や冬期間の自転車の保管場所として建てられる外部物置のスペースも考慮した。今後、植栽や家庭菜園なども計画している。建築はその場その場の地球環境の状態の読み解きにより、もっと多様になる可能性があり、そのことでもっと新しく必然的な建築が生み出せる可能性に満ちているし、私もその可能性を見出し続けていきたいと考える。
■建築概要
延床面積:94.70㎡
設計期間:2013年9月~2015年3月
施工期間:2014年10月~2015年3月
設計:(株)五十嵐淳建築設計事務所
構造設計:長谷川大輔構造計画
施工:昭和木材(株)
写真:Sergio Pirrone