SHARE 米田雅樹 / ヨネダ設計舎による、三重県松阪市の、水たまりの場を持つ住宅「puddle」
all photos©Hiroshi Tanigawa
米田雅樹 / ヨネダ設計舎が設計した、三重県松阪市の、水たまりの場を持つ住宅「puddle」です。
「海外赴任していた時に泊った水盤のあるヴィラの空間がとても良く、忘れられないので水盤のある家を設計してほしい」
「普段は人とあう仕事なので住居内においては、自分たちだけの空間が感じられるプライバシー性のある住居がいい」
「現代アートが好きなので、自然と光を楽しみ、感じながら生活したい」
大きく、この3つの要望をいただいて設計がスタートした.
敷地は20年ほど前につくられた住宅地で、以前はここに倉庫が建っていて、1世代前に建てられた周囲の住宅群に対してここだけ時間が止まったような印象だった.
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以下、建築家によるテキストです。
「海外赴任していた時に泊った水盤のあるヴィラの空間がとても良く、忘れられないので水盤のある家を設計してほしい」
「普段は人とあう仕事なので住居内においては、自分たちだけの空間が感じられるプライバシー性のある住居がいい」
「現代アートが好きなので、自然と光を楽しみ、感じながら生活したい」
大きく、この3つの要望をいただいて設計がスタートした.
敷地は20年ほど前につくられた住宅地で、以前はここに倉庫が建っていて、1世代前に建てられた周囲の住宅群に対してここだけ時間が止まったような印象だった.
北側に道路があるため、地方生活者にとってかかすことが出来ない駐車場を道路側に配置すると、敷地南側のスペースがなくなり、隣の住居の陰になって光が室内に入らないことが問題だった.また、南側に建物を寄せすぎると、お隣さんとの窓同士が一致してしまい、プライバシー性の確保も難しくなりそうだった.
検討の結果、中心に約2.5m角の大きなエントツのような空洞を挿し込み、そこから各室に光と風を届けるプランとした.
住居内にタイル張りの水盤というと日々の生活に対してどこかゴージャスすぎて、日常の穏やかさに派手さが勝ってしまいそうな気がしたので、ナチュラルに水を感じられるよう、住居中心に水の輪郭を規定しない水たまりの場を提案した.
また、その上部に周囲に住宅がたてこんでいる住宅地においても、自分たちだけの空を楽しめるように、ジェームスタレルの作品になぞらえたような空間を設えた.
この住まいは全部で14段階の床レベルがあり、仕上げと各開口の調整により上階に行くほど明度を上げ、下階に進めば地面に潜っていくように光を抑えた空間としている.
空間の中に、白いスラブを浮かすことで光と闇の地層が出来る.
その状態と各室の床レベルの高低を応答させることで、光に対する浮遊感のある場所、闇に浸かる場所が生まれる.
外部においては南側に周囲とつながる段状の開放的なルーフバルコニーを配置し、外部に対して開くと閉じる、どちらの選択性も用意した.このスペースは周囲の建物と自室の緩衝ゾーンになる.
楽しい時、そうでない時、疲れているとき、みんなで一緒にいたいとき、考えごとをしたいとき、読書をしたいとき、ぼーーーーっとしたいとき
人はたくさんの気持ち、気分とともに生きている.
この住まいは光も陰も、住まい手のその時の気分により、居場所を見つけることができる.
晴れた日は、中心の空中に浮いた白い板が、空の様子をリフレクターのように現象させ、室内に光を届ける.
太陽に雲がかかると、光を呼吸するようにダイレクトに室内の状況が変化する.
四角く切り取られた空を眺めていると、飛行機がよこぎって行ったり、鳥たちがとんでいったり.
音もなくかたちを変えていく雲をみていると、時間のつながりと、おなじ時間というのはないのだということを想う.
中心にある水たまりは、雨の日が多い時期は水たまりも大きくなり、日照りが続くとだんだんと小さくなっていく.
雨の波紋と、水たまりに落ちるしずくが奏でる水琴窟のような音のなか、雨の日は雨の日の情緒を愉しみ、
自分たちが生きる風土、四季、毎日の天気、家族の時間の重なり、それらの連続、溶け合い、自身との繋がりを感じていくことができるような住まいになるようにと意識して設計した.
この住まいは、クライアントのお父様が大工さんであり、息子家族、孫たちの生活の場を、長年磨いてこられた技術でたち上げてくださいました.
想いのこもったプロジェクトの一員として、僕も参加させていただけたことをとても嬉しく、そして光栄に思っています.
■建築概要
物件名:puddle
所在地:三重県松阪市
居住者構成:夫婦+子供1人
用途地域:都市計画区域内 第二種中高層地域
建物規模:地上2階建
主要構造:木造2階建
敷地面積:192.03m2
建築面積:105.63m2
延床面積:169.33㎡(住居部145.55m2 車庫23.78m2)
建蔽率:55.00%(許容60%)
容積率:75.80%(許容200%)
設計:一級建築士事務所ヨネダ設計舎
施工:立岡建築 立岡功
設計期間:2014年7月~2015年7月
工事期間:2015年8月~2016年5月
米田雅樹(ヨネダマサキ)
1980年三重県伊勢市生まれ
2008年 修成建設専門学校第二本科卒業
2006年~2008年 吉澤建築設計室
2008年~2013年 株式会社ビーディホーム
2013年 一級建築士事務所ヨネダ設計舎 設立
一級建築士事務所 ヨネダ設計舎
米田 雅樹
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