写真提供:D.I.G Architects
吉村真基+吉村昭範 / D.I.G Architectsが設計した、愛知・名古屋の住宅「丘のふもとの十字架構」です。
ささやかな住宅の計画です。
敷地は公園にむかって開けた角地で、そこにまず柱を一本立て、居住環境を構成するよりどころとしてその柱を基点とした座標軸を想定しました。
この軸は住宅の内部においては空間を緩やかに分節する単純なXYZの架構として現れます。
座標軸を想定した上で、次に住宅の外皮としてのボリュームを設定しています。
1階は架構とは切り離したBOXの中に収納や水回り等のユーティリティを納め、あとは生活のメイン空間として十字の架構の下でなんとなく領域を分けながらも広々と使います。2階は「座標軸」に乗る形で2つの床を設けています。住宅としてはそれだけです。
2階の床は軸にそって外に伸びています。一方はバルコニー、一方はアプローチの庇という形で役割を与えられていますが、その機能的な側面と共にここでは架構が建築の外皮を破って外にのびていくという振る舞いが重要です。
この架構は住宅を構造的に成立させるためのものですが、同時に自分を取り巻く環境に軸を一本立てるという空間認識の初源的な行為を内包することで、住宅的なしつらえを通り越してもっと大きな環境の中に暮らしているというそこはかとない感覚と共に生活してもらえたらいいな、と思っています。(吉村真基)