SHARE 365+1studio / 小島弘旭による、東京・目白の、改修(DIY)可能とし物件価値を回復した賃貸住宅「目白の間抜け」
365+1studio / 小島弘旭による、東京・目白の、改修(DIY)可能とし物件価値を回復した賃貸住宅「目白の間抜け」です。
築45年ほどの賃貸でありながら、改修(DIY)可能とすることで、空室が目立ち始めた物件価値の回復を図っているマンションの一室の改修プロジェクト。
賃貸という公共性
本プロジェクトは、設計費を含めた約220万円を貸主と借主で折半している。貸主には入居者が確定した状態での設備更新を含めた改修による物件価値の上昇、借主には持出分以上の価値を享受できるメリットがある。また、設計主には一定程度の設計料が見込まれ、小規模かつリノベーションが孕む労働と対価に対する懸念を和らげる働きにもつながっている。 そして、貸主、借主、改修するであろう未来の貸主という複数の関係主体が見込まれることで、対個人という「間」が抜ける。賃貸は複数の主体が入れ替わりながら利用するため、1室であろうとも公共性があるのではないだろうか。すなわち、有限の中で多様な様相を受容する複雑性を持つ建築の創造に繋がると考える。リノベーションは、建築を紡ぎ綴るための行為そのものであろう。 古さを単なる装飾的に利用するのではなく、既存の建築がどのように読み替えられ、新しい意味をまとい、次の社会へと繋がるかを考えるべきである。「間抜けさ」を建築が持つことで、柔軟に意味を脱ぎ着できるのはないだろうか。
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以下、建築家によるテキストです。
目白の間抜け
築45年ほどの賃貸でありながら、改修(DIY)可能とすることで、空室が目立ち始めた物件価値の回復を図っているマンションの一室の改修プロジェクト。
大きく分け、土間と居室2つのスペースの連続から成る。 解体により表出したモノ、新しく設え直したモノ、それらの区別なく様々な要素を用いて、室内外の連続と切断、空間の調整を行った。界壁のブロックには断熱や遮音を兼ねる中空層ポリカを重ね、天井の躯体には野生的な荒々しさを和らげるためツヤありクリア塗装を施し、床には幅広の材を選定した。また、金属の質感を持ち、再現性の高い素材でもあるアルミテープを用いた仕上げも採用している。ピュアすぎる素材の現れを避け、やや間抜けで大らかな表情を持つことで、迫り来る隣の外壁をも要素として受容し、生活の重心が室内に偏りすぎてしまっている状況から抜け出そうと考えた。収納建具と床、廻縁を撤去した天井と壁、下がり壁と躯体、LGS半現しの壁、自主施工によるざっくりとした接合などモノとモノの取り合いにおいては、文字通り「間」が抜けている。
愛らしい色合いや度重なる設備更新による配管の現し、住人の自主的な施工による自転車置き場などおおらかな雰囲気の共用部。 全戸が角部屋で、雁行配置の室とゆったりとした南北の空きを持つ住戸からなる建物自体を活かすよう、応答しながら計画した。
賃貸という公共性
本プロジェクトは、設計費を含めた約220万円を貸主と借主で折半している。貸主には入居者が確定した状態での設備更新を含めた改修による物件価値の上昇、借主には持出分以上の価値を享受できるメリットがある。また、設計主には一定程度の設計料が見込まれ、小規模かつリノベーションが孕む労働と対価に対する懸念を和らげる働きにもつながっている。 そして、貸主、借主、改修するであろう未来の貸主という複数の関係主体が見込まれることで、対個人という「間」が抜ける。賃貸は複数の主体が入れ替わりながら利用するため、1室であろうとも公共性があるのではないだろうか。すなわち、有限の中で多様な様相を受容する複雑性を持つ建築の創造に繋がると考える。
リノベーションは、建築を紡ぎ綴るための行為そのものであろう。 古さを単なる装飾的に利用するのではなく、既存の建築がどのように読み替えられ、新しい意味をまとい、次の社会へと繋がるかを考えるべきである。「間抜けさ」を建築が持つことで、柔軟に意味を脱ぎ着できるのはないだろうか。
■建築概要
所在地:東京都豊島区目白
主要用途:住居
工事種別:改修
施工面積:30.54㎡
既存:設計者不明
設計:365+1studio / 小島弘旭
施工:スリーエフ、自主施工
設計期間:2018.01. – 2018.03.
施工期間:2018.02. – 2018.03
all photos©Tsubasa K