SHARE 杉本博司と榊田倫之による新素材研究所の建築展「新素材×旧素材」の会場写真
杉本博司と榊田倫之による新素材研究所の建築展「新素材×旧素材」の会場写真が9枚、WWDに掲載されていますです。以下は展覧会公式の概要です。
本企画展は、世界的に活躍する現代美術作家 杉本博司が建築家 榊田倫之と共に2008年に設立した建築設計事務所「新素材研究所」の10年にわたる活動を、建築模型・写真、そして新素材研究所の使用する特徴的な古材や道具、素材等の展示を通してご紹介するものです。
『旧素材こそ最も新しい』という理念のもと、古代や中世、近世に用いられた素材や技法を、現代にどう再編して受け継いでいくかという課題に取り組む新素材研究所は、カタログからは建材を選ばず、骨董から産業資材まで独自の視点で見立てた素材を日頃から集め、それらを設計に生かし、空間を作っています。そのデザインは、素材の良さを最大限に引き出すための伝統的な職人の技術と最新技術とを融合させ、現代的なディテールで仕上げられます。新素材研究所の活動の軌跡を振り返る本企画展にご期待ください。
【新素材研究所 創業記】
私は現代美術界の中で写真家として自身の作家活動を開始した。その後ある時から建築写真を撮るようになった。ロスアンゼルスの現代美術館から20世紀建築を概観する展覧会の為の、主要建築の写真作品化を依頼されたのがきっかけだった。またある時から、美術館と呼ばれる建築の内に自身の展覧会という空間を構築するという作業をするようになった。特に出来立ての美術館空間には手を焼いた。リベスキンドによるロイヤルオンタリオ美術館での開館記念杉本博司展で私は途方にくれた。展覧会の初日はまだ工事中だった。私は建築家の理屈とアーティストの使い勝手が相反する幾つもの空間で苦戦を重ねることになった。ゲーリーのビルバオ、ヌーベルのカルティエ、ヘルツオーグのデヤング、ズントーのブレーゲンツ、クールハウスのリウム、そしてミースのノイエナショナル。私はその戦いの中で私自身の空間感を研ぎ澄ましていった。幾多の苦戦は反面教師となって私の感性にフィードバックされ、ある時から私の欲する建築の姿が私の脳裏に浮かび上がるようになっていった。齢を重ねるにつれて、私は私の人生に関わってきた全ての仕事を俯瞰的に統合してみようと思い立ち、小田原文化財団、江之浦測候所の構想に取りかかった。その頃思いもかけない建築設計の仕事が舞い込んで来た。それは福武氏からの直島護王神社再建の仕事だった。私はこの仕事から日本の古代の信仰の姿を考える機会を得た。この仕事が終わってみると次に三島に写真美術館を設計するという仕事がやってきた。これを機に、私は榊田倫之と共に建築設計事務所を開設した。こうして私は日本建築から顧みられなくなりつつある旧素材を救うために「新素材研究所」を創業した。旧素材こそが今や最も新しい素材であることを実証するために。ここでは時間は遡行する。江之浦測候所が人間の意識の起源へと人々の心をいざなうように。
杉本博司