SHARE A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇による、京都・左京区の店舗併設住宅「窓緑の家」
A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が設計した、京都・左京区の店舗併設住宅「窓緑の家」です。
3階建ての店舗併設住宅である。
設計を依頼された際に建っていた既存の花屋は、小さな空間に多くの植物が溢れるばかりに並べられ、鉢や小物に至るまで店主が丁寧に選んだものと組み合わせられて独特の雰囲気を発していた。それは華やかな色とりどりの花に囲まれた非日常の風景では無く、日常の生活空間に緑や花を添えて暮らすことの豊かさが感じられるような素朴な質のものであり、とても好ましいものに感じられた。
また、花屋はインターネットでの販売が中心であり、店舗は広い作業スペースのある倉庫のような空間でよいとの店主からの言葉があった。このことによっていわゆる一般的な花屋らしさというものに縛られず、店舗から住居へと溢れる緑のある空間で、家族が毎日を暮らせる場所であってほしいとシンプルに考えることができた。
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以下、建築家によるテキストです。
「窓緑の家」
3階建ての店舗併設住宅である。
設計を依頼された際に建っていた既存の花屋は、小さな空間に多くの植物が溢れるばかりに並べられ、鉢や小物に至るまで店主が丁寧に選んだものと組み合わせられて独特の雰囲気を発していた。それは華やかな色とりどりの花に囲まれた非日常の風景では無く、日常の生活空間に緑や花を添えて暮らすことの豊かさが感じられるような素朴な質のものであり、とても好ましいものに感じられた。
また、花屋はインターネットでの販売が中心であり、店舗は広い作業スペースのある倉庫のような空間でよいとの店主からの言葉があった。このことによっていわゆる一般的な花屋らしさというものに縛られず、店舗から住居へと溢れる緑のある空間で、家族が毎日を暮らせる場所であってほしいとシンプルに考えることができた。
敷地は大通りから少し東に入った閑静な住宅街に位置している。その場に店舗併設住宅としてどのような建ち方がふさわしいか考えた。また、敷地の南側は日当りがよく朝から日が沈むまで陰になる時間がないということもあり窓に差し込む強い日射をどうコントロールするか、また敷地周辺には全方位が殺風景であり、窓からの景色をどうつくるかもポイントであった。
そこで道路に面する南側の大きな窓に大きな出窓状の花台を設け緑化する場所とした。そして前庭や花台の植栽は専門家であるクライアントにお任せすることよって、ブルーベーリーやハーブ等が植えられ、木々が美しい緑豊かな住宅となった。まぶしい太陽の光はおだやかな木漏れ日となり、花台から溢れ出る緑は店の前を行く人々の目を和ませている。街並みに潤いを与える役割を担えれば、近隣の住民にもこの建物の姿が好意的に感じられるのではないかと考えている。
現在、京都では景観条例によって街並を構成する建物の要素を細かく指定し、それによって新しい町家風の建物が推奨されている。どことなく違和感を感じるのは人々の生活から生まれたものでは無いが故に、生きた建築として感じられないからではないかと思う。
計画建物は比較的間口が広く規模も3階建てであり、典型的且つ、伝統的な町家とは全く異なるが、住まいと職場が同一建物内にあり、住人の職能や個性を外観に滲み出るさせることで、少しではあるが、生きた街並みを構成する1要素とすることができたのではないかと考えている。
■建築概要
所在地:京都市左京区
主要用途:店舗付き住宅
規模:地上3階
主体構造:木造軸組工法
設計:A.C.E. 波多野一級建築士事務所
施工:株式会社 サクジ工務店
竣工:2017年6月29日
写真:沼田俊之