A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』
photo©沼田俊之

A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』

A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』店内から前面道路側を見返す。繁忙期は非常に混雑する為、回遊出来るシンプルな動線計画とした。 photo©沼田俊之

A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』です。お店のウェブサイトはこちら

■美味い・辛い・楽しい
「おちゃのこさいさい産寧坂本店」は「美味い・辛い・楽しい」をコンセプトにした七味唐辛子屋の本店である。商品は味と品質にこだわりを持って製造しており、その美味しさを地元京都の住人や、より多くの観光客に直感的に伝える為のパッケージデザインや新しいロゴマークについて京都工芸繊維大学・中野デザイン研究室がディレクション、デザインを担当されており、今回はその流れを受けて既存店舗のイメージを一新するような空間への改修を依頼されたものである。

■平成の大改修
京都清水寺のふもとにある産寧坂は、石段の道と京町家が一体となって優れた歴史的景観を有する伝統建造物群保存地区にある。清水寺は現在「平成の大修理」の最中であり、数年間その全貌を見ることが出来ないほどの大工事が進行中である。規模は全く比較にならないが、それにちなんで店の歴史に残る事業として今回のプロジェクトを「平成の大改修」と題した。

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A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』清水寺に至る産寧坂の石段から連続的に店内に続く石畳。外観は京都市伝建地区条例により、既存のまま保存することとした。 photo©沼田俊之
A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』杉の木箱や竹籠に載せられた多数の商品が所狭しと並ぶ棚。下部収納は寺社仏閣でも使われる亀甲銅線網を面材に採用している。 photo©沼田俊之
A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』薬棚のような格子をモチーフにしたレジ台。七味は元々薬問屋発祥の調味料である。 photo©沼田俊之
A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』唐辛子を抱える鍾馗さん。中野デザイン研究室デザイン、鬼師製作によるオリジナル。 photo©沼田俊之
A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』ロゴマーク入りの京提灯。提灯職人とのコラボレーションにより製作。 壁面は京錆土により「辛さ」を表現した。一部壁面は鎚目銅板貼り・銅板ウロコ葺き。 photo©沼田俊之
A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』108枚の銅板ウロコ葺き壁面は、板金工が1枚づつ手加工で製作し取付けた。銅板が年月を経て風化すると共に、店の歴史を刻むことを願って採用した。 photo©沼田俊之
A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』紅葉にも負けないほどの、真っ赤な唐辛子1800本が吊されたショーケースが来客を出迎える。 photo©沼田俊之
A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』おくどさん(かまど)モチーフの飴色タイル貼りの七味調合台。薬味と共に提供されるお出汁も香る。 photo©沼田俊之
A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』七味の調合作業台。唐辛子・山椒・胡麻・陳皮・青海苔・紫蘇・麻の実・芥子の実・柚子などをブレンドしてオリジナルの七味がオーダー出来る。 photo©沼田俊之
A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が改修を手掛けた、京都・産寧坂の店舗『「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修』驚きの反応「お!」とブランド名「おちゃのこさいさい」の「お」に、唐辛子のイメージを合わせた新しいシンボルマークとペーパーバッグ。 photo©畔柳尭史

以下、建築家によるテキストです。


「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」・平成の大改修

■美味い・辛い・楽しい
「おちゃのこさいさい産寧坂本店」は「美味い・辛い・楽しい」をコンセプトにした七味唐辛子屋の本店である。商品は味と品質にこだわりを持って製造しており、その美味しさを地元京都の住人や、より多くの観光客に直感的に伝える為のパッケージデザインや新しいロゴマークについて京都工芸繊維大学・中野デザイン研究室がディレクション、デザインを担当されており、今回はその流れを受けて既存店舗のイメージを一新するような空間への改修を依頼されたものである。

■平成の大改修
京都清水寺のふもとにある産寧坂は、石段の道と京町家が一体となって優れた歴史的景観を有する伝統建造物群保存地区にある。清水寺は現在「平成の大修理」の最中であり、数年間その全貌を見ることが出来ないほどの大工事が進行中である。規模は全く比較にならないが、それにちなんで店の歴史に残る事業として今回のプロジェクトを「平成の大改修」と題した。

■色と素材
産寧坂の石段のイメージを店舗に引き込む為に、表から内部にかけて石畳の床として街並みとの連続感を持たせた。正面では、フロントディスプレイとして吊した鮮やかな赤色の唐辛子1800本が出迎える。内装は新たなロゴマークにも用いられている赤色系統を基調として、伝統的な左官材料の京錆土、手加工による銅板ウロコ葺き壁面、飴色のモザイクタイルで包んだ七味調合台、伝統的な寺社仏閣でも用いられる亀甲模様の銅製の網などを什器の扉に用いている。木部分は主に赤系の松材を用いた。七味唐辛子のイメージと伝統的な街並みに合わせて素材の調和、統一感と賑わいの演出を図った。又、主役である商品はアクセントカラーとして店舗空間の中に浮かび上がらせるように考えた。

■魅力をつくる
改装前の店舗から引き継がれた「世界一辛い」と毛筆体で書かれた(ベタな)垂れ幕は、楽しい体験として辛さへの挑戦を誘うことと、親しみやすさを醸すためにあえて残した。又、玄関上部の庇に鎮座する「唐辛子を持った鍾馗さん」は気づく人は少ないかもしれないが、地元の鬼師(瓦職人)に製作を依頼して新たな外観のチャームポイントをつくる為に設置したものである。

■建築概要
建築設計:A.C.E.波多野一級建築士事務所 波多野崇 久連松文乃
https://acehatano.jp/
アートディレクション:京都工芸繊維大学 中野デザイン研究室
グラフィックデザイン:ポーラーデザイン 畔柳 尭史
https://polar-design.jp/
施工:大容工務店
協力
左官:株式会社 丸浩工業
鍾馗:浅田製瓦工場
照明:(株)YAMAGIWA
家具:荒川木工株式会社
板金:三村板金工業所
暖簾:杉下印染工場
ロゴ看板:アドサイン

所在地:京都府京都市東山区清水三丁目316-4
「おちゃのこさいさい 産寧坂本店」
工事種別:内装 全面改装
床面積:46.80㎡
工期:2018年7月2日~8月2日

営業内容
営業時間/午前9時~午後6時(年中無休)
http://www.ochanokosaisai.com

主な仕上げ材料
床:コンクリート土間スラブ t=100の上、タタキ風土間仕上げ、一部既存かつら石埋込み
壁:PB t=12.5+京錆土左官仕上げ、コンパネ t=12+銅板、耐水PB t=12.5+タイル(25×25)
天井:代萩ベニヤ 突付貼り
什器
レジ台:クリ t=24
    ベイマツ合板ロータリー杢
陳列棚:ベイマツ合板、亀甲銅金網 φ=0.8
調合台:飴色タイル(25×25)、ステンレスHL t=1 、
    ガラス t=6 角面取り飛散防止フィルム貼り
銅板壁面:銅板 鱗葺き
青銅風丸看板:FRP青銅風加工

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