秀田佑美+秀田和則 / 秀田建築設計事務所が設計した、奈良・奈良市の住宅「高畑の家」です。
敷地は伝統的な町家や路地で形成された奈良町と、自然豊かな奈良公園や春日原生林、そして社家町であり文化人に愛され親しまれた高畑界隈、これらのエリアから距離は近くても風景や空気が異なり依存しない、「無所属」のような場所である。
かつて路地や長屋が連続し、混沌としていた町が一掃され、1970年代に造られた幅員16mの巨大な県道が前面道路であり、沿道の建物は昭和の後半に作られた和洋折衷様式が多く立ち並ぶ。
広い歩道や大木に成長した街路樹、絶対的なインフラ優位で造りこまれたこの環境に対峙する必要もなく、この場所を伝統と自然、現在進行の中立的な位置づけと考え、そこに調和するべく出来る限り無機質であり、無所属である住宅建築を目指した。
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以下、建築家によるテキストです。
敷地は伝統的な町家や路地で形成された奈良町と、自然豊かな奈良公園や春日原生林、そして社家町であり文化人に愛され親しまれた高畑界隈、これらのエリアから距離は近くても風景や空気が異なり依存しない、「無所属」のような場所である。
かつて路地や長屋が連続し、混沌としていた町が一掃され、1970年代に造られた幅員16mの巨大な県道が前面道路であり、沿道の建物は昭和の後半に作られた和洋折衷様式が多く立ち並ぶ。
広い歩道や大木に成長した街路樹、絶対的なインフラ優位で造りこまれたこの環境に対峙する必要もなく、この場所を伝統と自然、現在進行の中立的な位置づけと考え、そこに調和するべく出来る限り無機質であり、無所属である住宅建築を目指した。
建物は幾何学なキューブ形状とし、大きな開口により内部で行われる普遍的な生活の豊かさ、整然と並ぶ垂木で歴史的構造手法の木造のダイナミックさを緩やかに外部へ伝えられるように意識した。
様々な色調の建物が連続する前面道路沿いとの協調性と、街路樹や北側背面の神社林の緑地帯とを引き立て合う低彩度の灰色を外壁仕上とし、シンプルで端正な色調とした。
仕上げ材料はセメント系の亀裂処理材を採用し、左官職人による金鏝押さえで仕上げ、無機質でありながら、人の手で癖とムラのあるクラフトな質感を外観の表情に持たせた。
内部は樹木の幹と枝の関係ように、タテヨコに広がる複雑な空間を単純なキューブの中で展開させた。小屋裏まで突き抜ける吹抜の土間を樹木の幹とし、そこから各スペースに縦方向、横方向に繋がり、枝分かれするように部屋や居場所を配置した。
南の道路側と東の隣地側に大開口を設え、室内へ採光や風景を確保すると同時に町を行きかう人たちには額縁として、外部から内部の構造や空間、そこで行われる生活の情緒を感じてもらう役割も兼ねている。
■建築概要
設計:秀田建築設計事務所
施工:ヒロタ建設株式会社
用途:専用住宅
所在地:奈良県奈良市
構造:木造
規模:地上2階
延床面積:83.21㎡
竣工:2016年12月
写真:花城辰男/時空アート