瀧尻賢 / Atelier Satoshi Takijiri Architectsの空間設計と寺本愛の空間アートディレクションによる、京都・南丹市の高等学校内のトイレの空間デザイン「TEAROOM」です。
本プロジェクトは、瀧尻が2018年に手がけた同校3階女子トイレが評価され、4階女子トイレの空間デザインも任せられたことがきっかけで始まった。
学校側の要望はイメージカラーである「黄色」を取り入れることのみ。自由度の高い環境で、建築家は新しい空間の在り方を提案するべくアーティスト寺本愛に声を掛け、今回の共同プロジェクトが実現した。
空間のテーマは「茶室」。満月を思わせる丸鏡。掛け軸を模した姿見。和室を彷彿とさせる竿縁天井などが抽象的にプロットされ、屏風を連想させる壁面には松や手、タオルの絵が控えめに描かれている。
プロジェクトの進め方としてはまず瀧尻が全体の骨格部分を構成。寺本がそれをもとに校内リサーチの際に記憶に残ったフォルムや質感、イメージを加える。アーティストの描くラフスケッチを建築家が図面、CGに落とし込むといったやりとりを何往復も重ねていくことで、ふたりの思想はひとつひとつのアイデアがどちらによる発案かわからないほどに混ざり合っていった。
茶道において「茶室」は人をもてなし、風景を愛でる空間である。当プロジェクトのトイレも限られた空間ではあるが、茶室と同じくその使用目的以上に拡張性を持つ空間であり、現代的に茶室を捉えるという意味も込め「TEAROOM」と名付けた。