SHARE 村山徹+加藤亜矢子 / ムトカ建築事務所による、東京の写真スタジオ「GO-SEES AOYAMA」の写真
村山徹+加藤亜矢子 / ムトカ建築事務所が設計した、東京・渋谷区の写真スタジオ「GO-SEES AOYAMA」の写真をSNSからまとめて紹介します。ちなみに青木淳が2008年に「GO-SEES 広尾」を設計しています。
以下は建築家によるテキストです。
ファッションフォト撮影に使用される写真スタジオである。写真スタジオは、撮影を行うスタジオ(ホリゾント)、打合せを行うラウンジ、メイクや着替えを行うメイクルームからなり、機能性が重視されるプログラムである。そのためデザインの余地はほとんどないと言ってもいい。現に、既存のスタジオは躯体を白く塗っただけのすっぴんな空間であった。今回のリニューアルに際してそのすっぴんな空間を「メイクアップ」する。通常、建築における化粧とは、躯体に仕上げを施してすっぴんとなる躯体を隠蔽し空間そのものを書き換えるが、ここでは「メイクアップ」をテーマに前景化したオブジェクトを各所に配置することで風景を書き換え、空間を彩り、撮影する人、される人の高揚感を高める。敷地はポストモダンな意匠が特徴的なビルの地下にあり、一辺がRを描いた大きな矩形平面に小さな矩形が斜めに取り付く平面となっていた。これらのラインを連関させてオブジェクトにカタチを与えていく。E V入口の床はRにカットした赤いルージュのようなレッドカーペットを敷き、床はウレタン全艶塗装のラーチ合板を平面のアウトラインを手がかりに割り付け、さらに全艶ワックスを塗ることでマニキュアのような厚みのある艶感を出した。空調機とダクトが無造作に配された天井には、アイラインを引くように黒のライティングダクトを斜めに入れそれらの存在を排除した。メイクルームのフィッティングとクローゼットのカーテンは、Rの集積であるドレープを石膏でつくったかのような硬い印象のテクスチャーとなるようにし、フックとなるような不思議な存在感を出した。そして空間の中央には、Rと斜線の組み合わせによる3つの歪んだ大きな壁をチークを塗るように配置し、立体感とスケールを与え全体の印象を大きく変えた。GO-SEES AOYAMAは、すっぴんの躯体は変えることなく、これら前景化したオブジェクトを空間に配する「メイクアップ」による新たなインテリアデザインの手法の模索である。