SHARE 小山光+KEY OPERATION INC. / ARCHITECTSと繁昌朗 / アトリエ・フィッシュによる、兵庫・猪名川町の「猪名川霊園倉庫棟」
小山光+KEY OPERATION INC. / ARCHITECTSと繁昌朗 / アトリエ・フィッシュが設計した、兵庫・猪名川町の「猪名川霊園倉庫棟」です。
この倉庫棟は2017年に竣工したのDavid Chipperfield Architectsの設計による猪名川霊園管理棟及びチャペルを機能的にサポートする建物である。来園者が全く立ち寄らない建物にも関わらず、敷地が霊園の入口となる場所に位置するため、来園者の目に最初に触れる建物となる。また霊園へのアプローチは全ての来園者が車で来るため、建物の前を一瞬通るだけの刹那な関わりの中で来園者の「お墓参り」という体験に寄与出来る建物を提案したいと考えた。
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以下、建築家によるテキストです。
この倉庫棟は2017年に竣工したのDavid Chipperfield Architectsの設計による猪名川霊園管理棟及びチャペルを機能的にサポートする建物である。来園者が全く立ち寄らない建物にも関わらず、敷地が霊園の入口となる場所に位置するため、来園者の目に最初に触れる建物となる。また霊園へのアプローチは全ての来園者が車で来るため、建物の前を一瞬通るだけの刹那な関わりの中で来園者の「お墓参り」という体験に寄与出来る建物を提案したいと考えた。
この建物は、約150,000平方メートルに及ぶ霊園の敷地全体をメンテナンスするための拠点であり、駐車スペース、花用冷蔵庫置場、作業場、倉庫スペースから成り立っている。駐車スペースは生花を運ぶ花屋の2tトラックを入れることが出来るようにしている。
作業場へのエントランスはすべて開け放つことができる大きな引き戸となっていて、駐車スペース、冷蔵庫との関係に配慮した配置としている。大きな作業スペースが必要なときには作業場の引き戸を全て開放することによって駐車スペースと作業場が一体の空間となる。
倉庫スペースは使用する頻度が高いものから作業場のエントランスの近くになるように配置している。作業テーブルに面する棚にはシンク、供物セットをつくるためのカウンターと供養のための道具が置かれる。その裏に祭壇や桶、2番目の列には散布機や草刈機などの工具、最も奥には季節によって使う時期の決まっているストーブや凍結防止剤を置くようにした。天井と壁は杉構造用合板、床はコンクリート打ち放しという耐久性のある仕上げとしたが、意匠の上でも、素材そのもののムラや肌理を残すことで、そこに入る種々雑多な物品と馴染んでいくことを期待している。
倉庫棟の敷地はT字路の角地にあり、来園者は県道12号線からこの交差点を曲がって霊園管理棟へと至る。霊園に着いたときの感動は、デヴィッド・チッパーフィールド・アーキテクツの管理棟で初めて味わうことができるように、霊園にアプローチする際に見える倉庫棟は周辺の民家と似た姿、素材とし、周囲の風景に溶け込む目立たない建物となるようにしている。周辺の民家の多くは焼杉板張りの外壁と、勾配がある瓦屋根を持っている。この建物も霊園に向かう際に見える側には焼杉を用い、勾配のある屋根が見えるようにした。
霊園からの帰りは行きとはまったく異なる姿の建物が現れる。霊園での体験の最後に位置するものとして、霊園と俗界の結界を区画する鳥居のようなイメージとなるように建物の外壁は赤いベンガラで仕上げ、霊園での印象的な体験を胸に結界を通って日常生活への帰路につけるようにした。
焼杉板張りと共に、ベンガラの使用は積極的な意味での経年変化を意図したものでもある。ベンガラは日本でも古くから使われている塗料で、防虫・防腐の効果がある。また、神社仏閣に使われているのは、赤色には魔除けの意味があるためだと言われている。
行きに見える壁と帰りに見える壁が、見る方向によって焼き杉とベンガラの仕上げがきれいに切り替わるようにするために、壁は平面的にのこぎりの歯のような形状となっている。ベンガラで塗装された側には隙間を設け、赤いガラスをはめ込み、内部に北側からのほのかな赤い光が入るようにした。
またトラックが入る駐車場側の壁も、のこぎりの歯のように配列した壁によって、駐車場とその奥の作業スペースを目隠ししつつ、人の通行や通気、採光を取れるようにしている。
屋根は東西の対角線を稜線として、勾配の異なる2つの面でつくられている。県道側は隣接する住宅に配慮して南東の高さを抑えた結果、急な勾配となっている。駐車スペース側は駐車するトラックの為の高さを確保しつつ、建物の棟の高さを抑えるために、緩やかな勾配の屋根とした。南側の急な勾配の屋根が形成する急な天井は南側の開口から入る光を反射し、内部全体に光を届ける。北側の緩い天井はスリット窓から入る赤い光に染まり、二色の光が混ざり合い、単調になりがちな倉庫の中で作業する人々の一日に彩りを添えるようにした。
■建築概要
敷地:兵庫県猪名川町
用途:倉庫
竣工:2015.10
設計:小山光 + KEY OPERATION INC. / ARCHITECTS
共同設計:繁昌朗 / アトリエ・フィッシュ
施工:一吉工業
写真:市川靖史
敷地面積:291.87㎡
建築面積:118.56㎡
延床面積:95.32㎡
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・壁 | 外壁1 | |
外装・壁 | 外壁2 | 塗装:べんがらくん べんがら2号(西山産業) |
外壁・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板立平葺 [鼻隠し:ガルバリウム鋼板 板金曲げ加工] 働き巾387板厚0.4mm タフクール マイトダルブラック(日鉄鋼板) |
外装・その他 | 軒裏 | ケイカル板t6(日本ケイカル)+AEP塗装 ジョイント部パテ処理 |
内装・天井 | 搬入ヤード天井 | ケイカル板t6(日本ケイカル)+AEP塗装 W105 透かし目地1mm |
内装・壁 | 搬入ヤード壁 | ケイカル板(日本ケイカル)+ウレタン樹脂塗装 W225 透かし目地1mm [見切り:焼杉] |
内装・天井 | 外部用具置場天井 | 杉合板t9(新栄合板工業)+AEP塗装拭き取り |
内装・壁 | 外部用具置場壁 | 杉合板t12(新栄合板工業)+AEP塗装拭き取り |
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