SHARE 牧野研造建築設計事務所による、京都府の「松井アーキメタル舞鶴工場」
牧野研造建築設計事務所が設計した、京都府の「松井アーキメタル舞鶴工場」です。
一般に、工場建築は厳しい予算管理が必要となるが、経済性を高めながら、それと異なった価値基準である、意味性を高めることを同時実現しようと考えた。
使用材料の選定から、スパンや階高、下地ピッチの綿密な調整といった定量的なコントロールと、光や風といった外部環境と作業に適した安全な内部環境を調停する定性的なコントロール、この二つは物理的、客観的な判断基準によってなされるが、それらと矛盾させずに、私たちの工場は唯一の価値を持つ、と思えるような精神的、主観的な豊かさを重ね合わせたい、ただ役に立つものであることを乗り越えたいと考えた。その具体的方法として、経営者や職員が取引先や来客に対して、製造環境や製品の良さをプレゼンテーションできる動線を忍ばせることで、この工場に意味的価値を持たせようとしている。言い換えれば、工場であり展示場でもある建築を設計しようとした。
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以下、建築家によるテキストです。
京都府北部の臨港地区に建つ、ガルバリウム鋼板を屋根材に成型するための工場である。
屋根材をはじめとした様々な建材を取り扱う商社の営業所としても機能し、建材の展示会の開催や成型過程の見学など、製造以外のプログラムも想定されている。手狭になった旧工場の移転に伴う新築工事である。 屋根、 外壁には、同社が製造した、または取り扱う建材が用いられ、まるで工場が自己複製したようである。
海岸線から約500mの敷地に建つこの建築は、それ自体が商品見本であり、年月を経て製品の耐候性を明らかにする。
一般に、工場建築は厳しい予算管理が必要となるが、経済性を高めながら、それと異なった価値基準である、意味性を高めることを同時実現しようと考えた。
使用材料の選定から、スパンや階高、下地ピッチの綿密な調整といった定量的なコントロールと、光や風といった外部環境と作業に適した安全な内部環境を調停する定性的なコントロール、この二つは物理的、客観的な判断基準によってなされるが、それらと矛盾させずに、私たちの工場は唯一の価値を持つ、と思えるような精神的、主観的な豊かさを重ね合わせたい、ただ役に立つものであることを乗り越えたいと考えた。その具体的方法として、経営者や職員が取引先や来客に対して、製造環境や製品の良さをプレゼンテーションできる動線を忍ばせることで、この工場に意味的価値を持たせようとしている。言い換えれば、工場であり展示場でもある建築を設計しようとした。
その際、工場に展示場の機能に必要な室や部材を付加するのではなく、工場を展示場だと読み替えられるような両義性を持たせることでそれを実現しようとしている。
ルビンの壺という有名な図形がある。デンマークの心理学者ルビンが考案した図形で、向き合った二人の顔にも見えるし、大きな壺にも見えるという白黒の図形である。見慣れてくれば、知覚を自在に切り替え見たい方の図形として認識することができる。ルビンの壺のように、この建築は、工場だと思えば工場だが、来客を案内する際には展示場として認識することができる。事務棟は受付やホワイエ、来客をもてなすカフェ、作業場は実演展示エリア、ストックヤードは常設展示エリア、 屋上のメンテナンス用ブリッジは屋外鑑賞動線に変わる。
工場棟の大屋根の上には8枚の越屋根を設置した。日本では明治時代より工場建築に取り入れられてきたのこぎり屋根と同様の原理で、北側から安定した間接光を取り入れ、通風を確保している。屋上レベルでは、大屋根から立ち上がった越屋根が、群建築のように感じられるよう、越屋根を1スパン置きに設置し、中央にブリッジを通した。ノコギリ屋根の効能はそのままに、ギザギザの屋根から、大屋根の上に浮かぶ8枚の屋根へと形式と意味を変換している。それぞれの越屋根を異なった屋根材で葺いているため、写真や小サンプルでは分かり難いそれぞれの屋根の違いを間近で見ることができる。
越屋根の開口部を通して、 屋上から工場内が感じられる。越屋根に使用されている材料が、今まさに成型されている現場と上下につながっていることで、トレーサブルな感覚を生み、ブリッジの先端からは舞鶴西港の海運、陸運が綾なすダイナミックな風景が一望できる。
■建築概要
松井アーキメタル舞鶴工場
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設計監理
建築:牧野研造建築設計事務所
構造:柳室純構造設計
設備:創見社設備設計
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施工
建築:吉住工務店
空調・衛生:浦川設備工業
電気:富士電機工業
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敷地面積:3,822.75㎡
建築面積:2,282.15㎡
延床面積:2,360.56㎡
法定延床面積:2355.64㎡
工場棟:1階 1,885.39㎡/2階 240.64㎡/PH階 6.10㎡
事務棟:1階 107.54㎡/2階107.54㎡
少量危険物貯蔵庫:1階 8.00㎡
消化ポンプ室:1階 5.35㎡
階数:地上2階建蔽率 59.69%(許容:60%)
容積率:61.62%(許容:200%)
敷地条件:地域地区 工業専用地域 22条区域 臨港地区
道路幅員:北10.78m 西8.74m 南8.00m
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構造主体構造
工場棟:鉄骨造
事務棟:木造
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杭・基礎
工場棟:杭基礎 一部表層改良 ベタ基礎
事務棟:地盤改良 ベタ基礎
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竣工年月:2020年6月
写真家クレジット:矢野紀行写真事務所
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・壁 | 工場棟外壁1 | |
外装・壁 | 工場棟外壁2 | |
外装・屋根 | 工場棟屋根1 | 折板葺インシュレーション工法:ヨドルーフ166ハゼ(ヨドコウ) |
外装・屋根 | 工場棟屋根2 | 金属板葺1:MKルーフ フラット(松井アーキメタル) |
外装・屋根 | 工場棟屋根3 | 金属板葺2:エバールーフ横葺I型 フラット(松井アーキメタル) |
外装・屋根 | 工場棟屋根4 | 金属板葺3:スカイルーフ 大和葺300(山内金属) |
外装・屋根 | 工場棟屋根5 | 金属板葺4:リベルテ190(片山鉄建) |
外装・屋根 | 工場棟屋根6 | 金属板葺5:瓦棒葺1(松井アーキメタル) |
外装・屋根 | 工場棟屋根7 | |
外装・屋根 | 工場棟屋根8 | 金属板葺7:MKルーフ リブ入りタイプ(松井アーキメタル) |
外装・屋根 | 工場棟屋根9 | 金属板葺8:エバールーフ横葺 I 型 中折れ(松井アーキメタル) |
外装・建具 | 開口部1 | ポリカ折板:ルメ折板 クリアフロスト(タキロンシーアイ) |
外装・建具 | 開口部2 | アルミサッシ:製作サッシ(YKKap) |
外装・建具 | 開口部3 | 重量シャッター:(三和シャッター) |
外装・その他 | 樋 | |
内装・床 | 工場棟床 | 厚膜型エポキシ樹脂系塗り床:ケミクリートE #1455 防滑工法(ABC商会) |
内装・天井 | 工場棟天井 | 上記折板葺き露わし、一部野地板[木片セメント板]露わし |
外装・壁 | 事務棟外壁1 | |
外装・壁 | 事務棟外壁2 | |
外装・壁 | 事務棟外壁3 | ラーチ合板張 |
外装・屋根 | 事務棟屋根 | 折板葺インシュレーション工法:ヨドルーフ166ハゼ(ヨドコウ) |
内装・天井 | 事務棟天井 | 構造用合板 露わし、ラーチ合板張 |
外装・建具 | 事務棟開口部1 | |
外装・建具 | 事務棟開口部2 | |
外装・その他 | 樋 | |
内装・壁 | 事務棟内壁 | 構造用合板 露わし 一部ラーチ合板張 |
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