市川大輔 / admが設計した、愛知・半田市の住宅「片流れの離れ/homeYG」です。
お施主さんからの大きな要望は二つ。
①新しい建物が既設の母屋に迷惑をかけないこと
②母屋と関係を持ちつつ、けれどきちんと独立していること
そこで、母屋へ向かって傾斜していく片流れの屋根と床を持つ「離れ」のような住宅を提案した。屋根を片流れにすることで母屋に向かって建物高さをだんだん低くする。2階の床梁も同時に片流れることで2階床レベルも低くなり、全体高さはますます低くなる。結果的に、離れの片流れ屋根の最下端は2階建てを保ったまま、母屋の下屋の高さにまで下がっていった。母屋に迷惑をかけたくないというお施主さんの気持ちが、そのまま建ち方や外観、内部空間に現れることとなった。
片流れとは、その名のとおり「流れ」を担保する汎用な形式である。建築は一般的に流れを留めるために存在する。陽を遮り、風を避けて、雨から守る。けれどここでは、太陽の光や風、雨や雪をスムーズに受け流していく。そして、息子家族の視線や意識、活動も同時に母屋へ向かって流れることを促す。留めずに、流す。そんな状態を大変にシンプルで汎用な形式を用いながらも、新しいあり方で実現しようと試みている。
片流れの勾配が生み出す「広がること」と「狭まること」を日常生活に組み込ませることで、母屋と離れ、室内と庭、家族と近隣などの関係性に、選択肢や多様性を与えていく。