西村崇建築設計事務所が設計した、広島・府中市の福祉施設「認知症高齢者グループホーム ここから」です。
過疎化が進み、高齢者が増え続けていく日本社会において、高齢者施設はその必要性から経済的・管理的・合理的に施設基準を最低限満たすような施設が量産された傾向があった。
認知症グループホームはその中でも管理が比較的難しい施設だが、入居者が生活していく中で自主性を取り戻し、この先も可能性を広げていけるような、今までにない新しいスタイルの施設を作りたいという施設側の要望があり、計画を始めた。
感受性を刺激する自然を日常に取り込む仕掛けや、「あの場所へ行きたい」「これがしたい」など当たり前の欲求が起こるように多様な空間を設けた。また、地域の生活や活動が身近で垣間見えることは、社会とのつながりを意識出来る環境となるため、地域との接点をいろいろな形で持てる場所づくりを行った。
結果、入居者の自主性を促すこととなり、さらに、施設利用者や職員・地域の方もみんなが活き活き出来る施設となった。
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以下、建築家によるテキストです。
過疎化が進み、高齢者が増え続けていく日本社会において、高齢者施設はその必要性から経済的・管理的・合理的に施設基準を最低限満たすような施設が量産された傾向があった。
認知症グループホームはその中でも管理が比較的難しい施設だが、入居者が生活していく中で自主性を取り戻し、この先も可能性を広げていけるような、今までにない新しいスタイルの施設を作りたいという施設側の要望があり、計画を始めた。
感受性を刺激する自然を日常に取り込む仕掛けや、「あの場所へ行きたい」「これがしたい」など当たり前の欲求が起こるように多様な空間を設けた。また、地域の生活や活動が身近で垣間見えることは、社会とのつながりを意識出来る環境となるため、地域との接点をいろいろな形で持てる場所づくりを行った。
結果、入居者の自主性を促すこととなり、さらに、施設利用者や職員・地域の方もみんなが活き活き出来る施設となった。
多様な空間構成
各個室は玄関の様な前室や表札、軒先を設けることで一戸の住居と見立てた。その個室を雁行に配置することで、たまり場や死角部分を生み出した。また、屋根の高さをそれぞれ変えることで生まれる隙間から、光や風、音を内部に取り込み自然を感じられるシステムとした。
個室同士の距離や屋根の高さをそれぞれ操作することで、外部の様な明るさと抜けのある開放的で高さのあるパブリック空間から、徐々に低く落ち着いた安心感のあるプライベート空間へと質を変えながらグラデーションさせた。
個室群のボリュームは、①水平梁でつながず、それぞれのボリュームから屋根をはね出し先端をポストで支える構造とした②屋根の高さをそれぞれに変え、光の違いによる質の変化を作った③テクスチャーボリュームごとに違うものを選び、色合いやトーンは、グラデーションに合わせ、明るいものから徐々に落ち着いたものへと変化させた。
これにより、ボリュームごとの個性が出来、街並みの様な変化のある多様な空間となった。
さらに、個室群のボリュームを縁取るように高さ(H=2,000)で設けた見切りは、個性のあるそれぞれのボリュームをつなぎまとめる役割と、高さや平面的距離の変化を感じるための基準の役割を持たせた。
地域との接点
敷地全体の配置計画として、既存施設と囲まれた部分を2期計画で公園化する予定となっており、その公園に面する形で多目的スペースを配置した。公園と一体的に利用でき、地域住民や既存施設利用者主体の子ども食堂や学童としての利用、料理教室やコンサートなどいろいろなイベントでの利用を可能にした。また、公園から敷地の中を通り抜けるように、ランドスケープ化した遊歩道を設け、軒下空間や縁側、ビオトープなどが、子どもたちの遊び場となり、地域の日常が施設の中から垣間見える場所とした。
地域と施設の接点となる多目的スペースは、公園に面する屋根を跳ね上げた形状とし、ランドマーク的な役割を持たせ、天井の高い開放的な空間は、地域の一部として共有できる場所となった。また、ガラスにより仕切ることで、催し事を眺めることが出来、地域と施設とのバッファゾーンとなった。結果的にこのバッファゾーンがコロナ対策としても機能する形となった。
■建築概要
認知症高齢者グループホーム ここから
所在地:広島県府中市
主要用途:福祉施設(認知症高齢者グループホーム)
建主:有限会社アドバンス
——
【設計】
建築・監理:西村崇建築設計事務所 担当/西村崇
協力/龍野建築設計事務所 龍野裕平
studio tanbo 池畑善志郎
中村設備設計事務所 中村幸一
有限会社オフィスはる 岡田治男
構造体供給:シェルター 担当/鈴木友章 笹原孝太 伊藤克彦
サイン:㈲ジムアンドカンパニー 桑田和真
【施工】
建築:共進産業㈱ 後藤明 見野光
衛生:M設計工房㈱ 三藤清次
電気・空調:株式会社近江電設工業 近江俊司
ガス:信菱液化ガス 出内睦成
サイン:株式会社タテイシ広美社 藤本和也
家具:マルケイ木工株式会社 佐藤愛
カーテン:M.G+LIFE IN 佐藤愛
造園:有限会社ガーデンアート昌三園 長田昌三 三島尚子
【規模】
敷地面積:1,330.19㎡
建築面積:727.70㎡
延床面積:698.20㎡
建蔽率:54.71%(許容:60%)
容積率:52.49%(許容:200%)
階数:地上1階
【寸法】
最高高:6,110mm
軒高:5,800mm
天井高:5,020mm~2,400mm、5,023mm~2,500mm、4,573mm~2,500mm、2,500mm
主なスパン:4,000mm、3,000mm
——
【敷地条件】
地域地区:準工業地域 都市計画特別用途地区 景観計画区域
埋蔵文化財包蔵地:法第22条地域
道路幅員:東4.98m
駐車台数:5台
【構造】
主体構造:木造
杭・基礎:柱状改良 ベタ基礎
【設備】
空調設備
空調方式:空冷ヒートポンプ
熱源:電気
衛生設備
給水:上水道直結方式 受水槽+加圧給水方式
給湯:ガス給湯方式
排水:合併処理浄化槽
電気設備
受電方式:高圧受電
設備容量:120kVA
防災設備
消火:消火器 自動火災報知設備 非常用照明設備
誘導灯設備:スプリンクラー設備
排煙:自然排煙
【工程】
設計期間 2019.4月~2019.8月
施工期間 2019.9月~2020.3月