SHARE 松本光索 / KOSAKUによる、東京・新宿区の、集合住宅の住戸リノベーション「漂いの家」
松本光索 / KOSAKUが設計した、東京・新宿区の、集合住宅の住戸リノベーション「漂いの家」です。
50代の夫婦のためのマンションのリノベーションである。夫婦は二人とも本好きで蔵書がとても多く、ワンルームのようなおおらかな空間で、本とともにアクティブな生活を送りたいという要望があった。
施主との何気ない会話に出てきた、「本によって自由になれる」という言葉はシンプルだがとて も印象的で、施主にとっては読書体験は単なる知識の蓄積ではなく、思考を広げ、その先の未来 を捉えるより発展的な行為なのだと感じた。 その読書によって思考的に自由になれる感覚を、生活における空間体験にも繋げることができないかと考えた。そして、無数の本が持つ重さから解放された空間を作り出すというアイデアへと至った。
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以下、建築家によるテキストです。
漂いの家
50代の夫婦のためのマンションのリノベーションである。夫婦は二人とも本好きで蔵書がとても多く、ワンルームのようなおおらかな空間で、本とともにアクティブな生活を送りたいという要望があった。
施主との何気ない会話に出てきた、「本によって自由になれる」という言葉はシンプルだがとて も印象的で、施主にとっては読書体験は単なる知識の蓄積ではなく、思考を広げ、その先の未来 を捉えるより発展的な行為なのだと感じた。 その読書によって思考的に自由になれる感覚を、生活における空間体験にも繋げることができないかと考えた。そして、無数の本が持つ重さから解放された空間を作り出すというアイデアへと至った。
そこで、ワンルーム空間を、壁のかわりとなる本棚やクローゼットによって緩やかに区切っていく平面のプラン構成に加え、それらを空間に浮かべるようにして設置することで、天井、床がそれぞれの場所で分断されずに家全体でつながっている空間を作り出した。
この家では、どの場所にいても様々な方向から光や風、音が緩やかに天井や床を伝って流れてくる。夫婦がどことなくお互いの気配を感じながら、無重力空間の中を漂うようにして自由に動き回り、好きな時間に好きな場所で本とともに過ごす。
時の移ろいと共に本と夫婦の生活の関係性も変わっていくだろう。
この家はそれをおおらかに受け止め、楽しむことのできる場としてあり続けてほしいと思う。
■建築概要
作品名:漂いの家
所在地:東京都新宿区
設計:松本光索/KOSAKU
施工:Beans Ltd.
家具製作:松本家具製作所
アートワーク:和田直祐
プロジェクトコーディネート:梁秀一
延床面積: 97.78㎡
構造:RC造(改修)
設計期間:2019年4月〜2019年9月
施工期間:2019年10月〜2020年1月
写真:表恒匡