SHARE ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示「ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡」。門脇耕三のキュレーションで、長坂常・岩瀬諒子・木内俊克・砂山太一・元木大輔が、日本の木造住宅の材を再構築した作品を制作
- 日程
- 2021年5月22日(土)–11月21日(日)
第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示「ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡」の会場写真です。
門脇耕三のキュレーションで、長坂常・岩瀬諒子・木内俊克・砂山太一・元木大輔が、日本の木造住宅を解体しその材等を輸送したうえで再構築した作品を制作発表しています。参加デザイナーとして長嶋りかこ、リサーチャーとして青柳憲昌、樋渡彩、エディターとして飯尾次郎、アドバイザーとして太田佳代子らが関わっています(詳細な関係者クレジットは末尾に掲載します)。また、これらの作品に使用された資材も、会期終了後プロダクトや、オスロなどで新たなプロジェクトに再転用されることも決まっています。展覧会期は2021年5月22日~11月21日まで。
門脇耕三がキュレーターを務める第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館展示では、「ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡」と題し、使われなくなった日本の木造住宅を古材へと解体してヴェネチアへ運び、現代のマテリアル(単管パイプ、ブルーシート、メッシュシートなど)を加えて新しい姿に再構築する様をご覧いただきます。
本展では、建築家ばかりではなく、職人や研究者などとも協働して、現場での即興的なクリエーションを交えながら展示を作り上げます。現代社会のとどまるところを知らない大量消費の問題は、大量のモノが安価に素早く輸送されること、つまり「移動」によって深刻化しています。
不要になった住宅をあえて「移動」させ、ヴェネチアという異なる文脈で展示することにより、ごく一般的な木造住宅の一部だった古材は、これまでとは全く異なる存在感を発揮します。消費のための「移動」から、再生のための「移動」へと視点を切り替える本展は、大量消費にまつわる問題や、建築の持続可能性、新しい建築のあり方に一つの深い示唆を投げかけます。
「ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡」のコンセプトドローイング
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キュレーター門脇耕三からのステートメント
あなたの行いは、あなただけのものではない。どんな些細なふるまいも、誰かとの関わりあいのなかで生まれた無数の行為の積み重ねの上にあるはずで、あなたの行いが、あなただけに帰属するとはとても言い切れない。
わたしたちが展示するのは、日本ではごくあたり前の木造住宅です。世界に先駆けて人口減少をはじめたこの国では、耐用年数を過ぎて解体を待つばかりの住宅が、おびただしい数生まれています。そんな住宅のうちの一棟を、ヴェネチアまで移動して展示します。
ただし、ヴェネチアに運ばれた住宅は、もとの姿をそのままとどめるわけではありません。輸送コンテナに収めるべく、いったん解体された住宅は、屋根がベンチに転用されるといった具合に、その場にふさわしい別のものへと読み替えられ、日本館に付属する庭園に置かれます。バラバラになった住宅は、建築家ばかりではなく、現地や日本の職人の工夫も交えながら再構築されて、それぞれが新しい生を得ることになるというわけです。
使われなかった部材は、日本館を資材庫代わりにして保管されます。この住宅は、新築されて以来、幾度もの増改築が積み重ねられて複雑に姿を変えてきましたが、部材を年代ごとに並べてみると、そこには住宅が生きた分だけの歴史が詰まっていることがわかります。たとえば、当初の部材には手作りものが多く、あとの時代のものになるほど工業的な部品が多くなることは、この間の日本の建設産業の構造的な変化をよく表しています。
このような分厚い時間の積み重ねを目の前にすると、建築家たちは今回、その歴史をほんの少しだけ上書きしただけに過ぎないことに気付きます。この住宅は、空間的・時間的な長い移動を経てこの場所にたどり着いたのであり、その軌跡は、われわれの行いが過去に根差し、そして未来へと連なることを、否応なく気付かせるものになるはずです。
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元木大輔:寄棟屋根を転用したベンチ
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岩瀬諒子:看板建築の「看板」部分を転用したスクリーン
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木内俊克+砂山太一:かつての生活のようすを伝える展示壁と階段室
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長坂常:資材庫(館内)および工房(ピロティ)のデザインと、全体の関連づけ
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展覧会公式ウェブサイト
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また、展覧会公式サイトでは、展覧会に至るプロセスの中で撮影された膨大な写真や動画、作品の図面なども閲覧可能になっています。
■展覧会概要
展示タイトル:ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡
コミッショナー / 主催者:国際交流基金(JF)
キュレーター:門脇耕三
参加建築家:建築家:長坂常、岩瀬諒子、木内俊克、砂山太一、元木大輔
参加デザイナー:長嶋りかこ
リサーチャー:青柳憲昌、樋渡彩、松本直之、牧野徹、明治大学構法計画研究室(門脇耕三、磯野信、伊藤公人)
エディター:飯尾次郎
アドバイザー:太田佳代子
写真:ヤン・ブラノブセキ
映像:仲本拡史
展示設計:スキーマ建築計画(長坂常、大澤さな子、八木佑平)、岩瀬諒子設計事務所(岩瀬諒子、遠藤郁、槙山武蔵)、sunayama studio+木内建築計画事務所(砂山太一、木内俊克、奥泉理佐子、塩崎拓馬、町田恵/ズーアーキテクツ)、DDAA(元木大輔、村井陸)
グラフィックデザイン:village®(長嶋りかこ、河南浩平、稲田浩之)
ウェブ開発:藤本圭
構造設計:テクトニカ(鈴木芳典、鶴田翔)、東京藝術大学金田充弘研究室(金田充弘)yasuhirokaneda STRUCTURE(金田泰裕)
施工:TANK(福元成武、野口藍、荒井隆志)、甲斐貴大、駒崎継広、高本貴志、藤原賢康、Mauro Pasqualin、Pieter Jurriaanse、 Paolo Giabard、Valentino Pascolo、Jacopo David、Tommaso Rampazzo
製作協力:広島工業大学杉田宗研究室
現地コーディネーター:武藤春美
展示設計マネジメント:アソシエイツ(門脇耕三、門脇章子)