佐藤伸也建築設計事務所と嶋田世紀 / ranmaが設計した、大阪の住宅「八尾の家」です。
長くこの地に住む施主の人々が遊び訪れる場との要望に、平面を二分し其々に“公”と“私”の性質を与え更に“街からの距離”で諸機能を調整、様々な関係性の来客を招き入れが可能な空間をつくる試みがなされました。
敷地は最寄り駅から徒歩10分程度の住宅地に位置する。
建主の交友関係は広く、昔からこの地域に住んでいるため、近隣の方々との交流も少なくない。主な要望は「息子家族や友人などが遊びに来れる場所にして欲しい」というものだった。
敷地形状は間口約5.7m、奥行約14mの細長い狭小敷地である。住宅全体を南北の2つに大きく区切るように、収納機能を持つ間仕切りが長手中央列に配置されている。北側に「公」性の高い空間として、LDK・バルコニー・ホール・洋室を配置し、南側に「私」性の高い空間として、トイレ・洗面所・浴室などの小部屋を集約した。収納機能を持つ間仕切りが、双方に配置された部屋をサポートするとともに、時には分断し、時には接続する役割を果たしている。
北側の「公」性の高い空間は、他者を招き入れるなど様々な状況に対応できるような受け皿になるスペースとして想定しており、できるだけ壁で仕切ることをやめて、空間自体の距離を活かしている。例えば、配達業者とは玄関で対応し、少し仲良くなった手芸仲間はリビングやダイニングまで招き入れ、友人とは階段を上がって2階のバルコニーでお茶を飲み、息子家族が訪れれば2階洋室に泊まる。
特に2階は、バルコニーによって適度に距離を取りながら、トラスを構成した梁とハイサイドが洋室まで連続している様子を道路からも垣間見ることができる。
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以下、建築家によるテキストです。
敷地は最寄り駅から徒歩10分程度の住宅地に位置する。
建主の交友関係は広く、昔からこの地域に住んでいるため、近隣の方々との交流も少なくない。主な要望は「息子家族や友人などが遊びに来れる場所にして欲しい」というものだった。
息子家族や友人など、この住宅にとっての他者をどのように迎え入れるかを考えた末、私たちが着目したのは「他者(公-public)と建主(私-private)の分け方」と「道路(街)からの距離」であった。親密度によって、他者をどこまで招き入れるかは異なる。あるいは、その度合いは道路(街)からの距離に比例することが多い。そのような関係性をそのまま形態に落とし込めないかと考えた。
敷地形状は間口約5.7m、奥行約14mの細長い狭小敷地である。住宅全体を南北の2つに大きく区切るように、収納機能を持つ間仕切りが長手中央列に配置されている。北側に「公」性の高い空間として、LDK・バルコニー・ホール・洋室を配置し、南側に「私」性の高い空間として、トイレ・洗面所・浴室などの小部屋を集約した。収納機能を持つ間仕切りが、双方に配置された部屋をサポートするとともに、時には分断し、時には接続する役割を果たしている。
短手方向に2つに区切ることで距離を作り出している。
各部屋の「公」「私」の度合いは、道路(街)からの距離に比例している。
北側の「公」性の高い空間は、他者を招き入れるなど様々な状況に対応できるような受け皿になるスペースとして想定しており、できるだけ壁で仕切ることをやめて、空間自体の距離を活かしている。例えば、配達業者とは玄関で対応し、少し仲良くなった手芸仲間はリビングやダイニングまで招き入れ、友人とは階段を上がって2階のバルコニーでお茶を飲み、息子家族が訪れれば2階洋室に泊まる。
特に2階は、バルコニーによって適度に距離を取りながら、トラスを構成した梁とハイサイドが洋室まで連続している様子を道路からも垣間見ることができる。
決して大きくない住宅であるが、家族や友人など人と人のつながりを魅力的に味わう暮らしをつくりたいと考えた。今後、建主はこの住宅にたくさんの人々を迎え入れるだろう。その時は建主の感覚でこの空間と距離をうまく使ってほしい。
(佐藤伸也+嶋田世紀)
■建築概要
所在地:大阪府八尾市
用途:住宅
設計:佐藤伸也建築設計事務所 担当/佐藤伸也、一級建築士事務所ranma 担当/嶋田世紀
構造設計:海野構造研究所 担当/海野敬亮
照明計画協力:むくもと照明設計事務所 担当/椋本真由子
施工:株式会社丹生
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:80.13㎡
建築面積:43.30㎡
延床面積:79.87㎡
竣工:2021年6月
写真撮影:塩谷淳