野村直毅が設計した、京都市の住宅「伏見・古家を取り込む増築」です。幅4m奥行44mの敷地に建つ古家の改修増築計画で、古家を資源と捉え“職”と“住”の豊かな共存を目指して既存を包み込む様に増築、内外が反転するレイヤーが家族同士や街との距離感を調整する住宅です。
築100年の古民家は残されるが、特に思い入れのない築40年程度の古家は、その価値を見いだされずに解体される現状がある。
本計画では、まだ使える古家を資源と捉えて活用し、更に時代の変化に追随するようアップデートする、「古さの社会的価値」について考えた。
職場環境の変化や仕事の在り方の多様化が進む一方、従来通りの形態の住居は、そのしわ寄せを受け止める状態にある。
住居に求める機能が増え続けていることに対し、子育て共働き家族の生活に余白を生むことで、職と住の豊かな共存を目指した。
敷地は京都・伏見の下町。幅4mに奥行き44mという細長い敷地に、築40年の古家が南側に1.3mの隙間を開けて立っていた。
間口が狭い敷地において、職と住の共存を可能とする余白をつくるためには、時間的・心理的に多様な場が必要である。経済面も考慮し、床を最大化する手法として、中庭を介して古家を包み込むように増築した。
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以下、建築家によるテキストです。
築100年の古民家は残されるが、特に思い入れのない築40年程度の古家は、その価値を見いだされずに解体される現状がある。
本計画では、まだ使える古家を資源と捉えて活用し、更に時代の変化に追随するようアップデートする、「古さの社会的価値」について考えた。
職場環境の変化や仕事の在り方の多様化が進む一方、従来通りの形態の住居は、そのしわ寄せを受け止める状態にある。
住居に求める機能が増え続けていることに対し、子育て共働き家族の生活に余白を生むことで、職と住の豊かな共存を目指した。
敷地は京都・伏見の下町。幅4mに奥行き44mという細長い敷地に、築40年の古家が南側に1.3mの隙間を開けて立っていた。
間口が狭い敷地において、職と住の共存を可能とする余白をつくるためには、時間的・心理的に多様な場が必要である。経済面も考慮し、床を最大化する手法として、中庭を介して古家を包み込むように増築した。そうすることで、内外が反転する五つのレイヤーが生まれる。中庭が緩衝材のような役割を果たすことで、異なる活動を行う家族同士や、街を行き交う人々との気配の共有度合いを調整している。
建物全体を貫く30mの通路は、単なる通過動線にしないために、床の段差や動線の迂回、滞留などの工夫を施し、棚が常にそばにあることで、家中に存在する多様な居場所に組み込まれる。その結果、そこで過ごす人々は、奥に細長いという間口の狭さを有効に捉え、一日の活動の中で居場所を次々に変化させる。行為によって人や街、自然との距離感や気配を心理的に選び取るような、時間軸を持った自由な居場所の選択を可能にする。
また、連続する空間の中に新旧の変化をさりげなく織り交ぜたことで、個人的な嗜好による居場所の選択と、行為によって居場所を変化させるような動きとを混ぜ合わせ、飽きることのない選択肢を生んでいる。
このような多様な居場所に支えられた職と住の豊かな共存は、50年先の多様な社会的変化をも引き受ける価値の更新となる。
(野村直毅)
■建築概要
建物名:伏見・古家を取り込む増築
所在:京都市伏見区
用途:専用住宅
建築設計:野村直毅
構造設計:藤尾建築構造設計事務所 藤尾篤
照明計画:株式会社LIGHTLINKS TOKYO 永野俊哉 田中康一
施工:(株)木々のや
構造規模:木造 地上2階建て
用途地域:近隣商業地域 第一種中高層住居専用地域
敷地面積:182.39㎡
建築面積:101.72㎡
延床面積:152.35㎡/1階96.29㎡ 2階49.76㎡
建蔽率:55.78%(最大73.17%)
容積率:83.53%(最大200%)
竣工:2020年9月
写真撮影:繁田諭