竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す
photo©藤井浩司(TOREAL)

竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す

竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す外観正面 photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指すバー(旧味噌蔵) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指すレストランメイン客席(旧酒造) photo©藤井浩司(TOREAL)
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百七2F(家財蔵) photo©藤井浩司(TOREAL)

竹中工務店が設計した、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」です。
古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルも目指されました。施設の公式サイトはこちら

長野・奈良井宿は江戸と京を結ぶ中山道の中間地点に位置し、道中最高標高の鳥居峠の入り口に位置する。
1kmという、全国の宿場町でも最大規模を誇る伝統的な町並みが圧倒的な存在感を示す一方で、宿泊施設やアクティビティーに乏しく、潜在的な価値をどう掘り起こすかが課題であった。

建築家によるテキストより

その町並みの中でも象徴的な「杉の森酒造」は、寛政5年に創業し、2012年に廃業するまで、約200年の歴史を持つ。江戸時代に創建され重要伝統建築物群として登録された母屋と家財蔵、味噌蔵、酒づくりが行われていた酒蔵があり、それらを八つの客室を持つ宿、別棟とも共用する30席のレストラン、宿泊客以外も利用できるバーと温浴施設へと再生した。

建築家によるテキストより

外観や構造体の保存規制の中で耐震性能や温熱環境、防災、遮音機能の向上を図ると共に、古民家の持つ歴史的背景や空間、架構、設えなどと丁寧に対話を繰り返した。そうすることで、残すべきものを活かしつつ、新鮮な驚きや発見がある空間への再構築を試みた。

八つの客室はヴィラのようにそれぞれが独立し、専用のアプローチと庭、露天風呂を持つ。江戸時代の商家の特徴的な間取りから、ハレ/ケ、ミセ/オクなどの文脈を掘り起こし、八つ全てに異なるテーマを設定。架構や床の間、欄間、竿縁天井などの古い設えと新たに挿入する設えを文脈に沿って精選した。

建築家によるテキストより

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竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す鳥瞰町並み photo courtesy of ONESTORY
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す町並み photo courtesy of ONESTORY
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す外観と町並み photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百一(旧母家) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百一(旧母家) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百二(旧母家) photo courtesy of ONESTORY
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百三 1F(旧母家) photo courtesy of ONESTORY
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百三2F(旧母家) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百四 露天風呂 photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百五(旧母家) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百五 露天風呂 photo©藤井浩司(TOREAL)
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す中庭アプローチ(昼景) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百六(旧離れ) photo©藤井浩司(TOREAL)
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百七(旧家財蔵) photo©藤井浩司(TOREAL)
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百七2F(家財蔵) photo©藤井浩司(TOREAL)
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百八2F(旧家財蔵) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指すレストランカウンター席(旧酒造) photo courtesy of ONESTORY
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指すレストランカウンター席(旧酒造) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指すバー(旧味噌蔵) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指すバーの棚(旧味噌蔵) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す大浴場(旧酒造) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す大浴場(旧酒造) photo©藤井浩司(TOREAL)
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す客室 百四(旧母家) photo©藤井浩司(TOREAL)
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指すレストランカウンター正面(旧酒造) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指すレストランメイン客席(旧酒造) photo©藤井浩司(TOREAL)
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す蔵間アプローチ photo©藤井浩司(TOREAL)
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す中庭アプローチ photo©藤井浩司(TOREAL)
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す中庭アプローチ photo©藤井浩司(TOREAL)
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指すフロント(旧酒屋ミセ) photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す外観正面 photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す外観と町並み photo©ロココプロデュース 林広明
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す1F平面図 image©竹中工務店
竹中工務店による、長野・塩尻市の宿泊施設「歳吉屋 BYAKU Narai」。古い町並みが残る“奈良井宿”の重要伝統建築の再生計画、潜在価値の掘り起こしを課題として古民家の歴史や背景と対話し文脈を引継いだ新旧が交わる空間を考案、歴史を継承し町に開かれた施設のモデルを目指す2F平面図 image©竹中工務店

以下、建築家によるテキストです。


200年の歴史を未来につなぐ

長野・奈良井宿は江戸と京を結ぶ中山道の中間地点に位置し、道中最高標高の鳥居峠の入り口に位置する。
1kmという、全国の宿場町でも最大規模を誇る伝統的な町並みが圧倒的な存在感を示す一方で、宿泊施設やアクティビティーに乏しく、潜在的な価値をどう掘り起こすかが課題であった。

その町並みの中でも象徴的な「杉の森酒造」は、寛政5年に創業し、2012年に廃業するまで、約200年の歴史を持つ。江戸時代に創建され重要伝統建築物群として登録された母屋と家財蔵、味噌蔵、酒づくりが行われていた酒蔵があり、それらを八つの客室を持つ宿、別棟とも共用する30席のレストラン、宿泊客以外も利用できるバーと温浴施設へと再生した。

外観や構造体の保存規制の中で耐震性能や温熱環境、防災、遮音機能の向上を図ると共に、古民家の持つ歴史的背景や空間、架構、設えなどと丁寧に対話を繰り返した。そうすることで、残すべきものを活かしつつ、新鮮な驚きや発見がある空間への再構築を試みた。

八つの客室はヴィラのようにそれぞれが独立し、専用のアプローチと庭、露天風呂を持つ。江戸時代の商家の特徴的な間取りから、ハレ/ケ、ミセ/オクなどの文脈を掘り起こし、八つ全てに異なるテーマを設定。架構や床の間、欄間、竿縁天井などの古い設えと新たに挿入する設えを文脈に沿って精選した。

200年の間残されてきた力強い架構や設えと共に、新たに挿入する設えがその歴史の時間の流れに乗り、変化していくために、本物の素材を採用している。木曽の伝統工芸である漆を使った床や漆和紙、地場材であるミズメザクラを使ったミニバー、地元職人による漆喰壁などに加え、ハンドスクレープ加工したフローリングや酒麹をほうふつさせる凹凸のある襖紙など、手仕事感を大切にした素材を、建物と対話しながら緻密に挿入した。また、既存建具を全て実測し流用することで、あたかも最初からそこにあったかのようなたたずまいで空間になじんでいる。

酒造のメイン工程を行っていた仕込み蔵をレストランとし、蔵の気積や架構、土壁の表情などを活かしている。加えて、再興した酒造エリアをガラス越しに見せることで、新旧の酒造の気配を感じられる空間とした。気積のある旧貯蔵蔵は温浴施設へと更新した。木曽五木や長野県産の柴石を用い、お湯は山水を木材のチップを使ったバイオマス発電で沸かし利用している。また、旧味噌蔵は宿泊者や地元の人が集えるスタンディングバーに再生した。

「杉の森酒造」の過去をつくり、ストーリーを未来へと紡いでいくこと。今回の改修では歴史や地域、そして建物との丁寧な対話によって、訪れる度に驚きや非日常性をもたらす空間を創出し、宿泊や飲食の体験を通して深く歴史や地域に触れることを大切にした。これまでの酒蔵としての200年の歴史を継承しつつ、町に開かれた、持続性のある複合分散型施設のモデルとなることを意図した。
(美島康人+長谷川裕馬/竹中工務店)

■建築概要

作品名:歳吉屋-BYAKU Narai-
所在地:長野県塩尻市奈良
用途:宿、レストラン、バー、温浴施設
用途地域地区:伝統的建造物群保存地区
構造と規模:木造 地上2階建て
改修設計:株式会社竹中工務店
施工:北信土建株式会社
敷地面積:1,816.37m2(母家敷地:840.61 m2、酒造敷地:975.76 m2)
建築面積:1,018.37m2(母家敷地:399.05 m2、酒造敷地:619.32 m2)
延床面積:1,182.71m2(母家敷地:538.16 m2、酒造敷地:644.55 m2)
工期:2020年9月~2021年7月(解体工事含む)
竣工:2021年7月
写真:藤井浩司(TOREAL)、ロココプロデュース 林広明

建材情報
種別使用箇所商品名(メーカー名)
外装・壁外壁

杉板下見板張り
漆喰仕上げ
既存土壁

内装・床ロビー・客室床

オーク材フローリングハンドスクレープ加工 [特注](望造
麻漆フローリング貼り [特注 / 地元職人]

内装・床レストラン・バー床

モルタル風左官仕上げ:モールテックスビールインターナショナル
モンスターオーク材フローリング特注ハンドスクレープ加工 [特注](望造

内装・床大浴場床

柴石貼り

内装・壁ロビー・客室壁

漆喰仕上げ
聚楽壁
漆和紙貼り:漆和紙(木曽アルテック社) 
縁甲板貼り 

内装・壁レストラン・バー壁

既存土壁
再生セメント板貼り:ソリドケイミュー

内装・壁大浴場壁

木曽五木:ヒノキ、サワラ、アスナロ、ネズコ、コウヤマキ

内装・天井ロビー・客室天井

既存竿縁天井

内装・天井レストラン・バー天井

木毛セメント板EP塗装

内装・天井大浴場天井

左官材吹き付け塗装:バンドーウール阪東工業

内装・建具ロビー・客室建具

襖紙:特注和紙(Wajue

内装・家具ロビー家具

テーブル、イス [特注](大河内家具工房

内装・家具客室家具

ヘッドボード、ナイトテーブル、ソファ、テーブル、イス [特注](MAKE AND SEE

内装・家具レストラン・バー家具

テーブル、ベンチソファ [特注](MAKE AND SEE
イス(柏木工

外構・床外構

木曽錆砂利敷き
飛び石:木曽産ゴロタ石

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※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません

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蔵前駅からほど近いコンクリート造のビルをまるごと1棟エンダースキーマやポリプロイドなどを運営するlaicoS(ライコス)のショールームとオフィスに改修するプロジェクトだ。

建築家によるテキストより

このスペースにはいくつかの簡潔で明確なルールがある。1つは素材のバリ取りなどはするが、大幅な端部処理をせず、切りっぱなしで使うこと。2つめは色合わせをできるだけせずに、素材の色をできるだけそのまま使うこと。3つめは、クラフト/インダストリアル、表/裏、人工/自然、チープ/ラグジュアリーといった対極の存在を、できるだけ等価に扱う、ということだ。

最初の2つの「切りっぱなし」と「素材の色」はエンダースキーマが用いるベジタブルタンニンレザーをDDAAなりに翻訳した特徴で、3つめは、彼らのクリエーションから感じることのできる「作り方」から着想したルールだ。

建築家によるテキストより

ところで、プロジェクトが終わったあとにライコスが出版した書籍「principle(プリンシプル)」に、このような一文があった。

黒か白もしくは、エキストリームな意見でないと人に届きづらい今だからこそ、ひっくり返したり角度を変えたりしながら、グレーのグラデーションの中にあるまだ見ぬ揺れ方向を提示していきたい。

星付きレストランと赤ちょうちんはどちらが良いという訳ではなく、両方とも美味しいし、楽しい。そこにはコンセプト、つまり、楽しみ方や視点の違いがあるだけだ。ハイ/ロー、クラフト/インダストリアル、表/裏、人工/自然、両方の良さがあって、どちらかに偏ることなく無数のグレーのグラデーションの中にある新しい視点や価値観を考え続けたい。

建築家によるテキストより
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MVRDVとロッテルダム・ルーフトップ・デイズによる、オランダの「ロッテルダム・ルーフトップ・ウォーク」です。
都心部のビル屋上を繋ぐ約600mのインスタレーション、街に対する新しい視点の提供を目指して街で最も重要な街路を跨ぐように設計、屋上活用の有効性や都市貢献の可能性を伝える事も意図されました。

こちらはプレスリリースの翻訳

ロッテルダム・ルーフトップ・ウォークがオープンしました。高さ30mのオレンジ色の絨毯で、街の様々な表情を楽しむことができます。

昇天祭の今日、ロッテルダム・ルーフトップ・ウォークがオープンし、来場者は高さ30メートルのさまざまな屋根の上を冒険しました。ロッテルダム・ルーフトップ・デイズとMVRDVがデザインしたこのインスタレーションのハイライトは、ロッテルダムで最も重要な通りの一つであるクールシンゲルに架かる橋です。ルーフトップ・ウォークは、一般の人々に街に対する新しい視点を提供することを目的としています。屋根は、都市をより住みやすく、生物多様性に富み、持続可能で、健康的なものにする「第二の層」となり得るのです。

鮮やかなオレンジ色の「ロッテルダム・ルーフトップ・ウォーク」は全長600mで、1ヶ月間、市民に街の素晴らしい眺めを提供します。アーティスト、デザイナー、建築家が、屋上を緑化、貯水、食糧生産、エネルギー生成のために効率的に利用すれば、どれだけのことが可能になるかを示す屋上展示です。オランダのステイガー社によって作られたインスタレーションの上に、バーチャルヴィレッジからバイエンコルフ百貨店の屋上のグリーンデザインまで、あらゆるメーカーが屋根がいかに持続可能で健康的、そして住みやすい都市に貢献できるかを示しています。

この仮設展示は、ロッテルダム・ルーフトップ・デイズの取り組みで、コンセプトとデザインはMVRDVと共同で開発されました。MVRDVはオフィスとして、長年にわたり都市部のスペース不足の解決に積極的に取り組んでおり、地方の都市化が進むのを防ぎたいと考えています。屋上緑化は、気候変動、住宅危機、再生可能エネルギーへの移行といった大きな問題の解決に役立ちます。ルーフトップ・ウォークは、こうした問題に注目し、特に18.5km2の平屋根部分が使われていないロッテルダムで、その可能性をより多くの人に認識してもらうためのものです。

MVRDVの設立パートナーであるヴィニー・マースは言います。
「2006年、ロッテルダム復興75周年を記念して、『クリテリオンへの階段』をデザインし、約37万人の来訪者を集めました。そのとき、このプロジェクトの続編を作ったらどうかというアイデアが生まれました」
「ユーロビジョン・ソング・コンテストの時は、優勝者を称える高いステージを作るというアイデアもありましたが、パンデミックのために中止されました。屋根を占拠して緑を増やすだけでなく、屋根をつなげて、ロッテルダム市民に新しい屋上公園を実現したことを嬉しく思うとともに、さらなる続編を主張したいと思います! そのためには、オレンジ色のカーペットとクールシンゲルの橋が最初の良いテストケースとなるでしょう」

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