SHARE 芦沢啓治・乾久美子・手塚貴晴+手塚由比・永山祐子・平田晃久・藤本壮介が参加した「建築のための香り展」のレポート。柴田文江のプロデュースと芦沢啓治の会場構成で行われ、其々の建築作品の空間やコンセプトを調査して専門家が香りを調合、会場のみならず実際の建築でも香りを展開
- 日程
- 2022年6月1日(水)–6月5日(日)
芦沢啓治・乾久美子・手塚貴晴+手塚由比・永山祐子・平田晃久・藤本壮介が参加した「ARCHITECTURE × SCENTING DESIGN 建築のための香り展」のレポートです。
柴田文江のプロデュースと芦沢啓治の会場構成で行われ、其々の建築作品の空間やコンセプトを調査して専門家が香りを調合、会場のみならず実際の建築でも香りを展開しています。主催はアットアロマ。会場は、東京・南青山のLIGHT BOX GALLERY AOYAMA。会期は2022年6月1日(水)~5日(日)まで(一般の方は、土・日のみ予約可能)。入場無料、予約制です。展覧会の公式サイトはこちら。
こちらは、アーキテクチャーフォトによるレポート
東京都港区南青山のギャラリーLIGHT BOX GALLERY AOYAMAにて、6組の建築家が参加する展覧会が行われている。
そのテーマは、建築と香り。この展示を主催するアットアロマは、全世界5000箇所以上で、香りによる空間演出を行っている企業である。
今回の展示では、6組の建築家とその作品がセレクトされ、センティングデザイナーと呼ばれる香りの調香師たちが、そこに相応しい香りをゼロから調合した。実際に会場を訪れると、作品の写真や建築家の紹介と並列する形で、作られた香りが展示されており、実際に楽しむことができる。また、香りに関するコンセプトも明記されており、どのような意図でつくられたかも知ることが出来る。
会場を回って、選ばれた建築作品を見ていると、公共的な施設や店舗などが選ばれていることに気づく。
芦沢啓治の作品は「MARIHA Showroom」、乾久美子の作品は「日比谷花壇 日比谷公園店」、手塚貴晴+手塚由比の作品は「PLAY! PARK」、永山祐子の作品は「YAMAGIWA OSAKA」、平田晃久の作品は「太田市美術館・図書館」、藤本壮介の作品は「白井屋ホテル」が選ばれている。
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新旧様々な作品が選ばれていることも特徴であり、その意図を会場のスタッフの方に話を聞いた。
そこで分かったのだが、このLIGHT BOX GALLERY AOYAMAの会場で展示されている其々の香りは、選ばれた建築空間の中で実際に演出として使用されているのだという(※日比谷花壇 日比谷公園店2022年6月末まで、PLAY! PARK7月中旬まで、YAMAGIWA OSAKA7月下旬まで、田市美術館・図書館6月末まで、白井屋ホテル6月末まで)。なるほど、そのような意図があり、多くの人たちが訪問できる作品が選ばれたという訳だ。
そのような試みが実践されていることに非常に驚かされた。また、この香りが集まったギャラリーと其々の建築の関係を思い浮かべると、相互に関係性を持った分散型の展覧会の様にも思えてくる。既に存在している建築に香りを付加する事で違った価値を与え、それらがこのギャラリーを中心にネットワーク化しているように感じた。これは建築の展覧会のデザインとしても非常に興味深い試みと言えるのではないだろうか。
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また、芦沢啓治による会場構成も見どころが多い。
外部に設置されたポスターを展示する什器を含め、この展示の為に制作されたものだという。テーブルの脚は黒い金属の素材が特徴的であるが、これはギャラリーのファサードデザインからインスピレーションを得たと芦沢が説明してくれた。既存空間の特徴的なデザインを参照し連続性をつくる事で、ホワイトキューブではない空間にフィットする展示用什器になっている。
加えて、ガラス張りで展示できる壁面が少ない空間に対し、トリッキーな方法で求められる要素を違和感なく収めていることにも感心させられる。芦沢は、既存空間を現調した際に、天井からパイプを吊り下げられることを発見しそれを起点として会場デザインを考えていったのだそうだ。主要な素材として紙が用いられているが、それを支えるテーブルや吊り下げられたパイプとの関係が熟慮され、空間全体にシャープさと柔らかさを生み出している。ディテールを見ていくと、紙を数cmテーブルからはみ出させる事で、その薄さが強調されるデザインとなっていたり、パイプに吊るされた紙は重力によって柔らかな曲線を描いていて美しい。
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この会場で、様々な香りを経験していて思い出したのは、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』の中のマドレーヌのエピソードだった。匂いというものは人の記憶と密接に関わるものだ。小説の中の主人公はマドレーヌを口に入れた瞬間に様々な記憶が蘇るのであるが、建築に香りが与えられたとき、我々はその匂いから、建築を想起するようになるのではないか。そう考えると、建築と香りが組み合わさった時に生まれる可能性の一端に触れる事が出来たような気がした。
(後藤連平)
■展覧会概要
イベント名:ARCHITECTURE × SCENTING DESIGN 建築のための香り展
日時:2022年6月1日(水)~6月5日(日)10時~19時(入場無料・予約制/一般は土日のみ予約可能)
会場:LIGHT BOX GALLERY AOYAMA
〒107-0062 東京都港区南青山5 丁目15-9 フラット青山 #103
(最寄駅:東京メトロ 千代田線、銀座線、半蔵門線、表参道駅)
プロデュース:柴田文江(Design Studio S)
会場構成:芦沢啓治(芦沢啓治建築設計事務所)
グラフィックデザイン:廣村正彰(廣村デザイン事務所)
センティングデザイン監修:深津恵(A Green)
テキスト:土田貴宏
フォトグラフ:山内拓也(Takuya Yamauchi Photography)
コーディネート& プレスサポート:青木昭夫(MIRU DESIGN)
主催:アットアロマ