元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 俯瞰 photo©NewColor
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 書斎車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室1車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める お風呂車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAA が設計した「NOT A HOTEL ANYWHERE」です。
車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウスの計画です。建築家は、“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案しました。また、建築的な“車両”として様々な工夫を込めました。
現在(2024年1月時点)はベースキャンプとして宮崎市に設置されています。施設の公式ページはこちら 。
年に限られた日数しか使われない別荘の所有形態を考え直すことで、新しい暮らしを提案するスタートアップNOT A HOTEL。
彼らの数あるプロジェクトの中でも「NOT A HOTEL ANYWHERE」は実験的なプロジェクトで、ビンテージのトレーラーを母体に、場所に依存しない移動可能な新しい暮らしをデザインをしてほしいという依頼から始まった。5台を制作し貸し出したいという要望に対して、僕たちは寝室車や書斎車といったように、1台にひとつの機能だけが備わった車体が5台でひとつの居住空間をつくることを提案した。そのときどきで必要な車体を選んで旅先にもち運ぶことで、土地に縛られることのない、従来の家より豊かな暮らし方を目指した。
今回改修した5台のうち、大きな2台はスパルタン社製で、残りの3台はエアストリーム社製のキャンピングトレーラー(以下、トレーラー)だ。5台の機能を選ぶにあたって、現地調達の難しいお風呂やキッチン、スナックと、プライバシー性の高い寝室や書斎を車両化した。リビングは広いほど贅沢なので、雨天時は大きな寝室でその機能を担えるようにしつつも、車体間にタープを張ることで、行く先々の環境を取り入れたゆったりとしたアウトドアリビングをつくれるようにしている。
移動を前提としているので、このプロジェクトには決められた敷地はない。しかし、移動先のさまざまな風景を常に楽しめるようにしたい。つまり、まだ見ぬ敷地の固有性を享受しながらも、さまざまな環境に対応できるユニバーサルなデザインが求められるという、ある意味で矛盾した条件がこのプロジェクトの特徴である。
そこで、どんな環境でも窓から360度景色を楽しめるように、トレーラーの上半分と下半分で素材を切り替え、窓に干渉しない下半分に各部屋に必要なすべての機能を集約させ、腰高さより上に機能的なヴォリュームが出ないようにした。どうしても上半分にはみ出てしまう家具は、メッシュや透明な素材を使ったり、ヴォリュームが小さくなるようにすべてデザインしている。下半分は特徴的な木目の材を選定し、重心を低くすることで室内を広く感じられるようにしている。外壁は手を加えると既存部分とのコントラストがつきすぎてしまうため、ヴィンテージの質感をできるだけそのまま活かし防水対策など最小限の手数にとどめた。
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元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 俯瞰 photo©NewColor
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める アプローチ photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 中央のアウトドアリビングを見る。 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める アウトドアリビング(BBQエリア) photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める アウトドアリビング(ラウンジ) photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める アウトドアリビング(ラウンジ) photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室1車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室1車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室1車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室1車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室1車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室1車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室1車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室1車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 書斎車、外観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 書斎車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 書斎車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 書斎車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 書斎車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 書斎車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 書斎車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 書斎車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室2車、外観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室2車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室2車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 寝室2車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 左:お風呂車、奥:書斎車 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める お風呂車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める お風呂車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める お風呂車、内観 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める 手前:アウトドアリビング(ラウンジ)、奥:スナック車、夜景 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める スナック車、内観、夜景 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める スナック車、内観、夜景 photo©NewColor
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める スナック車、内観、夜景 photo©Kenta Hasegawa
元木大輔 / DDAAによる「NOT A HOTEL ANYWHERE」。車両を改修したホテルとしても利用可能なモバイルハウス。“移動可能な新しい暮らし”を想定し、車体毎に別の機能を与え“5台でひとつの居住空間”となる仕組みも考案。建築的な“車両”として様々な工夫を込める スナック車、内観、夜景 photo©Kenta Hasegawa
以下、建築家によるテキストです。
年に限られた日数しか使われない別荘の所有形態を考え直すことで、新しい暮らしを提案するスタートアップNOT A HOTEL。
彼らの数あるプロジェクトの中でも「NOT A HOTEL ANYWHERE」は実験的なプロジェクトで、ビンテージのトレーラーを母体に、場所に依存しない移動可能な新しい暮らしをデザインをしてほしいという依頼から始まった。5台を制作し貸し出したいという要望に対して、僕たちは寝室車や書斎車といったように、1台にひとつの機能だけが備わった車体が5台でひとつの居住空間をつくることを提案した。そのときどきで必要な車体を選んで旅先にもち運ぶことで、土地に縛られることのない、従来の家より豊かな暮らし方を目指した。
今回改修した5台のうち、大きな2台はスパルタン社製で、残りの3台はエアストリーム社製のキャンピングトレーラー(以下、トレーラー)だ。5台の機能を選ぶにあたって、現地調達の難しいお風呂やキッチン、スナックと、プライバシー性の高い寝室や書斎を車両化した。リビングは広いほど贅沢なので、雨天時は大きな寝室でその機能を担えるようにしつつも、車体間にタープを張ることで、行く先々の環境を取り入れたゆったりとしたアウトドアリビングをつくれるようにしている。
移動を前提としているので、このプロジェクトには決められた敷地はない。しかし、移動先のさまざまな風景を常に楽しめるようにしたい。つまり、まだ見ぬ敷地の固有性を享受しながらも、さまざまな環境に対応できるユニバーサルなデザインが求められるという、ある意味で矛盾した条件がこのプロジェクトの特徴である。
そこで、どんな環境でも窓から360度景色を楽しめるように、トレーラーの上半分と下半分で素材を切り替え、窓に干渉しない下半分に各部屋に必要なすべての機能を集約させ、腰高さより上に機能的なヴォリュームが出ないようにした。どうしても上半分にはみ出てしまう家具は、メッシュや透明な素材を使ったり、ヴォリュームが小さくなるようにすべてデザインしている。下半分は特徴的な木目の材を選定し、重心を低くすることで室内を広く感じられるようにしている。外壁は手を加えると既存部分とのコントラストがつきすぎてしまうため、ヴィンテージの質感をできるだけそのまま活かし防水対策など最小限の手数にとどめた。
機能のなかでもスナックは日本のローカルな文化だが、クライアントからの強い要望もあって実現した。デザインコードには、ベロアのハイスツールやカラオケのモニター、重厚感のある高級風素材などを使用し、人々がイメージするスナックとしての仕上げとした。
各車体はスチール角パイプを井桁状に組んだシャーシをベースとしている。エアストリームの外壁はLGSのような軽量鉄骨下地にアルミの薄い板がリベットで留まっているだけ、スパルタンは木下地にアルミの薄い板をリベットで留めただけの簡単な構成になっている。
今回使用している2種類のキャンパーはどちらも外壁の大部分が曲面で構成され、製造された年代もバラバラなため、窓の位置や外壁の仕様が各車体で異なるため、はじめに詳細に実測する必要があった。
最初は、開口部のデザインを刷新することも含めて検討していたが、もっとも古い車体は1954年に製造されていて、新たに穴を開けることによる雨漏りが懸念された。開口補強を入れれば自由に開口部をつくることもできるのだが、ヴィンテージの質感を残したまま曲面に合わせたサッシを制作しようとすると当時のパーツを中古市場で探すか、曲面に合わせて複雑な加工で制作する、もしくは全く新しい意匠を加えるか、ということになる。最終的には、防水対策のために散水試験を行い、すべてのリベットにシールだけ打ち直しているが、外壁は窓や扉にはできるだけ手をつけずに残し、内装だけをがらりと新しくしている。
各部屋に必要な機能をレイアウトすると同時に、公道を走るために必要なナンバーをつけるために車両としての条件も満たさなければならない。各車体はタイヤを覆うための泥除けをかねた箱状のホイールハウスが車両の中央に存在感を持ってでてきてしまう。これが目立って見えないように、ホイールハウスカモフラージュするような工夫をしている。
たとえば寝室2では、大きなベッドをホイールハウスを覆い隠すように配置することで、車体の構造による制約を感じさせない平面計画とした。また、和室などで目立たないように床の間の下部などに設置することができる薄型エアコンや給排気口もその中に配置している。
断熱としては、壁内にグラスウールを充填した上、曲面や移動時の揺れにも割れずに追従して動くやわらかいフォーム材を貼付け、ワッシャービスで固定している。ビスを外せば雨漏りなどの際にも内壁側からメンテナンスをすることができる。このPEフォームはとても軽量なので、各車体ごとに設定される重量の制限からも選択された材である。ただ、車体本来のつくりがとても簡素なため、使いながら今後もう少し断熱を含めアップデートする予定である。
移動しつつ制約の少ない暮らしを検討するうえで、大きな課題のひとつがインフラだ。電気や水道など生活のために必要な設備は、必要とされるスペックが人数設定によって大きく変わる。そこで、今回は3家族8人ができるだけ我慢やストレスなく生活できるように、インフラの条件を整理することにした。完全なオフグリッドの可能性も検証したが、給排水、電気を公共的なインフラに頼らず、ソーラーパネルや自家発電、その他自律分散型の新しいインフラを使用しようとすると、トレーラーとは別にインフラ車を用意するぐらいの設備補強が必要となる。そうなると移動が大変で、本来の目的からすると本末転倒だ。
最終的に、オフグリッドにもできる状態は保ちながら、宮崎県の青島の海が目の前に広がる敷地をベースキャンプとし、既存のインフラに仮設的に接続できるシステムを採用した。現在は青島のベースキャンプに5台とも配置されているが、将来的には1台から自由に組み合わせて借りることができるような構想もある。スパルタンは全長9,800mmあるために通ることのできる道が限られていて、ある程度道路計画が整備されていないと運べないという課題もあるが、宮崎県以外にも絶景を望めるさまざまな場所に計画中のプロジェクトがあるため、そういったまだ工事の始まっていない敷地に持っていくことも考えられている。
現在のインフラを利用し、場所に依存しない生活を実現するには、まだまだ越えなければいけない課題がたくさんある。しかし、場所に依存しない生活やその先にある体験を選択できる自由があってもいいのではないか。このプロジェクトが挑戦しているのは、そんな理想と現実の狭間を埋め、少しずつ現状をアップデートする作業である。
僕はこのプロジェクトが始まる以前から、自分の仕事を続けながら、能動的な欲望に合わせていろんな場所に行ってそれぞれの環境を体験できる生活に憧れている。しかし、ものや建築をデザインをするうえでは、サンプルやモックアップを使って広い場所でできるだけ実際に近い環境を整えて検証したい。一方で、自動運転技術は急速に発展し、近い将来、移動にかかる時間やコストが劇的に軽減されようとしている。であれば、僕たちのようにノマドワークが難しい職種にとっても、場所に依存しない生活の手段としてモビリティは可能性があるかもしれないと思い立ち、「もし設計事務所をモバイル化できたら?」という仮説の検証をしたことがある。
まず、執務をするうえで必要な機能をリストアップするところからはじめ、都市部・郊外・田舎の3つの場所ごとにそれぞれ持っていく必要がある機能は何かを考えてみた。都市はインフラが充実しているため、模型置き場以外の空間的な機能、たとえばオフィスはカフェや図書館、コワーキングスペースで代用することができるし、住居の代わりに銭湯やコンビニなど、料金を支払えば利用できる場所が豊富にある。一方で、インフラが整っていない田舎では、土地は余っているが必要なインフラが整備された建物間に距離があったり、そもそも探すのに苦労するという問題がある。つまり、すべてをもち運ぼうとすると、都市では必要ないが田舎では必要といったギャップが生じることになる。そこで、移動する場所に応じて、必要な時に書斎だけを移動させたり、家と切り離されたクローゼットだけを選んでもち運べたらよいのではないかと思いついた。
次にどのような部屋に分類する必要があるかを考えた。移動可能な部屋のアイデアを網羅するために、建築基準法の建築物の主要用途一覧からビルディングタイプを洗い出し、それぞれのビルディングタイプに内含されている膨大な数の部屋名リストを作成した。そして、ひとつひとつの部屋が「モバイル〇〇」として、移動した先に空間や物を運んでくれる未来を想像したのだ。
モビリティの可能性についてもう少し踏み込んで想像してみたい。部屋ごとにもち運ぶというのは、今の社会では突飛なアイデアかもしれないが、いずれ自動運転が普及した暁には現実的になるだろう。道路のサイズや牽引できるトレーラーのサイズ、あるいはすでにある駐車場のサイズを基準寸法に、必要な機能を分解したユニットが自動的に移動先までついて来てくれる仕組みが実現したとするなら、今までとはまったく違った暮らしの可能性が広がるのではないか。
たとえば都市に存在する空間のうち、移動した方が便利な機能と移動すべきでない機能に分けることができそうだ。コンビニや初期治療のための診療所、書類手続きが必要な役所などの施設は空間側が来てくれることで、さらに効率的かつ便利になるだろうし、温泉が湧く宿や居酒屋の名店、絶景などの唯一無二の場所やコミュニティは自ら出向くことの意味と価値がさらに強くなっていくだろう。
その視点をもって今の街を眺めてみると、たくさんの人が集まることを前提に機能が集中している駅前やロードサイドの風景は解体されてしまうかもしれないし、そもそも用途地域や地区計画によってある機能に特化した建築の考え方そのものも問い直す必要があるかもしれない。
100年ほど前に発売された最初の量産型自動車のT型フォードによって、馬車中心の交通手段が自動車にがらりと置き換わり都市の風景が一変した時のように、今後移動とモビリティのあり方が変化することは、人びとの生活スタイルにも、都市の風景やパブリックスペースそのものの考え方にも大きな影響を与えることになるはずだ。都市や道路の計画は30~50年ぐらいかけてゆっくりと形成されていく。この間に計画の前提にあった状況自体が変化してしまい、当時は社会的な問題であったことが、工事の過程で問題ではなくなってしまうこともある。都市について考える際はその長い時間を含めてデザインすべきだと思う。そうやって社会や都市そのものすら変化し得る前提をもつことが想像力の種になる。
■建築概要
タイトル:NOT A HOTEL ANYWHERE
クライアント:NOT A HOTEL
所在地(ベースキャンプ):宮崎県宮崎市青島2-241-1 NOT A HOTEL AOSHIMA
用途:宿泊施設
設計:DDAA 担当/元木大輔、万徳友里香
設計協力:SOUP DESIGN Architecture
施工:株式会社セットアップ
外構・造園:Yard Works
テキスタイル:onder de linde
アートワーク:滝沢広
敷地面積:外構913.16㎡
建築面積:5台合計74.32㎡
延床面積:5台合計74.32㎡
設計期間:2021年4月~2022年11月
工事期間:2022年12月~2023年4月
撮影:Kenta Hasegawa, NewColor inc