キノシタヒロシ建築設計事務所が設計した、鳥取市の「屋内庭のある家」です。
降水量が多く雪も降る地域での計画です。建築家は、気候に適した“庭”の在り方を求め、屋根の全面が半透明素材の“屋内庭”を備えた住宅を考案しました。そして、入れ子状に設けた居室の壁面で“断熱”と“気密”を確保して快適な暮らしも実現しています。
敷地のある鳥取県は山陽側と比べて雨の降る日数がおよそ2倍多く、積雪もあるため外部庭の有用性に恵まれていない。そこで、本来外部にある庭を屋内に取り込み、部屋と屋内庭を織り混ぜた住宅を提案した。
計画ではまず、敷地が公園の傍に位置していたため、できるだけ公園側に接近させて公園の眺望や風などを迎え入れるように構えた配置としたほか、敷地と公園との間には近隣住民の往来する生活道路があるため開口を避けてプライバシーに配慮した。また準防火地域でもあり、ほかの窓は南側に隣接する福祉施設の中庭に向かって無理なく設け、日陰になる箇所には地窓を設けるに留めた。
屋根は全面半透明とした。それにより屋内庭は陽光で満たされ、可動式テントの開閉の程度により日射量を調整し、屋根裏に設置した換気扇の排気風量を制御することで温度の調整を行う。屋内庭にもソファ、書斎机、本棚、ハンモックなどの家具が置かれ、太陽光の下で読書したり子どもと遊んだりして過ごす。
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以下、建築家によるテキストです。
敷地のある鳥取県は山陽側と比べて雨の降る日数がおよそ2倍多く、積雪もあるため外部庭の有用性に恵まれていない。
そこで、本来外部にある庭を屋内に取り込み、部屋と屋内庭を織り混ぜた住宅を提案した。
計画ではまず、敷地が公園の傍に位置していたため、できるだけ公園側に接近させて公園の眺望や風などを迎え入れるように構えた配置としたほか、敷地と公園との間には近隣住民の往来する生活道路があるため開口を避けてプライバシーに配慮した。また準防火地域でもあり、ほかの窓は南側に隣接する福祉施設の中庭に向かって無理なく設け、日陰になる箇所には地窓を設けるに留めた。
屋根は全面半透明とした。それにより屋内庭は陽光で満たされ、可動式テントの開閉の程度により日射量を調整し、屋根裏に設置した換気扇の排気風量を制御することで温度の調整を行う。屋内庭にもソファ、書斎机、本棚、ハンモックなどの家具が置かれ、太陽光の下で読書したり子どもと遊んだりして過ごす。
屋内庭を形成する外壁は気密シートで密閉し、壁内空気の対流を軽減した程度の断熱としたが、入れ子状に設けた部屋にはしっかりとした気密性と断熱性をもたせた熱的境界を敷き、24時間換気を利用して部屋内の空気を循環させて快適性を保つようにしている。
空間の快適性を考えていく時、面積を広げたり天井を高くしたりと空間の容積を大きくして開放性をもたせていく方法がある。しかし、山陰のような気候が厳しい地域では、空間の容積が大きくなると空調効率が落ちてしまい、より容量の大きなエアコンやストーブが必要になる。
この住宅では核となる居住スペースは小さな気積でまとめ、それぞれを小さなルームエアコンで空調し、その空気を居住スペース内で循環させている。そうした部屋を大きな気積をもつ屋内庭と織り混ぜたような構成によって、温熱環境の厳しい季節は小さく暮らし、過ごしやすい季節にはサッシを開放してのびのびと過ごす。山陰ならではの気候を受け止める生活をイメージした。
■建築概要
作品名:屋内庭のある家
所在地:鳥取県鳥取市
設計:キノシタヒロシ建築設計事務所 / キノシタヒロシ
構造:tmsd萬田隆構造設計事務所
施工:令和建設
構造:木造在来工法
階数:地上2階
敷地面積:125.17㎡
建築面積:58.54㎡
延床面積:92.57㎡
設計期間 2022年1月~2022年8月
工事期間 2022年8月~2023年3月
竣工:2023年3月
写真:キノシタヒロシ建築設計事務所