倉林貴彦建築設計事務所と富永大毅+藤間弥恵 / TATTAが設計した、東京の「稲城のペアハウス」です。
農業にも携わる施主の為の住宅です。建築家は、梨畑の中に住宅が入り混じる環境に対し、かつての“農家の屋敷”の様な“構えの大きな屋根”を持つ建築を志向しました。また、9尺ベースの“合理的な架構”を最初に想定して費用を抑え質も確保しました。
梨園を営む兼業農家のための、1階に親世帯、2階に子世帯の9人が暮らす二世帯住宅である。
東京都心部から電車で30分の距離にありながら、背の低い梨畑が広がる豊かな環境が住宅や集合住宅と入り混じっている。この場所に建つ住宅は、かつて屋根裏(小屋組み)で養蚕が行われていた農家の屋敷のような、構えの大きな屋根をつくることが相応しいように思った。
軒先の高さを2.2mに抑え、梨の木の高さと同じような低い軒先が水平に伸びる2階建てだが、平入り切妻屋根の平屋のような外形とし、2階は周囲の梨畑の上に浮いた大きな屋根に包まれたような空間となった。
1階は建物西側の祖母の暮らす古い母屋から、柿の木や松の木を残した東側の前庭を繋ぐように東西に開く構成とし、居間と寝室の間に玄関や水回り、納戸が挟まる。東側の深い軒下はちょっとした作業や外での食事の場になり、軒裏からは2階の様子が垣間見える。2階は矩勾配屋根を支える方杖の付いた柱と小屋組みが1間半ピッチで反復される中に、5人家族の居場所を陣取った。
周辺の住宅や道路からのプライバシーは確保しつつも、小屋組みの中での居住性を考え農家の突き上げ屋根に習った開口を設けていき、夕日を屋根の中に溜め込む屋根窓や、柿の木に手が届いたり、遠くのロープウェーを眺めたりできる窓先のテラスとなる。堂々とした農家的な構えでありながら、周囲の環境に内側と外側から丁寧に呼応することで柔らかい佇まいとなった。
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以下、建築家によるテキストです。
梨畑の中で農家的屋根架構に住まう
梨園を営む兼業農家のための、1階に親世帯、2階に子世帯の9人が暮らす二世帯住宅である。
東京都心部から電車で30分の距離にありながら、背の低い梨畑が広がる豊かな環境が住宅や集合住宅と入り混じっている。この場所に建つ住宅は、かつて屋根裏(小屋組み)で養蚕が行われていた農家の屋敷のような、構えの大きな屋根をつくることが相応しいように思った。
軒先の高さを2.2mに抑え、梨の木の高さと同じような低い軒先が水平に伸びる2階建てだが、平入り切妻屋根の平屋のような外形とし、2階は周囲の梨畑の上に浮いた大きな屋根に包まれたような空間となった。
1階は建物西側の祖母の暮らす古い母屋から、柿の木や松の木を残した東側の前庭を繋ぐように東西に開く構成とし、居間と寝室の間に玄関や水回り、納戸が挟まる。東側の深い軒下はちょっとした作業や外での食事の場になり、軒裏からは2階の様子が垣間見える。2階は矩勾配屋根を支える方杖の付いた柱と小屋組みが1間半ピッチで反復される中に、5人家族の居場所を陣取った。
周辺の住宅や道路からのプライバシーは確保しつつも、小屋組みの中での居住性を考え農家の突き上げ屋根に習った開口を設けていき、夕日を屋根の中に溜め込む屋根窓や、柿の木に手が届いたり、遠くのロープウェーを眺めたりできる窓先のテラスとなる。堂々とした農家的な構えでありながら、周囲の環境に内側と外側から丁寧に呼応することで柔らかい佇まいとなった。
徐々に減りつつある梨園が、取り残された前時代的なものとしてではなく、むしろその地域環境の主人公のように見えるような建築と環境との関係性を目指した。
架構について
昨今の建築費高騰後に、コストを抑えながらクオリティをいかに確保できるのか。我々が考えたのは、国産の杉材を多用しつつ、できる限り無理のない2730ベースのスパンでつくる、合理的な架構を最初に想定してしまうことだった。
1階の高さを抑え、2階は丸々屋根の中に収まる、大きな平屋とも言えるような架構とし、屋根は矩勾配の登り梁に柱から方杖を出して、梁せいを抑えるとともに、継ぎ手を許容して、材長を一般流通の長さに抑えた。
主構造を支える小梁は、1階は東西に開きたいことから、短手の東西方向に入れ、屋根架構に包まれた2階は、長手の南北方向に入れ、空間の方向性を強調する。安価で流通量の多い杉の小梁はそのまま表されて仕上げともなる。構造計算上はやや過剰に引かれた455ピッチの杉の小梁が、架構に自由度を与え、開かれた構造になったと考えている。
■建築概要
建物名称:稲城のペアハウス
所在地:東京都稲城市東長沼
主要用途:住宅(二世帯)
家族構成:夫婦+母+子 / 夫婦+子3人
設計者事務所名 倉林貴彦建築設計事務所+TATTA 担当/倉林貴彦、富永大毅、藤間弥恵
構造:オーノJAPAN 担当/大野博史、穀野直貴
外構・造園:オイコス庭園計画研究所 担当/笹原晋平
施工:吉田工務店 担当/吉田伸幸、青山有
主体構造・構法:在来木造
基礎:べた基礎
階数:地上2階
軒高:7,190mm
最高高さ:7,380mm
敷地面積:448.23㎡
建築面積:140.62㎡(建蔽率31.37%、許容60%)
延床面積:229.37㎡(容積率51.17%、許容100%)
1階:113.45㎡
2階:115.92㎡
設計期間:2021年10月〜2022年12月
工事期間:2022年12月〜2023年10月
写真:中山保寛写真事務所
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 外装・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺き
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外装・壁 | 外壁 | 左官塗装
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外装・建具 | 開口部 | アルミサッシ[防火戸]
木製作建具
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内装・床 | 居間、台所、室1~3 床 | メープル複合フローリング(アトムカンパニー)
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内装・床 | 通り納戸 床 | メープル複合フローリング
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内装・床 | 通りWC、脱衣 / ランドリー 床 | リノリウム(田島ルーフィング)
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内装・床 | リビング、ダイニング、キッチン、洗面、手芸部屋、女子部屋、男子部屋 床 | アッシュ複合フローリング(アトムカンパニー)(アトムカンパニー)
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内装・壁 | 居間、台所、室1~3、通りWC 壁 | 壁紙(東リ)
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内装・壁 | 通り納戸 壁 | シナ合板
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内装・壁 | リビング、ダイニング、キッチン、洗面、手芸部屋、女子部屋、男子部屋 壁 | PB AEP
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内装・壁 | 脱衣 / ランドリー 壁 | ヒノキ合板
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内装・天井 | 居間、台所、室1~3、リビング、ダイニング、キッチン、洗面、手芸部屋、女子部屋、男子部屋、脱衣 / ランドリー 天井 | 構造用合板現し
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内装・天井 | 通り納戸、通りWC 天井 | 壁紙(東リ)
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外構・床 | 外構 | コンクリート平板、砕石
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