富永大毅+藤間弥恵 / TATTAが設計した、栃木・那須町の宿泊施設「赤松平の減築」です。
個人の別荘を簡易宿所に改修する計画です。建築家は、宿としては“大きすぎる”既存建物と向き合い、木々に囲まれた環境に対して“友好的に面積を減らす”設計を志向しました。そして、居室の外部化や吹抜への転換で森と呼応する空間に変えています。施設の公式ページはこちら。
南斜面地に昭和40年代に建てられた個人別荘を、一棟貸しの簡易宿所にコンバージョンするプロジェクト。
ほぼ図面もない状態からスタートしたが、きちんと測量せずとも尺貫法でできている和小屋の建物であれば、だいたい3Dまで起こせるのが在来木造のいいところである。
元の別荘が150㎡あり、ぐるっとベランダも回っている状態。泊まる場所としては大きすぎて、管理費ばかりがかさんでしまう。しかも敷地南西側には建物が立っていない状態だったので、とにかく周囲の赤松林と前面の大きな桜の木とを相手に、友好的に面積を減らしていくことを考えた。
玄関位置はそのままに広い土間とキッチンをつくり、その先の部屋をバーベキューなどができる半外部テラスへと減築した。こうすることで外から靴を脱がずに入って調理ができ、森の一部のような場所にサーブして食事ができる。
2階も南東の寝室はまるまる削って吹抜けとし、東側は隣家が近いため必要な1階のカーテンを閉めても、朝にはリビングが木漏れ日で室内が満たされるようにした。ぐるっと回っていた通路のようなベランダはほぼ全部取り外し、もっとも眺望のいい2階南西を外部化して浴室兼テラスとした。ヒノキの無垢材で床壁をつくり、ヒノキの香りで満たされ、風呂に入らずともボーっと森を眺められる空間となった。
図面はほぼ書かずにCGにひたすら書き込みをして現場に渡すというコミュニケーションになったが、深い軒をつくって外周部にベランダを回すという先人の判断が、結果として今回の改修しやすさにつながった。
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以下、建築家によるテキストです。
南斜面地に昭和40年代に建てられた個人別荘を、一棟貸しの簡易宿所にコンバージョンするプロジェクト。
ほぼ図面もない状態からスタートしたが、きちんと測量せずとも尺貫法でできている和小屋の建物であれば、だいたい3Dまで起こせるのが在来木造のいいところである。
元の別荘が150㎡あり、ぐるっとベランダも回っている状態。泊まる場所としては大きすぎて、管理費ばかりがかさんでしまう。しかも敷地南西側には建物が立っていない状態だったので、とにかく周囲の赤松林と前面の大きな桜の木とを相手に、友好的に面積を減らしていくことを考えた。
玄関位置はそのままに広い土間とキッチンをつくり、その先の部屋をバーベキューなどができる半外部テラスへと減築した。こうすることで外から靴を脱がずに入って調理ができ、森の一部のような場所にサーブして食事ができる。
2階も南東の寝室はまるまる削って吹抜けとし、東側は隣家が近いため必要な1階のカーテンを閉めても、朝にはリビングが木漏れ日で室内が満たされるようにした。ぐるっと回っていた通路のようなベランダはほぼ全部取り外し、もっとも眺望のいい2階南西を外部化して浴室兼テラスとした。ヒノキの無垢材で床壁をつくり、ヒノキの香りで満たされ、風呂に入らずともボーっと森を眺められる空間となった。
図面はほぼ書かずにCGにひたすら書き込みをして現場に渡すというコミュニケーションになったが、深い軒をつくって外周部にベランダを回すという先人の判断が、結果として今回の改修しやすさにつながった。
■建築概要
題名:赤松平の減築
所在地:栃木県那須町高久乙3376-1641
主用途:簡易宿所
設計:TATTA 担当/富永大毅
事業主:藤和那須リゾート 担当/藤宮秀紀、境井楓馬
施工:ライフテック 担当/佐藤大地、森島伸一
木材:田村木材店
家具:FLYMEe
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:767㎡
建築面積:117.99㎡
延床面積:133.41㎡
設計:2023年12月~2024年1月
工事:2024年2月~2024年7月
竣工:2024年7月
写真:中山保寛