田中圭+藤沢和哉 / hut建築事務所が設計した、長野・須坂市の「田中の家」です。
伝統的建造物群保存地区に建つ設計者の自邸です。建築家は、地域の過去の町並みの調査を設計の基礎とし、通りに切妻の妻面を向けた外観の建築を考案しました。そして、建て込む中での最適な住環境も求めて“切欠・ずらし・入れ子”の操作を行いました。
この住宅は、明治期に養蚕業で栄えた長野県須坂市の古い住宅密集地の中での計画である。
また、前面の通りは浮世小路と名のついた小路となり、文化庁の伝統的建造物群保存地区に指定された地域となる。その中で古い建物を活用して、設計事務所と複数の店舗からなる複合施設計画の一部となる。
配置計画と形状は、須坂市の町並みを調査した文献から当時の店舗と母屋との関係を読み解き、通りに妻面を見せた切妻のイエガタに自然と導かれた。そこから中庭や周辺建物との関係を再構築していった。
住宅密集地の中において、最適な内外の住環境のために、切欠 / ずらし / 入れ子の3つの単純な形状操作を加えた。
イエガタの一部を切欠くことで密集地の中に庭を設けた。内部空間の開口部から連続するようにプランニングすることで、内部に植栽のうるおいを与える。
フロアの階層をずらしたスキップフロアを採用しました。これによりプランニングを機能ごとに明確にするとともに、普段の生活の拠点となるLDKをワンフロアにまとめた。
LDKは地面から約2mの高さに配置され、店舗側の中庭に対してプライバシーに配慮した大開口を設けられる設計とした。密集地の中で採光を十分に確保するとともに、大きな窓辺で生活するような空間となった。
スキップフロアにより空間の連続性を持たせ、大きなワンルームのような空間にする一方でイエガタの入れ子を設けた。これにより、内部の奥行をつくりだすとともに、大きな窓辺が外部の庭にいるような気持ちの良い空間となった。