SHARE 長沼和宏+澤田淳 / AIDAHOによる、大阪市の「日本健康増進財団 大阪健診センター」。20世紀前半築の“レトロビル”が残る地域での計画。地域の固有性と結びつく存在を目指し、周辺の古いビル群に多く見られる“アーチ形状”を取入れる空間を考案。懐かしさの導入は健康診断への抵抗の軽減も意図
長沼和宏+澤田淳 / AIDAHOが設計した、大阪市の「日本健康増進財団 大阪健診センター」です。
20世紀前半築の“レトロビル”が残る地域での計画です。建築家は、地域の固有性と結びつく存在を目指し、周辺の古いビル群に多く見られる“アーチ形状”を取入れる空間を考案しました。また、懐かしさの導入は健康診断への抵抗の軽減も意図しています。
世界的な動向と共通していることですが、現在の日本は超高齢化社会となっており、それに伴って国の負担する医療費は年々増加傾向にあり、解決するべき大きな社会問題のひとつとなっています。
それにより、厚生労働省は定期的に健康診断を受けることを推奨しており、多くの人が日常の中で自然に健康診断を受けるような環境づくりが求められています。
今回私達がデザインした健診センターの所在地は、かつて大阪が日本の経済の中心となり、「大大阪」と呼ばれた時代を象徴し、かつてのその面影を多く残したエリアです。
この街には多くのレトロビルと呼ばれて愛されている建築が存在しています。
このレトロビルとは、1920年代~1930年代にかけて、当時の日本の近代化の流れや、関東大震災等を経てそれまで木造が中心だった日本建築の燃えやすいという欠点を見直す不燃化などの流れも影響して生み出されたものだと言えます。関東大震災が起きたことも相まって、東京から人口が流入し、また、経済を担う会社も多く集まったことで、当時世界的に見ても最先端だったアールヌーボー、アールデコ等の西洋のデザインを取り入れたオフィスビルや図書館や公会堂等の公共施設が次々と建てられました。それらの建築の中のいくつかは、この大大阪時代と呼ばれた黄金期の面影を残す、このエリアのアイデンティティの一部として地域の人々にとって重要な存在となっています。
アールヌーボー、アールデコの影響が感じられる建物に共通して見られる特徴として、柱と梁等、構造部材を基に展開するアーチ形状があります。私達は、地域のアイコンとも言えるこのアーチ形状を空間デザインの中に取り入れることで、地域のアイデンティティとの結びつきを感じられるような場所を作りたいと考えました。
また、この曲線は、実際の建物の構造部材である柱と梁を隠すとともに、それらを結ぶように作られており、構造体をデザインの基軸とし、それらを印象的なアーチ形状を表す依代とすることで、視界や動線の邪魔になりがちなものをポジティブなものに変換しようという試みでもあります。
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以下、建築家によるテキストです。
世界的な動向と共通していることですが、現在の日本は超高齢化社会となっており、それに伴って国の負担する医療費は年々増加傾向にあり、解決するべき大きな社会問題のひとつとなっています。
それにより、厚生労働省は定期的に健康診断を受けることを推奨しており、多くの人が日常の中で自然に健康診断を受けるような環境づくりが求められています。
今回私達がデザインした健診センターの所在地は、かつて大阪が日本の経済の中心となり、「大大阪」と呼ばれた時代を象徴し、かつてのその面影を多く残したエリアです。
この街には多くのレトロビルと呼ばれて愛されている建築が存在しています。
このレトロビルとは、1920年代~1930年代にかけて、当時の日本の近代化の流れや、関東大震災等を経てそれまで木造が中心だった日本建築の燃えやすいという欠点を見直す不燃化などの流れも影響して生み出されたものだと言えます。
関東大震災が起きたことも相まって、東京から人口が流入し、また、経済を担う会社も多く集まったことで、当時世界的に見ても最先端だったアールヌーボー、アールデコ等の西洋のデザインを取り入れたオフィスビルや図書館や公会堂等の公共施設が次々と建てられました。それらの建築の中のいくつかは、この大大阪時代と呼ばれた黄金期の面影を残す、このエリアのアイデンティティの一部として地域の人々にとって重要な存在となっています。
アールヌーボー、アールデコの影響が感じられる建物に共通して見られる特徴として、柱と梁等、構造部材を基に展開するアーチ形状があります。私達は、地域のアイコンとも言えるこのアーチ形状を空間デザインの中に取り入れることで、地域のアイデンティティとの結びつきを感じられるような場所を作りたいと考えました。
また、この曲線は、実際の建物の構造部材である柱と梁を隠すとともに、それらを結ぶように作られており、構造体をデザインの基軸とし、それらを印象的なアーチ形状を表す依代とすることで、視界や動線の邪魔になりがちなものをポジティブなものに変換しようという試みでもあります。
扉や壁の仕上げについては、レトロビルのイメージに合うような素材や色を選びながらも、現代的な照明デザインやサイン計画によって古さと新しさとの両方を感じさせるようなデザインとしています。
健康診断を誰でも抵抗を感じることなく、自然と受けられるような場所とするためにどのようなデザインとするのがいいかと考えてきましたが、懐かしさと新しさが掛け合わされた、この場所でしか作ることができないユニークな空間を実現することができたと思います。
■建築概要
題名:一般財団法人 日本健康増進財団 大阪健診センター
所在地:大阪府大阪市中央区瓦町
主用途:健診センター
設計:AIDAHO Inc. 担当/長沼和宏、石井倫明、竹中瑞穂
企画・PM:株式会社清和ビジネス
施工:株式会社秀建
サインデザイン:KARAPPO Inc. 担当/三尾康明、関谷里奈
照明デザイン:scene2 担当/横橋英司
計画面積:639.74㎡
設計:2023年7月〜2023年9月
工事:2023年10月〜2024年1月
竣工:2024年2月
写真:太田拓実 / Takumi Ota Photography
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
内装・床 | エントランス 床 | |
内装・床 | エントランスホール、待合、検査場 床 | |
内装・壁 | エントランスホール、検査場 壁 | |
内装・造作家具 | 検査場 パーティション | シナ合板 [塗装] |
内装・照明 | 検査場 照明 |
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Mirroring the global trend, Japan is currently facing a super-aging society. This demographic shift has led to the nation’s healthcare costs increasing annually, which poses a major social issue that demands a solution.
Because of this, the Ministry of Health, Labour and Welfare recommends regular health checkups and is working to create an environment where many people can willingly and naturally incorporate these checkups into their daily lives.
The location of the health checkup center we designed is an area that retains much of the charm of the era when Osaka was the economic center of Japan and was known as “Dai Osaka.”
This area is home to many beloved buildings known as “retro buildings.”
These retro buildings emerged in the 1920s to the 1930s, influenced by Japan’s modernization efforts during that time.
Events such as the Great Kanto Earthquake led to a reassessment of the vulnerability to fire of traditional wooden Japanese architecture, prompting a shift towards fireproof construction.
The devastation of the Great Kanto Earthquake, combined with an influx of population from Tokyo to Osaka and the concentration of businesses driving the economy in the city, led to the construction of numerous public facilities such as office buildings, libraries, and city halls.
These structures incorporated cutting-edge Western design elements from Art Nouveau and Art Deco, which were considered advanced even from a global perspective at that time.
Some of these buildings, retaining vestiges of the prosperous period known as the Dai Osaka era, now stand as important symbols of the area’s identity for local residents.
A common feature seen in buildings influenced by Art Nouveau and Art Deco is the arch shape, which is expressed through the use of structural elements such as columns and beams.
We wanted to create a space where people can feel a connection to the local identity by incorporating this iconic arch shape, which could be considered a symbol of the area, into the spatial design.
Furthermore, these curves not only conceal the building’s structural elements, such as columns and beams, but also connect them, using the structure itself as the foundation of the design.
By employing these elements to express the striking arch shapes, we aimed to transform what could be visually obstructive into something positive.
We carefully selected finishing touches for the doors and walls to complement the retro building aesthetic. Modern lighting design and signage harmonize with these traditional elements, creating a space that evokes a sense of both the old and the new.
We have been considering what kind of design would make this a place where anyone can willingly and naturally receive a health checkup.
We think we have achieved a unique space that combines nostalgia with novelty and could only be created in this location.
Osaka health checkup center
location: Osaka Japan
primary use: Health Checkup Center
design: AIDAHO Inc.
PM: SEIWA business
general contractor: SHUKEN
sign design: KARAPPO Inc. / Yasuaki Mio Rina Sekiya
lighting design: Eiji Yokohashi / scene2
completed: 2024/2
photo credits: Takumi Ota Photography Co., Ltd.