SHARE 長坂大/Megaによる”宇治のアトリエ”
photo©杉野圭
長坂大/Megaが設計した”宇治のアトリエ”です。
以下、建築家によるテキストです。
歴史的な景観保全地域に建つランドスケープデザイン事務所の分室である。
敷地を訪れた時、どのように建てるかはすぐに決まった。南北に長い長方形平面と水平な軒線のあるファサード、そしてそのことを含めて、単純なかたちで東の平等院鳳凰堂の方を向いている建築をつくることと、それ以上のことは言わないこと、である。建主の宮城俊作氏から、あらかじめ鳳凰堂を眺める執務室のイメージを聞いていたので、視線だけでなく建物そのものを「東向き」とすることを決めたことになる。
建物が少し持ち上げられているのは、塀越しの視点高さを獲得するためである。あまり持ち上げると隣の墓地を露骨に見下ろしてしまうので、ほどほどの高さが求められた。
これを道路側からみると地面から少しだけ浮いているという不思議な状況になる。しかし、西側の庭は地面を掘下げた笹の原でいわば結界のような場所としてつくられるので、その向こうの建物のありようが通常と異なることは表現上むしろ効果的であった。
平等院一帯は風致地区に指定されている。そこで、この「少し浮いていること」を除けば、建物の仕上げや形態はオーソドックスな木造建築を選択したつもりだが、それでも片流れ屋根や白壁は例外扱いで、許認可を得るのに一定の工夫を要した。
2つの執務室にはそれぞれ東西に1つずつ異なる窓がある。それらは主に景色の切取り方をテーマとして、その場所ごとの外部との関係を吟味しながら決定されている。
建築の形態としては単純でありふれた形態を選択したつもりだが、そのことがむしろ場所の特性を逆照射してくれるなら幸いではないかと考えている。
■建物概要
所在地:宇治市宇治
主要用途:アトリエ
敷地面積:327.36m2
建築面積:97.33m2
延床面積:97.33m2
規模:平屋建て
主体構造:木造在来工法
設計:長坂大/Mega
構造設計:門藤芳樹構造設計事務所
外構設計:宮城俊作(PLACEMEDIA)
施工:ミナミ建設
外構施工:寺さき造園(※さきの漢字は、”山の下に奇”です。)