SHARE 芦沢啓治建築設計事務所によるリノベーション住宅”SKYCOURT”
photo©Takumi Ota
芦沢啓治建築設計事務所による東京のリノベーション住宅”SKYCOURT”です。
以下、建築家によるテキストです。
東京六本木に至近でありながら閑静な住宅街に建つ、コンクリート住宅のリノベーションである。当初2棟の建売としてつくられた1棟なのだが、クライアント夫婦が生活を楽しみながら、子供二人を育てていく家として、すべて改修する必要があると判断し、大胆に改装することとなった。要望としては、現状2階建てを3階にすること。屋上の活用。裏庭のプライバシーの確保。光にあふれた家にしてほしいなど。またバブルの時代を反映したやや装飾的な外観も検討課題としてあげられた。日本において既存住宅の改装、しかもボリュームを大きくすること、構造をいじることはことのほか面倒である。確認審査機関との交渉は難航をきわめたが、結局構造はすべて解析しなおすこと、さまざまなロジックを駆使することにより大改装工事は可能となった。
リノベーションのプロジェクトは、既存の空間の特性や良さを読むとくことが重要である。大きく躯体はうごかない。その躯体や壁をいかに生かすのか、現状の開口部やあらたに設けられる穴からはどのような空間がうまれるのか。そういう意味において、クライアントが改装前に1月住んだことにより、多くの情報を共有することができたのは幸いであった。寝室の場所、キッチンやリビングの場所は、現地の光環境を考慮して、何度なく検討や変更のすえ現状のプランとなった。キッチンとリビングの間にもうけられた7m2ほどの中庭は、彼らの第二のリビングである屋上の空間とつながり光と風を引き込む。リビングと寝室は既存建築において余裕のあった容積をつかい増床し、雑壁をこわし大きな開口部を取り付けることで、都心部ではなかなか得難い開放的な空間となった。
屋上に取り付けられた屋根は、いままでは室外機置き場であった屋上をクライアントの夜景をたのしめるセカンドリビングとして、地下室は、ゲストルームと小さなオフィスを新たにしつらえた。
都心に住居を構えることは、限られたスペース駆使することになり3層、ときには4層となる。それなりに覚悟のいることではある。逆にいえば、縦の空間を楽しむ、使いこなすことで豊かな建築をつくれる可能性をひめている。今回は、リノベーションという限られた条件ではあったが、それが余計にクライアントの住むことへのこだわりや可能性を追求し、私たちのパッションに火をつけ、相乗効果をうんだ。
竣工後もなんどとなく訪問する機会をえて、この家がリノベーションされた空間であることを想像できないほど彼らの生活にマッチしていることに気づく。家の名前は、クライアント夫婦によって命名。リノベーションによってうまれた様々なCOURTからは、柔らかな光が差し込み、空がみえる。クライアントが望んだもの、都心を快適に暮らす答え、それがSKYCOURTなのである。